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余興のはずなのに(マリアンヌ視点)

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「え? クリストファーお兄様ったら、これは余興の一部で・・・・・・」

 私は、言いかけて、クリストファーお兄様の真剣なお顔をに気がついた。
もしや、これって余興ではないの? 


 そんなはずはない。催し物の予定は、あらかじめ、私とお婆様と、お母様で話し合って決めた。
大きなケーキの中から、3人の王家の覆面をした騎士が強盗のふりをして出てくるのだ。
そして、出てきた時に言うセリフは、

「命が惜しければ、を出せ!」だ。

 なのに、クリストファーお兄様の投げた薄いナイフは、バーミュレ様に剣を突きつけている男を素通りして、その斜め横に立っていた男の足に、ザクリと突き刺さっている。

「ちょっ、ちょっと、クリストファー団長。俺ですよ! 第1部隊のルタンです。俺ら、余興で・・・・・・」

 慌てて、バーミュレ様に剣を突きつけていたルタンさんが、怪我をした男に近づき、怪我の様子を見ようとしたところを、羽交い締めにされた。

「うわっ。なにをするんだよ? ゼノ! 余興は、お終いだよ。お前、早く、手当してもらえよ」

 ルタンさんが、驚きながら言うと、ゼノと呼ばれた男は、せせら笑った。

「まだ、気がつかねぇのかよ? 俺は、ゼノじゃねーーぜ」

 私の横にいたメイソン様が、『まさか・・・・・・』と呟いた。

「はん! その通り。そのまさかさ。久しぶりだねぇーー。随分とお偉くなったもんだな? 王家のお抱えの一番の学者様にお成りになっただけでも、むかつくのによ。今度は、筆頭公爵様も兼任かよ? それは、ちょっと、ずるすぎるぜ?」

 忌々しげに、吐いた言葉には、悪意と憎悪が満ちていた。思わず、私はぞっとして、メイソン様の手を握りしめた。

「そのルタンを放せ。私が人質になろう。そいつは、私の部下だ」

 無謀にも、バーミュレ様が近づいていこうとした。


「近づくな! こいつの喉をかっ切るぜ? お前、女でも副団長なんだろう? ナイフを投げやがったのは、団長だよなぁ? こんな偉い人ばかりに会えて、俺は嬉しいよ。トマス公爵のせいでよぉーー、俺の人生は、めちゃくちゃになったんぜぃ! だから、これは復讐なんだ! 誰でも、いいよ。殺してやりたくってなぁーー。殺人結婚式なんて、しゃれてるだろう? どうせ、この怪我じゃ、逃げられねーーしよぉ。」

 足にナイフが突き刺さったままの男は、懐からカミソリを取り出すとルタンさんの喉に押し当てようとした。

 クリストファーお兄様は、上着の内側に隠し持っていた、もう1本のナイフを正確にその悪者の手首に向けて投げた。カミソリが吹き飛ばされた男は、簡単にバーミュレ様に捕らえられ、思いっきり顔を殴られて鼻血をだしていた。

「おい、お前! 私のの家族の結婚式に、こんな真似をしでかして、覚悟はできているよな?」

 え? バーミュレ様・・・・・・それ、こんな場面で、愛の告白ですか・・・・・・しかも、その言葉の直後には鳩尾みぞおちパンチ2回・・・・・・お見事です・・・・・・でも、この男は誰なのかしら?
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