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64 神獣登場!(ナサニエル視点)
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今回襲ってきた魔獣たちはいつも遭遇するブラッドコイワや、背中に生えたトゲを飛ばして攻撃してくる小型の魔獣に混ざって、大型の魔獣が目立っていた。
その姿は熊によく似て巨大だった。毛並みは銀白で鋭い牙を持っており、その存在は他の魔獣たちより魔法エネルギーに満ちていた。私は冷静な眼差しで魔獣を見つめ、氷の精霊に呼びかけながら氷刃矛を出現させた。先端がするどく尖っており、魔法を帯びた氷で形成された槍のような武器だ。それを一振りするだけで寒気が凝結して氷の盾が私を包みこんだ。私の戦い方は日々進歩している。
魔獣は咆哮し巨大な前足で地面を叩きながら突進してくるが、私は素早い身のこなしでその攻撃をかわし、氷刃矛を魔獣の心臓をめがけて放った。魔法生物が持つエネルギー源や魔法の核は心臓部分にある。そこを一撃することによって、あっという間に倒すことができるのだ。
しかし、倒した魔獣の背後から他の魔獣たちが襲い掛かってくるので、きりがなかった。そんななか、騎士たちのなかに明らかに様子がおかしい者が目に留まった。剣で必死で戦うのだが、魔法を絡めて攻撃することがないのだ。急いで魔獣とその騎士とのあいだに回り込み、私はその騎士が皇太子であることに気づいた。
「皇太子殿下! なぜこのようなところにいるのですかっ! 『聖域の間』にいてくださいと申し上げましたよね」
「すまない。私も剣術には自信があったゆえ、少しでも役に立てるかと思った。自分だけが安全な場所に隠れているなんてできないのだ」
皇太子殿下を守りながら戦うのは限度があった。巨大な熊に似た魔獣は続々とやってくるし、頭を2つ持つ狼のような魔獣まで集団になって押し寄せる。魔法騎士団員たちも果敢に戦っているが、魔法を放つ敏捷さが落ちてきていた。
(このままではやられてしまう。魔獣の数が多すぎる)
私は一瞬ためらったが、形態変化魔法を使うことを決断した。しかし、変身の儀式である呪文を唱え、宙に指で古代の魔方陣を描いても私の身体に変化はなかった。
あと思いつくのは召喚魔法しかない。私は古代の言葉で呼びかけ、魔獣の頂点に君臨する存在へと意思疎通を試みることにした。それは伝説の存在、魔獣というよりは神獣に近いものだ。一語一句間違えないように、古代の召喚魔法の呪文を唱えて空を見上げた。
(頼む! 成功してくれ! 私の声が届いてくれ)
すると、急にあたりは霧に覆われ、空から現れたのは伝説のグリフォンによく似た神秘的な魔獣だった。その魔獣は大きな翼を持ち、氷のような鱗に覆われ、目は知識と叡智に満ちた輝きを放っていた。大きさはどの魔獣よりも大きく、その姿はまさに神獣そのもので、周囲の魔獣たちもそのオーラだけで恐れおののき、後ずさりするほどだった。
「数世紀ぶりに目を覚ましたが、古代の魔法使いが言っていた『世界に影響を与える存在』ってのはお前か? 我とお前とのあいだにはすでに契約が結ばれている。グリオンドールに命令することができるのはお前だけだ」
よくわからない部分は多いが、どうやら私がこの神獣に命令できるようだった。
「ならば、あの大量発生した魔獣たちを始末してくれ」
「ふむ。美味しそうな魔獣たちだな」
グリオンドールはその鋭いくちばしを素早く魔獣の首筋に突き立てた。咆哮を上げながら、その獰猛な巨体が急速に萎んでいった。私はその様子に驚きながらも、グリオンドールが魔法的な方法で魔獣を制御し、生命エネルギーを自分に取り込むことで更なる力を得ているのだと理解した。魔獣の力を吸収することで、グリオンドールの力が一段と増していくのを感じ取ることができたのだ。
何体かの魔獣のエネルギーを吸収しすっかり満足したグリオンドールは、広大な翼を広げ一気に空高く舞い上がる。そして、空中で力強く羽ばたくと、その広大な翼から氷の刃や氷の弾丸が連続して放たれ、まるで氷の嵐が戦場を覆い尽くすかのような光景が広がった。
グリオンドールはその優雅な舞いの中で、一瞬で数十もの魔獣を氷に閉じ込めた。魔獣たちは氷の中で身動きが取れず、その凍てつく中で力を失っていった。
不思議なことにあれだけの氷の刃や弾丸が空から放たれたのに、魔法騎士団員の誰ひとりとして傷ついた者はいなかった。
「主、他にご命令は?」
巨大なグリオンドールが私の目の前に舞い降りてきて首を傾げた。小鳥が首を傾げる時と同じような仕草が、恐ろしい外見のわりに可愛いと思ったのだった。
୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧
