規約違反少女がマッチングアプリで無法すぎる!

アメノヒセカイ

文字の大きさ
98 / 168
8章 魅了少女が不安すぎる!『前期』90~108話

その7 ヒウタとサークル

しおりを挟む
 サークル専用の建物、通称サークル棟までは図書館から五分ほどかかる。
 四人は図書館を出てサークル棟に行くことになった。なお、ヒウタとハクの実験レポート用の参考文献については後日探すことになったが、カワクロが去年以前の実験レポートから実用的な専門書を見当してくれるらしい。
 社会研究会の部長であるキクラに続いて、真後ろにハク、その次にヒウタ、カワクロと続く。
 道の両脇には燃えているようにも綿菓子のようにも見える葉を付けた常緑樹がやけに生えている。
 枯れた背丈の高い草が靴にもつれて歩きにくい。
「ヒウタ、前に行って。できればうまく枯れ草を踏みながら。さっき躓いて転びかけたなの」
「カワクロさん?」
 ヒウタの前を歩いていたカワクロがいつの間にかヒウタの後ろにいた。
「なんとか大学祭までに持って帰ってもらうか処分するか学祭中隠すか。緊張というか胃が痛くなってきた」
「カワクロさんって優しいですよね?」
「そ、そんなことない。うん」
 緊張して気分が悪いのか、照れて歯切れが悪いのか分からない反応である。ヒウタはだんだん歩幅を狭めてカワクロと並んだ。
「どうして下がってきた?」
「やけに気が進まないみたいなので」
「これから起こることを考えれば気が進まないから」
 ハクやキクラに聞こえない声で言う。
 サークル棟に着いた。二階建ての建物が二つ、二階部分に連絡通路を通して繋がっているような棟である。また、外や連絡通路には燃やせるゴミ、燃やさないゴミ、ペットボトル、缶と分別された連結ゴミ箱が置いてあった。
「ベンチとテーブルもある。なんて広さだ」
 ヒウタが言うと、カワクロは小さい手でヒウタの肩をポンと叩く。
「理系の宿命。とはいえ、ヒウタは大学祭実行委員なら入れば良かったなの」
「どうなんでしょう? 意外と忙しくて」
「シュイシュイに任せられた仕事?」
 シュイシュイとはマッチングアプリの代表のシュイロのことで、管理に関するアルバイトをするヒウタの雇い主である。
「そうですね」
「そう」
 キクラは無遠慮な様子で一階の一室まで歩く。
 ポケットから取り出した鍵で素早く開ける。
扉は人が住んでいるアパートのようである。
「さあ、俺の宝物を見せてやる!」
 キクラは得々とした様子で部室の本棚の下にあるお菓子の箱を取り出す。
 箱は金属製でキャラクターらしいデザインがあるが、着色が剥がれて至る所に灰色が浮いている。
「これが宝、流石師匠」
 箱を開けると意外にも中は整理整頓されて、塵埃のない状態だった。
 が、それを見たカワクロは、見たくないといったように目を細めて、余計なことを吐かないように口を歪めていた。
「げ」
 つい声にしてしまうカワクロだったが、嬉々として見せるキクラとありがたそうにするハクを見て、咄嗟の笑顔を見せる。その表情の変化にヒウタは驚いた。
「ほら、これだよ。配布する予定のもの。それと裏で展示するもの。どうだ?」
 キクラはイラストを見せる。それは水着のものから、ぎりぎりアウトなもの、完全にアウトなものまで。カワクロは表情こそ楽しそうだが目が笑っていない。
「大丈夫ですか?」
「ん? 好きなものは好きと言える。私は否定される苦しみを知っているからこそ、できるだけ認めてあげたい、あははは、……」
 カワクロは固まった。
 表情も目線も動かない。キクラやハクは気づかずにイラストや漫画を見て盛り上がっていた。
「大丈夫ですか?」
「もちろん。これが芸術なの」
 カワクロは女性が猫のような耳を付けて、そういう行為をしているイラストを手に取る。
「芸術」
 カワクロは最後にそう言って湯気を出した。
 ヒウタがカワクロの肩を叩くが応答はない。
 気絶したのである。
「カワクロさん!」
 キクラとハクは仲良くなっていた。
 話が長そうである。
 ヒウタはキクラに用事があると伝えて、カワクロを背負って部室を出た。
 さらに歩いていると。
「はっ。私、何をしていたなの? ……そっか。えっちなイラスト見てショートしていたなの。思い出したなの」
「起きました?」
「下ろして。まさか私の香りと感触をその身に刻み込もうと?」
 ヒウタはゆっくりとカワクロを下ろす。
 まさかカワクロに言われて温もりや柔らかさを意識してしまったとは言えない。
「カワクロさん、これからどうするんですか?」
「もう一度話をしたいなの。私とヒウタの友人、ヒウタで押収する。演技は得意?」
 カワクロは真剣そうな表情で言う。
 ヒウタは首を左右に振った。
「なら頑張ってもらう」
「頑張るとは?」
 カワクロは背伸びをしてヒウタの耳元で言う。
 ヒウタは嫌そうな表情を見せるもカワクロの瞳を見ると、諦めて頭を掻く。
 それから部室に戻って。
「これいいですね! ケモミミってやつですか」
 ヒウタは宝石のように輝かしい目で言う。なお、表情筋が強張りそうである。
「私、このクラーケンが格好良くていいなの。この女性の表情も好きなの」
 カワクロはイラストを見ると大事そうに抱き締める。なお、目は笑っていない。
「ヒウタ分かってるな」
「おお、気に入ってくれたか!」
 キクラとハクは気分を良くして。
 なんとか。
「そんなに気に入ったなら持ってけ。君たちみたいなエロを愛する者に託す。ハク、後は頼んだぞ」
 キクラはお菓子の箱ごとハクに渡す。
 ハクが涙を流すと、キクラも続けて泣く。
 というわけで無事に大学祭での展示、配布を防ぐことはできたが。
 ハクがアイテムを手に入れたことと、カワクロとヒウタがそういうものが好きということになって。次の講義が始まるまで、ヒウタはハクのそういうものに対する思いを聞き続けることになった。
 一方、カワクロは講義がある建物の近くでヒウタ、ハクと分かれて。
 立ったままで額に手を置いて息を吐く。
 大学祭実行委員を表す腕章を外した。
「一応うまくいったなの。今年からはコウミたんが大学祭来るって、まさかあんなの視界に入れるわけには」
 カワクロは帰路へ向かった。
 顔を赤くして、時々手で顔を隠しながら。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

処理中です...