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四章RL:探り当てし交渉の地
二話:瞳には無邪気な狂気を
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友人は、魔王になると言った。
大層な宣言だが正体すら知れないものに、どうやってなろうと言うのか。
「……本気か? これから魔王国に取り入る気なのか?」
「ううん! 私そういうの得意じゃないから、魔王を殺して乗っ取るつもりだよ!! 聖剣が手に入れば魔王も殺せるんだし。それに……私ならそれが出来る」
リンは最後、かすかに笑って見せた。
リンという男は一度やると決めると、いかなる不条理だろうが成し遂げる。腹が立つが、事実そうなのだ。きっとそういう才能がある。
散々振り回されてきた俺の経験則からして、魔王が倒されるのはほぼ確定だ。聖剣は容易く引き抜けるだろうし、魔王の居場所も突き止められるだろう。そもそもリン自身も勇者に望んでなった訳では無い。そんな人間すらその気にさせる動機とは……何なのだろうか。
「そもそもお前どうして魔王になりたいんだ」
俺は試しに、ストレートに聞いてみた。
リンはしばらく上を見上げ、何か考えているようだった。そして、
「……私はローレルに嫌われたまま死にたくないんだ」
そうつぶやいた。
「は……はぁ……?」
困惑する俺をよそに、リンは続ける。屈託のない笑顔で。
「王様とか権力を持ってる人が、ローレルは好きなんでしょ? なら、王様になればいいかなぁって!」
思わず顔をしかめた。どうやら勘違いをされている。しかし、半分は合っているのだ。
確かに権力者は嫌いじゃない。俺の味方をするという前提があるならばの話だが。……リンがもし良い立場を得たのなら、俺はリンの下に居るのが一番いい気がするな。
俺は一旦その話を忘れ、リンに問いかける。
「権力者になりたいだけなら、魔王じゃなくていいんじゃないのか? お前はただ国に戻るだけでも騎士団長様だぜ? もう何年かそこにいれば大臣にでも登用されるだろう。それじゃダメなのか?」
「うん。ダメ」
リンはキッパリと言った。そして、
「私は魔王になる。 そして国を滅ぼし、焼き尽くし、人間という種を根絶やしにする。その力とその立場が欲しい」
恐ろしい計画を口にした。
「馬鹿げてるな。世界に数多く人種はあれど、数で人間には遠く及ばない。 どうやったって頭数で負ける。魔王を殺したと仮定して、聖剣は持っているだろうが、たかが兵器一つだ。物量には勝てない。
だがそんな途方もない戦い、何年かかると思ってるんだ?」
「ローレルが来てくれたら、三日で終わるよ。不可能じゃない」
「方法が気になりすぎて、加担したいところだが……今そんなことをすると、祖国に向ける顔が無いんでね。お前は良いのか? そんなことを口走って」
俺はそう言うも、リンは言葉を緩めない。むしろ語気を強くする。
「だってあんな腐りきった国、ハエに貪られて無くなっちゃいそうだし。 それなら死に体の国家ごと、集るハエを焼いちゃおうよ!」
その目には、明らかに狂気が見て取れた。
「なあ、リン。お前……何があった? 先程からの言動といい、これまでの状況証拠といい……俺の早とちりじゃないなら、お前は間違いなく人を殺している。それは認めるか?」
「うん! もっちろん!」
「なぜ……そんなことを?」
俺がそう聞くも、すぐに質問が帰ってきた。
「ローレルはさ、……なんで人が殺意を抱くと思う?」
お前になら、俺の気持ちが分かるだろ?と言うかのようだった。
大層な宣言だが正体すら知れないものに、どうやってなろうと言うのか。
「……本気か? これから魔王国に取り入る気なのか?」
「ううん! 私そういうの得意じゃないから、魔王を殺して乗っ取るつもりだよ!! 聖剣が手に入れば魔王も殺せるんだし。それに……私ならそれが出来る」
リンは最後、かすかに笑って見せた。
リンという男は一度やると決めると、いかなる不条理だろうが成し遂げる。腹が立つが、事実そうなのだ。きっとそういう才能がある。
散々振り回されてきた俺の経験則からして、魔王が倒されるのはほぼ確定だ。聖剣は容易く引き抜けるだろうし、魔王の居場所も突き止められるだろう。そもそもリン自身も勇者に望んでなった訳では無い。そんな人間すらその気にさせる動機とは……何なのだろうか。
「そもそもお前どうして魔王になりたいんだ」
俺は試しに、ストレートに聞いてみた。
リンはしばらく上を見上げ、何か考えているようだった。そして、
「……私はローレルに嫌われたまま死にたくないんだ」
そうつぶやいた。
「は……はぁ……?」
困惑する俺をよそに、リンは続ける。屈託のない笑顔で。
「王様とか権力を持ってる人が、ローレルは好きなんでしょ? なら、王様になればいいかなぁって!」
思わず顔をしかめた。どうやら勘違いをされている。しかし、半分は合っているのだ。
確かに権力者は嫌いじゃない。俺の味方をするという前提があるならばの話だが。……リンがもし良い立場を得たのなら、俺はリンの下に居るのが一番いい気がするな。
俺は一旦その話を忘れ、リンに問いかける。
「権力者になりたいだけなら、魔王じゃなくていいんじゃないのか? お前はただ国に戻るだけでも騎士団長様だぜ? もう何年かそこにいれば大臣にでも登用されるだろう。それじゃダメなのか?」
「うん。ダメ」
リンはキッパリと言った。そして、
「私は魔王になる。 そして国を滅ぼし、焼き尽くし、人間という種を根絶やしにする。その力とその立場が欲しい」
恐ろしい計画を口にした。
「馬鹿げてるな。世界に数多く人種はあれど、数で人間には遠く及ばない。 どうやったって頭数で負ける。魔王を殺したと仮定して、聖剣は持っているだろうが、たかが兵器一つだ。物量には勝てない。
だがそんな途方もない戦い、何年かかると思ってるんだ?」
「ローレルが来てくれたら、三日で終わるよ。不可能じゃない」
「方法が気になりすぎて、加担したいところだが……今そんなことをすると、祖国に向ける顔が無いんでね。お前は良いのか? そんなことを口走って」
俺はそう言うも、リンは言葉を緩めない。むしろ語気を強くする。
「だってあんな腐りきった国、ハエに貪られて無くなっちゃいそうだし。 それなら死に体の国家ごと、集るハエを焼いちゃおうよ!」
その目には、明らかに狂気が見て取れた。
「なあ、リン。お前……何があった? 先程からの言動といい、これまでの状況証拠といい……俺の早とちりじゃないなら、お前は間違いなく人を殺している。それは認めるか?」
「うん! もっちろん!」
「なぜ……そんなことを?」
俺がそう聞くも、すぐに質問が帰ってきた。
「ローレルはさ、……なんで人が殺意を抱くと思う?」
お前になら、俺の気持ちが分かるだろ?と言うかのようだった。
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