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第百七十六話
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間違いない。あれは、シエストレムの鎖だ。イネスが作ってセヴランが奈々実につけた、『改良版』ではない。オリジナルの、シエストレムのアドルフ王が作らせた物と同じ、重くて、怖い鎖だ。
「もうすぐこの仔ブタの飼い主が血相を変えて捜しに来やがるぜ。へこへこ腰振ってるヒマは無えんだよ。さっさと迎え撃つ準備をしやがれ」
「ああん? ナニサマのつもりだお前。ひっさらうのに成功したら、この女を好きにしていいって言ったじゃねえか」
「のんきなヤツだな。この仔ブタの飼い主に殺されてえのか?」
肉のたるんだ中年男はグレースの中に欲望を放出して満足したが、年配の男は、そこまでにはいたらなかったらしい。仕方なさそうにグレースを凌辱することをやめ、その身体を物のようにかたわらに突き飛ばした。
「仕方ねえな。飼い主を殺したら、たっぷり楽しませてもらうぜ」
「はん、もう勃たねえくせに、意地きたねえエロジジイだな」
乱雑に衣服を身につけて、二人が出て行く。と、髭づらの男はグレースに向かって言った。
「仔ブタとお前自身の傷の手当をしろ。薬や包帯はそこにある」
女性ならば、奈々実に触ってもビリビリはしないはずだから、ということらしい。
髭づらの男が二人を追って出て行くと、グレースはつらそうに身体を起こした。凌辱されていた姿を奈々実に見られたこともつらいだろうし、見ちゃ悪いかと思うけれど、今さら目をつぶったりもできなくて、奈々実はそれこそ今さらだが、ここがどんな場所なのかと確認しようと、身支度を整えているグレースから目を逸らしてあたりを見回した。洞穴のようだが、結構広くて、外の風景が見えないということは、かなり奥行きのある洞穴、ということか。ちょろちょろと水音がするので、身体が痛むのをこらえて体勢を変えると、岩肌を細くつたう湧き水が見えた。水が確保できる場所ということは、この襲撃は周到に準備されていたと思われる。地面が平らに均されているし、男達の物であろう寝袋や荷物類が散らばっている。もうずいぶん前から使われているということか。ひんやりと冷たい風が、動けない奈々実を嘲笑うように吹き抜けていく。
グレースが側に来た。泣き腫らした目は死んだ魚のように虚ろで、表情が無かった。おぼつかない手でなんとか猿轡をはずしてくれる。
「わ、わたしよりも、ご自身のお手当を、先にしてください」
奈々実が言うと、グレースは胡乱な顔で、奈々実を見た。
「待ってますから・・・、わたしはそんなに痛いところはないですから・・・、グレースさん、顔や身体、洗いたいでしょう? あんな酷いことされて・・・」
奈々実の頬をぼろぼろと涙が流れる。
「グレースさんのキレイな身体にあんな・・・、痛かったでしょ? 早く洗って、手当してください、早く・・・」
奈々実の身体だって、痣や傷だらけである。決して『痛くない』はずなんかない。それなのに自分のことよりグレースの身体を思って泣きながら言う奈々実を、グレースは不思議そうに見る。それでも、言われてのろのろと湧き水に近寄り、顔を洗ったり口を漱いだり、手巾を濡らして身体を清めた。
「もうすぐこの仔ブタの飼い主が血相を変えて捜しに来やがるぜ。へこへこ腰振ってるヒマは無えんだよ。さっさと迎え撃つ準備をしやがれ」
「ああん? ナニサマのつもりだお前。ひっさらうのに成功したら、この女を好きにしていいって言ったじゃねえか」
「のんきなヤツだな。この仔ブタの飼い主に殺されてえのか?」
肉のたるんだ中年男はグレースの中に欲望を放出して満足したが、年配の男は、そこまでにはいたらなかったらしい。仕方なさそうにグレースを凌辱することをやめ、その身体を物のようにかたわらに突き飛ばした。
「仕方ねえな。飼い主を殺したら、たっぷり楽しませてもらうぜ」
「はん、もう勃たねえくせに、意地きたねえエロジジイだな」
乱雑に衣服を身につけて、二人が出て行く。と、髭づらの男はグレースに向かって言った。
「仔ブタとお前自身の傷の手当をしろ。薬や包帯はそこにある」
女性ならば、奈々実に触ってもビリビリはしないはずだから、ということらしい。
髭づらの男が二人を追って出て行くと、グレースはつらそうに身体を起こした。凌辱されていた姿を奈々実に見られたこともつらいだろうし、見ちゃ悪いかと思うけれど、今さら目をつぶったりもできなくて、奈々実はそれこそ今さらだが、ここがどんな場所なのかと確認しようと、身支度を整えているグレースから目を逸らしてあたりを見回した。洞穴のようだが、結構広くて、外の風景が見えないということは、かなり奥行きのある洞穴、ということか。ちょろちょろと水音がするので、身体が痛むのをこらえて体勢を変えると、岩肌を細くつたう湧き水が見えた。水が確保できる場所ということは、この襲撃は周到に準備されていたと思われる。地面が平らに均されているし、男達の物であろう寝袋や荷物類が散らばっている。もうずいぶん前から使われているということか。ひんやりと冷たい風が、動けない奈々実を嘲笑うように吹き抜けていく。
グレースが側に来た。泣き腫らした目は死んだ魚のように虚ろで、表情が無かった。おぼつかない手でなんとか猿轡をはずしてくれる。
「わ、わたしよりも、ご自身のお手当を、先にしてください」
奈々実が言うと、グレースは胡乱な顔で、奈々実を見た。
「待ってますから・・・、わたしはそんなに痛いところはないですから・・・、グレースさん、顔や身体、洗いたいでしょう? あんな酷いことされて・・・」
奈々実の頬をぼろぼろと涙が流れる。
「グレースさんのキレイな身体にあんな・・・、痛かったでしょ? 早く洗って、手当してください、早く・・・」
奈々実の身体だって、痣や傷だらけである。決して『痛くない』はずなんかない。それなのに自分のことよりグレースの身体を思って泣きながら言う奈々実を、グレースは不思議そうに見る。それでも、言われてのろのろと湧き水に近寄り、顔を洗ったり口を漱いだり、手巾を濡らして身体を清めた。
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