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63 この国は私が守る!(ナサニエル視点)
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「今日は東洋の国の皇太子殿下が見学にいらっしゃる。案内役にナサニエルをご指名なので、第9小隊の者たちが皇太子殿下と行動を共にするように命じる。失礼のないようにしろ」
ロビン魔法騎士団長が第9小隊の隊員たちを自分の執務室に呼びそのようにおっしゃった。ロビン・ウィリアム魔法騎士団長はウィリアム公爵家の次男だが、魔力も多く実力で団長になった人だと言われていた。
「はい? なぜ、私をご指名なのでしょうか? 私は平民騎士で役職にも就いていませんよ。荷が重すぎますし、なにかあった時に責任がとれません」
「それがな、グラフトン侯爵閣下の部下がお前の名前を伝えたそうなのだよ。魔法騎士団で一番優秀で強いとかなんとか。しかもデリア嬢の恋人だということまで言ったらしく、皇太子殿下がナサニエルに興味を持ったというわけさ」
「っつ・・・・・・。私は一番優秀なわけでも強いわけでもありませんよ。みんなが協力してくれて、ゴロヨ小隊長やペーンにイアゴが支えてくれるから、実力以上の力が出せているだけです」
「あーー。やっぱり、お前は人たらしなんだよなぁ。心の底からそんなことを言えるお前を、嫌いになれる奴はそうはいないからな。グラフトン侯爵閣下にも気に入られるはずだよ。私には妹がいるのだが、デリア嬢の恋人でなければ私の義弟にしたかった」
「うわっ。それは無理です。ナサニエルはデリア嬢のものですからね」
「そうですよ。いくらロビン魔法騎士団長でもそれは無理ですね。既に、ナサニエルはグラフトン侯爵家の家族の一員です。な、ナサニエル!」
ゴロヨ小隊長とペーンが代弁してくれた形になったが、もちろん自分の言葉でもお伝えした。
「身に余る光栄ですが、デリア嬢しか愛することはできませんので当然無理です」
もちろん、きっぱり辞退したらロビン魔法騎士団長は苦笑した。少しでもデリア嬢を悲しませたり悩ませることはしたくない。これはグラフトン侯爵閣下との約束なのだから。「泣かせるな」とグラフトン侯爵閣下はおっしゃった。だから、私は嬉しい涙以外は決してデリア嬢に流させることはない。
「とにかくだ、失礼のないようにな。相手は皇太子だから、逆らうなよ」
「了解です」
☆彡 ★彡
皇太子殿下がいらっしゃり、訓練場や講堂、古い書物や呪文の書類が丁寧に整理されている図書室などを案内した。とても魔法に興味があるようで、しきりに古代魔法のことや、大昔にいた大魔法使いのことなどをお尋ねになった。
「大魔法使いのような方が現れるとしたら、俺たちのナサニエルしかいませんよ。こいつは水魔法の上位魔法である氷魔法を意のままに操ります。最近は古代魔法の形態変化魔法も練習しているだろう? だが、夜中に猫や兎に変身するのはやめてくれ」
(バレていたのか。あれは猫や兎に変身しようとしたわけではない。もっと大きな強い存在に変身するつもりだったのだ)
「ナサニエル君はそのような可愛い動物にも変身できるのですね? すばらしいですよ! 上位魔法を使えるのなら、いずれもっと力のある魔法も容易に使えるようになるでしょう」
皇太子殿下はとても褒めてくださるのだが、目の前で戦うところをみたいとしつこくねだられて困ってしまった。
仕方なく大きな訓練場で、形ばかりの水魔法やゴロヨ小隊長の風魔法、ペーンの土魔法を披露した。とても喜んでくださったようだ。
「ぜひ我が国に遊びに来てください! ホニンスシ皇国には美味しいお料理がたくさんありますよ。それに治安もよく、人々はみな親切で思いやりがあります。みんな、おもてなしの心をもって、あなたたちを歓迎するでしょう」
「皇太子殿下。恐れ多いことですが、そのようなお誘いは俺たち個人で返答できるものではありません。国同士の交渉になってくると思いますから、グラフトン侯爵閣下とお話をなさってください。あの方は外務大臣ですから」
