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3 クロードの悩み
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◆◆◆◆
「クロード様、宜しいでしょうか?」
「どうした、ベッテ?」
クロードは馬車に乗り込む直前に、従者のベッテに声を掛けられた。
「カルロッタ様の言付けを、使用人が預かって参りました。カルロッタ様は、今すぐにクロード様にお会いしたいそうです」
「カルロッタが?」
「本日のクロード様のご予定ですが、午前中に会合がございます。準備もございますので、王城出仕を優先される事をお勧めいたします」
クロードは従者の言葉に苛立ちを覚えた。
「つまり、カルロッタの願いを無視しろと言いたいのか、ベッテ?」
「そうではありません。カルロッタ様には、クロード様が王城よりお帰りになるまで待って頂くだけです。あの方は、我慢というものを覚えるべきなのです」
「カルロッタに対して随分と厳しいな?」
「私だけではなく、皆が思っている事です。後継ぎだったヘルベルト様が早世なさったのは、カルロッタ様の我が儘が原因だと皆が申しております」
ガーネット家の次期当主のヘルベルトは、若くして亡くなった。弟のカルロッタは「孕み子」の為、次期当主となる資格はない。その為、従兄弟のクロードがガーネット家の後継ぎとして迎えられた。
亡くなったヘルベルトの従者を勤めていたベッテは、新たな主であるクロードに時折慇懃無礼な態度をとることがあった。
「ベッテは先に王城に向かい、会合の準備を進めておいてくれ。俺はカルロッタに会ってから、王城に向かう。それと、俺の記憶違いでなければ、会合は午後からだ。ベッテは予定表を再確認しておけ」
クロードはそれだけ言うと、カルロッタの部屋に向かった。従者のベッテは、わざと予定を違えてクロードに伝えた。それは、クロードを主として認めていない証だ。
クロードは次期当主としてガーネット家に迎えられたが、歓迎されているとはいえない状態だった。
「ヘルベルトは優秀な奴だったから、それも仕方ないか・・」
友であったヘルベルトを想い、クロードは静かに呟いた。クロードが思い出に浸っていると、カルロッタの部屋から悲鳴が聞こえた。
「カルロッタの声か!?」
クロードは慌てて階段を駆け上がり、カルロッタの部屋に向かった。部屋に近づくにつれて、カルロッタの叫び声も聞こえてきた。部屋の前では、数人の使用人が扉に耳を近づけ様子を伺っていた。クロードは舌打ちをした。
「何をしている!」
「クロード様!」
「カルロッタが悲鳴を上げているのに、何も手立てを打たないつもりか?カルロッタに良い感情を抱いていなくても、使用人の役目は果たせ。カルロッタは私が引き受ける。お前たちは、医者を呼びに行け!」
「は、はい!」
「分かりました!」
使用人たちが扉の前から、慌てて立ち去った。クロードは深い息を吐いた後に、扉を強めにノックした。そして、声を掛けた。
「カルロッタ、大丈夫か?」
◆◆◆◆◆
「クロード様、宜しいでしょうか?」
「どうした、ベッテ?」
クロードは馬車に乗り込む直前に、従者のベッテに声を掛けられた。
「カルロッタ様の言付けを、使用人が預かって参りました。カルロッタ様は、今すぐにクロード様にお会いしたいそうです」
「カルロッタが?」
「本日のクロード様のご予定ですが、午前中に会合がございます。準備もございますので、王城出仕を優先される事をお勧めいたします」
クロードは従者の言葉に苛立ちを覚えた。
「つまり、カルロッタの願いを無視しろと言いたいのか、ベッテ?」
「そうではありません。カルロッタ様には、クロード様が王城よりお帰りになるまで待って頂くだけです。あの方は、我慢というものを覚えるべきなのです」
「カルロッタに対して随分と厳しいな?」
「私だけではなく、皆が思っている事です。後継ぎだったヘルベルト様が早世なさったのは、カルロッタ様の我が儘が原因だと皆が申しております」
ガーネット家の次期当主のヘルベルトは、若くして亡くなった。弟のカルロッタは「孕み子」の為、次期当主となる資格はない。その為、従兄弟のクロードがガーネット家の後継ぎとして迎えられた。
亡くなったヘルベルトの従者を勤めていたベッテは、新たな主であるクロードに時折慇懃無礼な態度をとることがあった。
「ベッテは先に王城に向かい、会合の準備を進めておいてくれ。俺はカルロッタに会ってから、王城に向かう。それと、俺の記憶違いでなければ、会合は午後からだ。ベッテは予定表を再確認しておけ」
クロードはそれだけ言うと、カルロッタの部屋に向かった。従者のベッテは、わざと予定を違えてクロードに伝えた。それは、クロードを主として認めていない証だ。
クロードは次期当主としてガーネット家に迎えられたが、歓迎されているとはいえない状態だった。
「ヘルベルトは優秀な奴だったから、それも仕方ないか・・」
友であったヘルベルトを想い、クロードは静かに呟いた。クロードが思い出に浸っていると、カルロッタの部屋から悲鳴が聞こえた。
「カルロッタの声か!?」
クロードは慌てて階段を駆け上がり、カルロッタの部屋に向かった。部屋に近づくにつれて、カルロッタの叫び声も聞こえてきた。部屋の前では、数人の使用人が扉に耳を近づけ様子を伺っていた。クロードは舌打ちをした。
「何をしている!」
「クロード様!」
「カルロッタが悲鳴を上げているのに、何も手立てを打たないつもりか?カルロッタに良い感情を抱いていなくても、使用人の役目は果たせ。カルロッタは私が引き受ける。お前たちは、医者を呼びに行け!」
「は、はい!」
「分かりました!」
使用人たちが扉の前から、慌てて立ち去った。クロードは深い息を吐いた後に、扉を強めにノックした。そして、声を掛けた。
「カルロッタ、大丈夫か?」
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