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ジェイコブの父親の断罪(父親視点)

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「時計屋よ? お前も、まず10回打たれておけ」
 
 え? まずとは、どういう意味なのだろう? 1回、2回と打たれるたびにムチが背中に食い込んだ。
これは、さすがに酷すぎると思う。歯を食いしばって耐えたが、5回目あたりで気を失った。

 氷水をかけられて、目が覚めたが、どうにも納得はいかなかった。

「王様、これは酷すぎます。メイソンが、あの学校に通うこと自体が間違いではありませんか? 13歳からの学者養成学校に通うなら理解できますよ。それまでは、家庭教師から学ぶのが、あの階級の貴族の方達の慣習だと思います。せめて、保護者欄にトマス公爵夫妻の名前ぐらい書いてあるべきです!」

「ふん! 私の名前を書いただろうが!」

「そんな・・・・・・王様と同じ名前の平民は、たくさんおります! 王様に敬意を示して子供に同じ名前をつける平民は多いですから。保護者がトマス公爵となっていれば、こんなことは起こらなかったんだ!」

「あぁ、わかるとも! お前は、保護者欄を確認してから大人の虐めをしていたものな? お前の子供が、嘘をついて罪をなすりつけ、お前が学校に来て保護者欄を確認する。自分より下だと思った保護者の職場に押しかけ、罵倒し大騒ぎした。そこで、働きにくくなった親は辞めて街を出て行った。なかには、引っ越し先でも噂を流された子供は、学校での虐めに耐えられず自殺した子もいたらしい・・・・・・なんと罪を重ね続けた親子なのだ。これは、ムチだけでは到底許せない」

 なんてことだ! ちょっと、文句を言いに行っただけだ。そりゃ、少しは楽しかった。米つきバッタみたいに頭を下げて謝る底辺の奴らをいたぶるのは、あぁ、認めてやるさ! 相当楽しかったさ。

 でも、その子供が引っ越し先で虐められたなど、そんなこと私がしるか! そんな奴らの先のことなど興味もないわい!

「お前ら親子は、このまま時計屋はさせてはおけないぞ? 賎民に落ちよ。落ちて、自分が虐げてきた者達より下の立場になれば身にしみるだろう。愚か者どもが!」

「そんな・・・・・・あんまりだ! 酷い・・・酷すぎる!」

 賎民なんて、底辺の仕事しかできない。今までの家に住めず、賎民街に移り住んでなにをすればいいんだ? ゴミ拾いか? 下水道や煙突掃除屋か? 葬儀屋の死体扱い人か? 平民は努力すれば学者でも騎士でもなれる機会を与えられていた。だが、賎民はだめだ。就ける職業は決まっていた。私の代から、ずっと子孫は賎民になるのか・・・・・・

「あぁ、地獄だ・・・・・・こんなのは不条理だ!」

「お前達に無実の罪を着せられて死んだ子は、きっと今のお前の何百倍もそう思ったろうよ」

 王の声が響き渡った。私は、がくりと膝をついたのだった。

   
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