ゴロヨ小隊長がそう言うと、皇太子殿下は残念そうな顔をなさった。私たちが皇太子殿下のお相手をしている最中、思いがけない知らせが入る。魔獣の集団がこちらに向かっているというのだ。
イシャーウッド王国では数百年に一回ぐらいでこのようなことがある。この現象は、大地が自らのエネルギーをリセットするための一種の浄化と考えられていた。魔法が満ち溢れそのエネルギーが不均衡になると、大地は魔力の調整を行う必要があり、その際に魔獣たちが呼び寄せられると信じられていた。
イシャーウッド王国ではこの周期的な現象に対処するため、特別な儀式や魔法の結界を築いて防御に努める。また、数百年に一度の出来事に備え、魔法騎士団員たちがその時のための特別な訓練を積む。魔獣の現れる時期が迫ると、人々は協力して結束し、古くから伝わる知識と技術を駆使して、魔獣たちとの遭遇に備えるのだ。
しかし、周期的な感覚でいえば、まだそれが起こるのは30年ばかり先のことだと思われていた。つまり、全く油断していたのだ。
「時期が大幅にずれましたね。仕方がない・・・・・・全力を尽くして戦いましょう。みんな、絶対に愛する人たちを守るんだ!」
「私はなにもできないがどうしたら良いかな? できるだけ協力したいのだが」
殿下は魔法が使えないのにも拘わらず、なんとか力になってくださろうとしていた。優しく勇気のある方なのだと思う。
「殿下は『聖域の間』にいらしてください」
聖域の間は結界専門の騎士たちによって守られている空間だ。強固な結界は通常の物理攻撃だけでなく、魔獣からの攻撃にも耐えることができ、内部には非常用の食料や医薬品が備えられている。
そして、私は魔獣たちがこちらに向かってくる方角を目指して駆けだした。こんな時のために召喚魔法も形態変化魔法も練習していたのだが、まだ成功させたことはなかった。
とにかく、最終的にはどんな方法でも試してみるさ。私がこの国を救う!
୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧
※だんだん終盤に近づいていきます。ここらで手柄をたてて爵位をもらう!という布石になります。なんか、これファンタジー要素が強くなりました。
ロビン魔法騎士団長が第9小隊の隊員たちを自分の執務室に呼びそのようにおっしゃった。ロビン・ウィリアム魔法騎士団長はウィリアム公爵家の次男だが、魔力も多く実力で団長になった人だと言われていた。
「はい? なぜ、私をご指名なのでしょうか? 私は平民騎士で役職にも就いていませんよ。荷が重すぎますし、なにかあった時に責任がとれません」
「それがな、グラフトン侯爵閣下の部下がお前の名前を伝えたそうなのだよ。魔法騎士団で一番優秀で強いとかなんとか。しかもデリア嬢の恋人だということまで言ったらしく、皇太子殿下がナサニエルに興味を持ったというわけさ」
「っつ・・・・・・。私は一番優秀なわけでも強いわけでもありませんよ。みんなが協力してくれて、ゴロヨ小隊長やペーンにイアゴが支えてくれるから、実力以上の力が出せているだけです」
「あーー。やっぱり、お前は人たらしなんだよなぁ。心の底からそんなことを言えるお前を、嫌いになれる奴はそうはいないからな。グラフトン侯爵閣下にも気に入られるはずだよ。私には妹がいるのだが、デリア嬢の恋人でなければ私の義弟にしたかった」
「うわっ。それは無理です。ナサニエルはデリア嬢のものですからね」
「そうですよ。いくらロビン魔法騎士団長でもそれは無理ですね。既に、ナサニエルはグラフトン侯爵家の家族の一員です。な、ナサニエル!」
ゴロヨ小隊長とペーンが代弁してくれた形になったが、もちろん自分の言葉でもお伝えした。
「身に余る光栄ですが、デリア嬢しか愛することはできませんので当然無理です」
もちろん、きっぱり辞退したらロビン魔法騎士団長は苦笑した。少しでもデリア嬢を悲しませたり悩ませることはしたくない。これはグラフトン侯爵閣下との約束なのだから。「泣かせるな」とグラフトン侯爵閣下はおっしゃった。だから、私は嬉しい涙以外は決してデリア嬢に流させることはない。
