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第33話 監禁

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◆◆◆◆◆


初夏、7月上旬。

僕の漫画『深海の森』が、前編・中篇後編と三週にわたって雑誌に掲載された。

その頃、一つの異変があった。

要くんが施設から姿を消し、行方が分からなくなってしまったのだ。施設から兄に連絡があったのは、失踪してから2日後の事だった。

兄さんは僕にも連絡をくれた。兄さんから要くんの事は聞かれたが、ここしばらく会っていないと伝える事しかできなかった。そう兄さんに伝えると、彼が現れたら連絡を欲しいと言って電話が切れた。

兄さんの声は酷く不安げに聞こえた。

施設のスタッフは既に警察に失踪届けを出しており、施設でも独自に要くんを探しているようだった。その後の調べから、要くんが学校でいじめに遭っていた事が分かった。

父親殺しが知れ渡った地区での学校生活は、要にとって酷く大変だった事は容易に想像がついた。別の地区の施設への移動も勧められていたらしいが、要くんは頑なに拒否し続けたらしい。 

彼はいじめを受けていることを、周辺にはひた隠しにして学校に通い続けていた。その彼が学校に登校したまま、行方が分からなくなってしまったのだ。

要くんには父親を殺してしまった過去がある。その為に、警察も積極的に関係者への聴取をした。だが、要の行方は分からないままだった。

もしかすると、要くんは自殺を考えて施設を抜け出したのかもしれない。そんな思いが、周辺の人間を不安にさせ焦らせる。だが、要は半月が過ぎても見つからなかった。

僕にも兄さんにも各々の生活があり、要くんのことは気にしつつも自分自身の生活に追われる日々が続く。結局、要くんの捜索は警察に一任するしかなかった。

僕の仕事の方は、驚くほど順調だった。漫画『深海の森』は、読者の受けがよく、きわどいテーマや描写があったがおおむね好評だった。コミック化の話も順調に進んでいる。漫画が脚光をあびたことで、絶版になっていた小説の方も脚光を浴びた。映画化の話まで浮上している。

小説の作者は40代の女性で、結婚後は引退して小説を発表しておらず代表作も『深海の森』のみだった。出版社は女性作家が未発表の小説を持っている事を知ると、それの漫画化を作家に提案した。

作家はその提案を受け入れる際に、僕の作画で漫画化したいと条件をつけた。

あまりに大きなチャンスに、僕は戸惑いを隠せなかった。それでも、僕には優しく背中を押してくれる人がいる。

「がんばりや、正美!」

和樹の笑顔と言葉を聞くだけで、僕の励みになった。僕はまだ和樹の専属のアシスタントだが、徐々に自分の仕事が増えつつあった。それでも、彼との関係は良好だった。

僕はいつの間にか、和樹に心を奪われはじめていた。和樹は僕にとってなくてはならない存在になりつつあった。



◇◇◇◇◇


(要・・監禁中・・)


・・・??

あれー、どこだっけ・・ここ?
んん。なんで、俺は腕を縛られてるんだっけ??

親父は死んだのに、なんで俺は拘束されてるんだ。あれ、親父って死んだんだっけ????

なんで、死んだんだっけ?
あれ、親父は生きてたっけ?

ん、まあいいかぁ。それより、体が熱いな。裸なのになぁーーーー?


「うわぁーー!先輩、やりすぎじゃないですか?要の尻が血みどろじゃないっすかぁ~」

「ん、そうか?突っ込んだら喜んで腰を振っていたぞ?」

誰かが話してる。誰だっけ・・・?
あれ?誰かが、俺の顔を覗き込んでるな。んん、見たことあるけど・・だれだっけ???

「駄目だ。完全にいっちゃってる目をしているな。先輩、あの薬盛ってセックスしてるでしょ?おい、要・・俺の顔覚えているか?」

知らないよ、お前なんて。

鬱陶しいな、顔を近づけるなよ。それより、体が熱いんだ。なんとかしてくれよ・・

「んぁ・・ああ、知らない・・・・だぁれ、お前?」

「一応、俺の声は聞こえているみたいだな?でも、俺の事は忘れちまったか。薬でぼけたか?あーんなに、公衆トイレで可愛がってやったのによ。薄情だな、かなめ~」

公衆トイレぇ・・??ああ、そういえばそんなこともあったかな??

