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第百七十八話
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「グレースさんは、シエストレムの鎖について、どの程度知ってるのですか?」
髭づらの男がそれを持っているなんて思わなかった、という。でも、シエストレムの鎖というものについての知識はあるのだろうかと思う。
「魔力がある女性を繋ぐと、魔力を借りて使えるって聞いたことがあるけど、高価なものだから、あんな奴らが手に入れられるなんて思わなかった。どうやって手に入れたのかしら」
奈々実も自分が繋がれている身でありながら、シエストレムの鎖についてすべて詳しくはわからない。飼い主、と言っていたのがセヴランのことで、セヴランを殺さなければ奈々実の魔力を借りて使うことはできない、と、そこまでは、髭づらの男は知っているかのような口ぶりだった。でも、オリジナルとイネスが作った『改良版』では、いくつか違う点があるはずだ。そして、同じなのは愛さなければならないこと、のはずだ。
「シエストレムの鎖で女性の・・・、わたしの魔力を使いたい場合には、わたしを、その、愛さなければいけないって、イネス様は言っていたんですけど、あの男はそれを理解しているんですかね・・・?」
それよりも以前に、愛するというのがどういうことなのか、あの下劣な男達は理解しているのだろうかと思う。
「・・・愛する・・・?」
まるで未知の単語を聞いたかのように、グレースは不思議そうな顔で奈々実を見た。
「そう聞きました。それと、わたしまだ、成人してないです。未成年です。未成年に性行為をしたら、その男の人は、その、・・・アソコを切らなきゃいけないとか、自殺しなきゃいけないって、セヴラン様が言ってました。モニークさんは、生涯、他の女性とは性行為できなくなる、って言ってました。だから、セヴラン様は、わたしを繋留はしたけど、その・・・、そういうことはまだ、してない、です。あの髭もじゃの男は、ただ単純にセヴラン様を殺してわたしをレイプすれば、それだけでわたしの魔力が使えるって、思っているんでしょうか・・・?」
グレースは呆気にとられているように見えた。
「愛する・・・? って、ナナミを? 生涯、他の女性とは性行為ができなくなる? 本当に?」
「・・・グレースさん?」
グレースは状況が把握できないらしい。なにをそんな茫然としているのかと、奈々実はグレースを怪訝な面持ちで見た。
洞穴の入り口は大きな岩の影になっていて、意外と見つけにくい。しかし、サシャには簡単に見つけることができた。
「子供のほうがかくれんぼは得意だっつーの」
隠れるほうも鬼になって友達をみつけるのも、サシャは得意だった。今のように怪我をしていなければ、もっと早くみつけられたのにと思う。
賊は、中にいた三人の他に下っ端が複数、あっちこっちに距離をおいて見張りに立っていた。肌の色的に、グリニーダスからの流民のようだった。彼らは野盗や盗賊として跋扈しているが、魔力のある女性には暴力はふるわない。彼らは魔力の無い女性には酷いことをする場合があるが、魔力がある女性は大切にする。メインの三人のうち、一人はグリニーダスの民の肌色だった。もう一人と、主犯の髭づらは、わからない。グリニーダスの民は、あまり髭もじゃにはならないはずだが、なにごとにも例外はある。
場所と賊の人数を確認した以上、長居は無用だ。子供一人で、複数の極悪人に立ち向かえるはずもないし、陽が上ればサシャ自身も見つかって捕まるか殺されるかもしれない。傷が痛むのをこらえて、サシャは音をたてないように細心の注意をはらいながら、洞穴からゆっくりと離れていった。
髭づらの男がそれを持っているなんて思わなかった、という。でも、シエストレムの鎖というものについての知識はあるのだろうかと思う。
「魔力がある女性を繋ぐと、魔力を借りて使えるって聞いたことがあるけど、高価なものだから、あんな奴らが手に入れられるなんて思わなかった。どうやって手に入れたのかしら」
奈々実も自分が繋がれている身でありながら、シエストレムの鎖についてすべて詳しくはわからない。飼い主、と言っていたのがセヴランのことで、セヴランを殺さなければ奈々実の魔力を借りて使うことはできない、と、そこまでは、髭づらの男は知っているかのような口ぶりだった。でも、オリジナルとイネスが作った『改良版』では、いくつか違う点があるはずだ。そして、同じなのは愛さなければならないこと、のはずだ。
「シエストレムの鎖で女性の・・・、わたしの魔力を使いたい場合には、わたしを、その、愛さなければいけないって、イネス様は言っていたんですけど、あの男はそれを理解しているんですかね・・・?」
それよりも以前に、愛するというのがどういうことなのか、あの下劣な男達は理解しているのだろうかと思う。
「・・・愛する・・・?」
まるで未知の単語を聞いたかのように、グレースは不思議そうな顔で奈々実を見た。
「そう聞きました。それと、わたしまだ、成人してないです。未成年です。未成年に性行為をしたら、その男の人は、その、・・・アソコを切らなきゃいけないとか、自殺しなきゃいけないって、セヴラン様が言ってました。モニークさんは、生涯、他の女性とは性行為できなくなる、って言ってました。だから、セヴラン様は、わたしを繋留はしたけど、その・・・、そういうことはまだ、してない、です。あの髭もじゃの男は、ただ単純にセヴラン様を殺してわたしをレイプすれば、それだけでわたしの魔力が使えるって、思っているんでしょうか・・・?」
グレースは呆気にとられているように見えた。
「愛する・・・? って、ナナミを? 生涯、他の女性とは性行為ができなくなる? 本当に?」
「・・・グレースさん?」
グレースは状況が把握できないらしい。なにをそんな茫然としているのかと、奈々実はグレースを怪訝な面持ちで見た。
洞穴の入り口は大きな岩の影になっていて、意外と見つけにくい。しかし、サシャには簡単に見つけることができた。
「子供のほうがかくれんぼは得意だっつーの」
隠れるほうも鬼になって友達をみつけるのも、サシャは得意だった。今のように怪我をしていなければ、もっと早くみつけられたのにと思う。
賊は、中にいた三人の他に下っ端が複数、あっちこっちに距離をおいて見張りに立っていた。肌の色的に、グリニーダスからの流民のようだった。彼らは野盗や盗賊として跋扈しているが、魔力のある女性には暴力はふるわない。彼らは魔力の無い女性には酷いことをする場合があるが、魔力がある女性は大切にする。メインの三人のうち、一人はグリニーダスの民の肌色だった。もう一人と、主犯の髭づらは、わからない。グリニーダスの民は、あまり髭もじゃにはならないはずだが、なにごとにも例外はある。
場所と賊の人数を確認した以上、長居は無用だ。子供一人で、複数の極悪人に立ち向かえるはずもないし、陽が上ればサシャ自身も見つかって捕まるか殺されるかもしれない。傷が痛むのをこらえて、サシャは音をたてないように細心の注意をはらいながら、洞穴からゆっくりと離れていった。
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