「とにかくだ、失礼のないようにな。相手は皇太子だから、逆らうなよ」
「了解です」
☆彡 ★彡
皇太子殿下がいらっしゃり、訓練場や講堂、古い書物や呪文の書類が丁寧に整理されている図書室などを案内した。とても魔法に興味があるようで、しきりに古代魔法のことや、大昔にいた大魔法使いのことなどをお尋ねになった。
「大魔法使いのような方が現れるとしたら、俺たちのナサニエルしかいませんよ。こいつは水魔法の上位魔法である氷魔法を意のままに操ります。最近は古代魔法の形態変化魔法も練習しているだろう? だが、夜中に猫や兎に変身するのはやめてくれ」
(バレていたのか。あれは猫や兎に変身しようとしたわけではない。もっと大きな強い存在に変身するつもりだったのだ)
「ナサニエル君はそのような可愛い動物にも変身できるのですね? すばらしいですよ! 上位魔法を使えるのなら、いずれもっと力のある魔法も容易に使えるようになるでしょう」
皇太子殿下はとても褒めてくださるのだが、目の前で戦うところをみたいとしつこくねだられて困ってしまった。
仕方なく大きな訓練場で、形ばかりの水魔法やゴロヨ小隊長の風魔法、ペーンの土魔法を披露した。とても喜んでくださったようだ。
「ぜひ我が国に遊びに来てください! ホニンスシ皇国には美味しいお料理がたくさんありますよ。それに治安もよく、人々はみな親切で思いやりがあります。みんな、おもてなしの心をもって、あなたたちを歓迎するでしょう」
「皇太子殿下。恐れ多いことですが、そのようなお誘いは俺たち個人で返答できるものではありません。国同士の交渉になってくると思いますから、グラフトン侯爵閣下とお話をなさってください。あの方は外務大臣ですから」
ゴロヨ小隊長がそう言うと、皇太子殿下は残念そうな顔をなさった。私たちが皇太子殿下のお相手をしている最中、思いがけない知らせが入る。魔獣の集団がこちらに向かっているというのだ。
イシャーウッド王国では数百年に一回ぐらいでこのようなことがある。この現象は、大地が自らのエネルギーをリセットするための一種の浄化と考えられていた。魔法が満ち溢れそのエネルギーが不均衡になると、大地は魔力の調整を行う必要があり、その際に魔獣たちが呼び寄せられると信じられていた。
イシャーウッド王国ではこの周期的な現象に対処するため、特別な儀式や魔法の結界を築いて防御に努める。また、数百年に一度の出来事に備え、魔法騎士団員たちがその時のための特別な訓練を積む。魔獣の現れる時期が迫ると、人々は協力して結束し、古くから伝わる知識と技術を駆使して、魔獣たちとの遭遇に備えるのだ。
しかし、周期的な感覚でいえば、まだそれが起こるのは30年ばかり先のことだと思われていた。つまり、全く油断していたのだ。
「時期が大幅にずれましたね。仕方がない・・・・・・全力を尽くして戦いましょう。みんな、絶対に愛する人たちを守るんだ!」
「私はなにもできないがどうしたら良いかな? できるだけ協力したいのだが」
殿下は魔法が使えないのにも拘わらず、なんとか力になってくださろうとしていた。優しく勇気のある方なのだと思う。
「殿下は『聖域の間』にいらしてください」
聖域の間は結界専門の騎士たちによって守られている空間だ。強固な結界は通常の物理攻撃だけでなく、魔獣からの攻撃にも耐えることができ、内部には非常用の食料や医薬品が備えられている。
そして、私は魔獣たちがこちらに向かってくる方角を目指して駆けだした。こんな時のために召喚魔法も形態変化魔法も練習していたのだが、まだ成功させたことはなかった。
とにかく、最終的にはどんな方法でも試してみるさ。私がこの国を救う!
୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧
※だんだん終盤に近づいていきます。ここらで手柄をたてて爵位をもらう!という布石になります。なんか、これファンタジー要素が強くなりました。
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