「あーあ。俺はもっとお前を虐めて、楽しむつもりだったのにな。先輩にお前の事を話すんじゃなかった。先輩がお前に興味もって、拉致してこいって命令されるしよ。命令されたら怖くて断れないし。もう、迷惑過ぎる。大体、先輩もおかしいっすよ。中学生の俺に、普通拉致とかさせます~?」

「普通の中学生が、公衆トイレで男を輪姦したりしないだろう?しかも、先輩の俺に自慢げにその話をしやがって。俺が要を拉致して、やりまくりたくなったのも仕方のないことだろ?」

拉致・・?

ああそうだ。俺は、こいつらに拉致されたんだった。
拉致されたの、いつだっけ??
まあいいや。

それより、鬱陶しいな・・お前の顔。あっち行けよ!
しっ、しっ!!

「あっち、いけっ・・誰だぁよ・・お前ぇ。鬱陶し・・いぃだろ」

男が身を引くと俺から離れて行く。よかった。

「先輩、薬盛りすぎじゃないですか?あれって、安いけど欠陥ドラックだって噂ですよ?なんていったかな・・そうだ、前頭葉だったっけ?そこが短期間にやられて、判断力とか思考とかおかしくなるらしいですよ?」

ぜんとうよう・・・??判断力?しこう・・??

「ああ、そうらしいな。でも、俺が使うわけじゃないから問題ないだろ。薬を盛ってヤると、多少無茶しても喜んで腰振りやがる。喘いで尻がぎゅうぎゅうするから気持ちいいんだよ、俺がな。俺は痛がって泣く奴を犯すのは、趣味じゃないんだ。優しいだろ?」

「優しくはないです。先輩は完全に極悪人だと思いますよ。多分、あいつ壊れちゃいますよ、先輩?」

あー、俺は・・壊れかけってやつなんだ?へー。まあ、いいや。

だって、おれ人殺しだし。んんん?
俺は、誰、殺したんだっけ??

「完全に壊れたら、山にでも捨てに行くからその時は手伝えよ。それより、こいつの事を調べに警察が学校に来たと聞いたぞ?大丈夫なのか?」

「あー、平気っすよ。別に俺が聴取されたわけじゃないし。俺、学校では要に近づいてないし、接点なんてないですから。まあ、よく調べたら俺との関係も出てくるかも知れないけど。でも、中坊の家出なんてよくあることだし、警察もいつまでもこの件に関わってはいないと思いますよ?」

「じゃあ、遠慮なく要を監禁しとくか。そろそろ、可愛がってやるかな」

「まだ、抱くんですか?酷い状態だけどなぁ。まぁ、いいか。じゃ、邪魔者は消えます。要ぇ、先輩に可愛がってもらいなよ。いっぱい腰振ってな!」

誰だ・・・俺に覆いかぶさるのは?
重いだろ?

「あぁ・・・んんんあ・・・・!」

何か・・中に入ってきた。なんだっけ・・これぇ・・・??

「はぁ・・あああぁ・・んん、あああああん・・!!」

ギシギシギシギシ

ギシギシ

熱い、中が・・・あつい。

「薬盛ると気持ちいいだろ、要?返事しろ!殴られたいのか!!」

ぐちゃぁ

ぐちゃ

ギジギシギシギシ

あぁああああああああああああああああああ

「気持ちぃいいいいーーー!」

熱い。熱い。あつい・・・・


俺、俺・・もっとなんかしないといけないことが、あったのにぃいいいい!
なんだっけ???

ああ、そうだ・・弘樹さんだ。

あれ?弘樹さんって誰だっけ?
ああそうだ・・・俺の大事な人だ。
その人が、苦しんでいるから。

なんで??

ギシギシギシギシ

熱い。熱い。なんか・・痛い?
痛い????
ええええええ??

違う、弘樹さん!

「あぁっ・・あああぁああああーーーーーーーーー!!」

弘樹さんの為に。

要らない人を排除しないと。

そうだ、親父みたいに要らない奴は排除だ。排除。排除。排除。排除。

殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ


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