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2 カルロッタの考察

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王都のガーネット邸の自室で、私は静養している。ベッドに横たわりながら、私はぼんやりと天井を眺めていた。

私は底無し沼から生還した。そして、パオラは牢獄行きとなった。私を助けてくれたのは、婚約者のアデルバート・ブレロだった。

私がパオラを睡蓮の沼に誘ったと知り、アデルバートは仲間を集めた。そして、馬を走らせ底無し沼に向かった。

アデルバートは、私がパオラを害すると思ったのだろうな。だから、必死になって睡蓮の沼に馬を走らせた。パオラを救うために。

でも、現実は違っていた。底無し沼に体半分沈めていたのは私で、沼の淵で笑い声をあげていたのがパオラだった。

アデルバートはどんな思いで、その光景を見たのだろうか?

私の場合は、パオラを底無し沼に突き落とした後、すぐにその場を立ち去った。だから、アデルバートがパオラを救うために、睡蓮の沼に向かっているだなんて知らなかった。

ほんの僅かな時間差で、生死が別れる。アデルバートの到着が少しでも遅れていたら、私もパオラの様に沼で死んでいた。

パオラの体が完全に沼に沈む前に、アデルバートは睡蓮の沼に辿り着いたのだろう。そして、私を助けた時の様に、馬を使って底無し沼からパオラを救いだした。パオラはすでに亡くなっていたけれど・・。

パオラは亡くなった。
そして、私は処刑されて死んだ。

不思議な話を集めた書物を、子供の頃に夢中になって読んだ記憶がある。その中に同じような話があった。亡くなった老人の魂が若い頃の自分の体に宿り、人生をやり直す話だった。

処刑されて死んだ私の魂は、時をさかのぼり、自分の肉体に宿ったのだろうか?

私は自らの頸に手を宛がった。間違いなく繋がっている。私はいつの間にか泣き出していた。アデルバートへの愛情に振り回されて、パオラを殺した。そして、私自身も頸をはねられ死んだ。

パオラはこれからどうなるのかな?

パオラも頸をはねられるのかな?そうしたら、パオラの魂はどこにいくのだろう。もしも、私と同様に時をさかのぼったらどうなる?

「パオラの処刑を止めないとまずい!」

私は上半身をベッドから起こし、床に足を下ろした。だが、足ががくがくしてそのまま床に座り込んでしまった。部屋の隅に控えていた使用人が、慌ててかけつける。

「クロード兄上に相談事があります。私が兄上に会いたがっていると、伝えてきて」

私は使用人に向かい命令していた。



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