※戦うナー君のイラスト掲載してます。インスタ:bluesky77_77です。青空一夏 AIイラストです。小説の主人公たちや可愛い動物などのイラストを投稿しております。
その姿は熊によく似て巨大だった。毛並みは銀白で鋭い牙を持っており、その存在は他の魔獣たちより魔法エネルギーに満ちていた。私は冷静な眼差しで魔獣を見つめ、氷の精霊に呼びかけながら氷刃矛を出現させた。先端がするどく尖っており、魔法を帯びた氷で形成された槍のような武器だ。それを一振りするだけで寒気が凝結して氷の盾が私を包みこんだ。私の戦い方は日々進歩している。
魔獣は咆哮し巨大な前足で地面を叩きながら突進してくるが、私は素早い身のこなしでその攻撃をかわし、氷刃矛を魔獣の心臓をめがけて放った。魔法生物が持つエネルギー源や魔法の核は心臓部分にある。そこを一撃することによって、あっという間に倒すことができるのだ。
しかし、倒した魔獣の背後から他の魔獣たちが襲い掛かってくるので、きりがなかった。そんななか、騎士たちのなかに明らかに様子がおかしい者が目に留まった。剣で必死で戦うのだが、魔法を絡めて攻撃することがないのだ。急いで魔獣とその騎士とのあいだに回り込み、私はその騎士が皇太子であることに気づいた。
「皇太子殿下! なぜこのようなところにいるのですかっ! 『聖域の間』にいてくださいと申し上げましたよね」
「すまない。私も剣術には自信があったゆえ、少しでも役に立てるかと思った。自分だけが安全な場所に隠れているなんてできないのだ」
皇太子殿下を守りながら戦うのは限度があった。巨大な熊に似た魔獣は続々とやってくるし、頭を2つ持つ狼のような魔獣まで集団になって押し寄せる。魔法騎士団員たちも果敢に戦っているが、魔法を放つ敏捷さが落ちてきていた。
(このままではやられてしまう。魔獣の数が多すぎる)
私は一瞬ためらったが、形態変化魔法を使うことを決断した。しかし、変身の儀式である呪文を唱え、宙に指で古代の魔方陣を描いても私の身体に変化はなかった。
あと思いつくのは召喚魔法しかない。私は古代の言葉で呼びかけ、魔獣の頂点に君臨する存在へと意思疎通を試みることにした。それは伝説の存在、魔獣というよりは神獣に近いものだ。一語一句間違えないように、古代の召喚魔法の呪文を唱えて空を見上げた。
(頼む! 成功してくれ! 私の声が届いてくれ)
すると、急にあたりは霧に覆われ、空から現れたのは伝説のグリフォンによく似た神秘的な魔獣だった。その魔獣は大きな翼を持ち、氷のような鱗に覆われ、目は知識と叡智に満ちた輝きを放っていた。大きさはどの魔獣よりも大きく、その姿はまさに神獣そのもので、周囲の魔獣たちもそのオーラだけで恐れおののき、後ずさりするほどだった。
「数世紀ぶりに目を覚ましたが、古代の魔法使いが言っていた『世界に影響を与える存在』ってのはお前か? 我とお前とのあいだにはすでに契約が結ばれている。グリオンドールに命令することができるのはお前だけだ」
よくわからない部分は多いが、どうやら私がこの神獣に命令できるようだった。
「ならば、あの大量発生した魔獣たちを始末してくれ」
「ふむ。美味しそうな魔獣たちだな」
グリオンドールはその鋭いくちばしを素早く魔獣の首筋に突き立てた。咆哮を上げながら、その獰猛な巨体が急速に萎んでいった。私はその様子に驚きながらも、グリオンドールが魔法的な方法で魔獣を制御し、生命エネルギーを自分に取り込むことで更なる力を得ているのだと理解した。魔獣の力を吸収することで、グリオンドールの力が一段と増していくのを感じ取ることができたのだ。
何体かの魔獣のエネルギーを吸収しすっかり満足したグリオンドールは、広大な翼を広げ一気に空高く舞い上がる。そして、空中で力強く羽ばたくと、その広大な翼から氷の刃や氷の弾丸が連続して放たれ、まるで氷の嵐が戦場を覆い尽くすかのような光景が広がった。
グリオンドールはその優雅な舞いの中で、一瞬で数十もの魔獣を氷に閉じ込めた。魔獣たちは氷の中で身動きが取れず、その凍てつく中で力を失っていった。
不思議なことにあれだけの氷の刃や弾丸が空から放たれたのに、魔法騎士団員の誰ひとりとして傷ついた者はいなかった。
「主、他にご命令は?」
巨大なグリオンドールが私の目の前に舞い降りてきて首を傾げた。小鳥が首を傾げる時と同じような仕草が、恐ろしい外見のわりに可愛いと思ったのだった。
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※戦うナー君のイラスト掲載してます。インスタ:bluesky77_77です。青空一夏 AIイラストです。小説の主人公たちや可愛い動物などのイラストを投稿しております。
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