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第百七十七話
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いくらかさっぱりすると、グレースは気持ちもはっきりしたのか、さっきよりはしっかりした動きで、奈々実の傷の手当をし、汚れているところを清めたり水を飲ませてくれた。
「ごめんね、ナナミ。貴女を警護するはずなのに、こんなことになっちゃって・・・」
「いいえ、グレースさんこそ、大丈夫ですか? 薬とか、ちゃんと塗って・・・」
「大丈夫よ」
グレースの口調は、どこかなげやりだった。
「サシャは?」
「わからないわ。ガキはほっとけ、って声だけ聞こえたから、ここには連れて来られていないと思う」
怪我はしているかもしれないが、殺されてはいないらしい。
「あいつら・・・、なんなんですか?」
「たぶん、貴女をさらって売り飛ばすとか、するつもりなんだろうけど・・・、まさか、シエストレムの鎖を持ってるなんて思わなかった。どこから手に入れたのかしら、あんなもの」
縛られている手首が痛い、と奈々実が言うと、解いたら怒られると思う、と言いながら、少しだけ結び目を緩くして、痛くないようにしてくれた。
「グレースさん、一人で逃げてくださいよ。縛られてないんだし。」
「そんなことできるわけないって、わかっててわたしのことは縛らないんでしょう。足首、捻っちゃってまともに歩けないのよ。ナナミの世話をさせる目的もあるみたいだし、だいたい、出口で捕まるわよ、洞穴なんだもの」
「反対に奥へ行ったら、どこかに出られるんじゃないですか? けっこう風が吹いてきますよね?」
「出られてもその場所がどこだかわからないわ。ポート・タウンに戻るのに何日もかかっていたら、その間にあいつらはナナミを連れて逃げちゃうかもしれない。そもそも装備も無しに何日も動き回れない」
「でも、セヴラン様を殺さなければ、わたしのことをシエストレムの鎖でつないでも、魔力を借りることはできない、って、あの男は知ってるみたいな口ぶりでした。セヴラン様を殺すまでは、わたしを連れて逃げても意味が無いって、わかってるはずです」
グレースは少し考える。それでも、自分だけ逃げるわけにはいかないと頑固に言い張った。
「セヴラン様を殺すなんて、そうそう簡単にできるはずないわ。だから、今すぐには殺せないけど、そのうちなんとかしよう、でもナナミを取り返されないように連れて遠くに逃げよう、って、あいつらが考えるかもしれないじゃない。絶対にわたし、ナナミから離れないから。チャンスがあったら、ナナミを連れて逃げるから、わたしを信じて」
グレースにも傭兵やボディ・ガードとして糊口をしのいできた、プライドというものがあるのだろう。
「ごめんね、ナナミ。貴女を警護するはずなのに、こんなことになっちゃって・・・」
「いいえ、グレースさんこそ、大丈夫ですか? 薬とか、ちゃんと塗って・・・」
「大丈夫よ」
グレースの口調は、どこかなげやりだった。
「サシャは?」
「わからないわ。ガキはほっとけ、って声だけ聞こえたから、ここには連れて来られていないと思う」
怪我はしているかもしれないが、殺されてはいないらしい。
「あいつら・・・、なんなんですか?」
「たぶん、貴女をさらって売り飛ばすとか、するつもりなんだろうけど・・・、まさか、シエストレムの鎖を持ってるなんて思わなかった。どこから手に入れたのかしら、あんなもの」
縛られている手首が痛い、と奈々実が言うと、解いたら怒られると思う、と言いながら、少しだけ結び目を緩くして、痛くないようにしてくれた。
「グレースさん、一人で逃げてくださいよ。縛られてないんだし。」
「そんなことできるわけないって、わかっててわたしのことは縛らないんでしょう。足首、捻っちゃってまともに歩けないのよ。ナナミの世話をさせる目的もあるみたいだし、だいたい、出口で捕まるわよ、洞穴なんだもの」
「反対に奥へ行ったら、どこかに出られるんじゃないですか? けっこう風が吹いてきますよね?」
「出られてもその場所がどこだかわからないわ。ポート・タウンに戻るのに何日もかかっていたら、その間にあいつらはナナミを連れて逃げちゃうかもしれない。そもそも装備も無しに何日も動き回れない」
「でも、セヴラン様を殺さなければ、わたしのことをシエストレムの鎖でつないでも、魔力を借りることはできない、って、あの男は知ってるみたいな口ぶりでした。セヴラン様を殺すまでは、わたしを連れて逃げても意味が無いって、わかってるはずです」
グレースは少し考える。それでも、自分だけ逃げるわけにはいかないと頑固に言い張った。
「セヴラン様を殺すなんて、そうそう簡単にできるはずないわ。だから、今すぐには殺せないけど、そのうちなんとかしよう、でもナナミを取り返されないように連れて遠くに逃げよう、って、あいつらが考えるかもしれないじゃない。絶対にわたし、ナナミから離れないから。チャンスがあったら、ナナミを連れて逃げるから、わたしを信じて」
グレースにも傭兵やボディ・ガードとして糊口をしのいできた、プライドというものがあるのだろう。
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