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第2部
それぞれの悩み①
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授業前、実験の準備をするために後輩と一緒に研究室に来た。
「手順はノートにメモしておくといいよ。
この装置は起動に時間がかかるから、実験する2時間前にはこうしてスイッチを入れて、あとこれとこれもスイッチを入れてね。
これとこれは順番を間違えると装置が壊れるから気をつけて。あとは… 」
「なんか面倒くさいですね。これ2人でやる必要あります?」
つまらなそうにあくびをする後輩に、思わず心の中で苦笑する。
2人でやる必要はないが、意味はある。彼に手順を覚えてもらって実験がある日に交代で起動しにくれば、どちらかは早く来なくて済むのだから。
去年先輩に丁寧に教えてもらったので俺も彼にはちゃんと教えたい。
「一人でできるようになったら交代で来ようね。それまでは一緒にやろう。
そしたらここのつまみをメーターを確認しながらゆっくり回して…
…あっ、これからレーザーを点けるから時計を外して。あと指輪も。」
彼がノートをとる速度に合わせていつもよりゆっくりと操作を説明していく。
しかし彼は俺の言葉を聞いて面白くなさそうに顔をしかめた。
「ふーん。ただ順番覚えるだけでしょ?すぐできますって。次から交代できましょ。…ってかなんで外さなきゃいけないんですか?」
「予想してなかった方向に光が反射して目に入ったら危ないからだよ。」
「…ふーん。」
明らかに嫌そうに俺を見ながら、彼は腕時計と指輪をポケットに入れる。
この態度から分かるように、俺は彼に好かれていない。
たまにSubを軽視するDomがいるが、彼はそれだ。Dom至上主義。SubはDomの奴隷だと思っている。
多分、俺に指図されることが気にくわないのだ。
「そしたらここのスイッチを入れるよ。これで終わり。
何か聞きたいこと、あるかな?」
「ないない。それより先輩、ちょっとこっち見てくれません?」
「…?」
なんだろう?
振り向くと、彼にじっと瞳を覗かれる。
「あんたglareが効かないとか本当にSubです?もしかして欠陥品ですか?」
数秒俺の目を見た後、彼は大きなため息とともに俺に対してそう言った。
…そっか、そうだよね。
「…あはは、実は効きにくいんだ。よく言われる。」
なんとか作り笑いでごまかすと、“そりゃ可愛くないですね”、なんてあざけるように笑われた。
由良さんや東弥と接するようになってからはあまり気にしないできたけれど、面と向かって言われれば傷をえぐられたような痛みが走る。
「じゃーお疲れ様です。俺帰っていいですか?」
「うん。でも午後から教授と一緒に光学系をいじるから、できたら来てほしい。」
「…はーい。」
変わらずだるそうに返事をする彼を見送ってから、荷物と一緒に講義のある教室に移動する。
最近由良さんと会っていない。というより彼は5日前から長期出張に行っている。なんでも新人研修で教育係を任されたとか。
そして後輩との関係も研究も、まだずっとうまく行っていない。
授業は忙しいし、もうすぐテスト期間だし。この頃周りもみんなこなしているであろうことができていない無力な自分にイライラする。
前に由良さんに話を聞いてもらって楽になったはずなのに、なんだかどんどん、また悪い方向に考えが向かっている気がする。
「おはよう、幹斗。」
講義室では既に入っていた東弥が明るく挨拶をしてくれた。
相変わらずの爽やかぶりである。
「手順はノートにメモしておくといいよ。
この装置は起動に時間がかかるから、実験する2時間前にはこうしてスイッチを入れて、あとこれとこれもスイッチを入れてね。
これとこれは順番を間違えると装置が壊れるから気をつけて。あとは… 」
「なんか面倒くさいですね。これ2人でやる必要あります?」
つまらなそうにあくびをする後輩に、思わず心の中で苦笑する。
2人でやる必要はないが、意味はある。彼に手順を覚えてもらって実験がある日に交代で起動しにくれば、どちらかは早く来なくて済むのだから。
去年先輩に丁寧に教えてもらったので俺も彼にはちゃんと教えたい。
「一人でできるようになったら交代で来ようね。それまでは一緒にやろう。
そしたらここのつまみをメーターを確認しながらゆっくり回して…
…あっ、これからレーザーを点けるから時計を外して。あと指輪も。」
彼がノートをとる速度に合わせていつもよりゆっくりと操作を説明していく。
しかし彼は俺の言葉を聞いて面白くなさそうに顔をしかめた。
「ふーん。ただ順番覚えるだけでしょ?すぐできますって。次から交代できましょ。…ってかなんで外さなきゃいけないんですか?」
「予想してなかった方向に光が反射して目に入ったら危ないからだよ。」
「…ふーん。」
明らかに嫌そうに俺を見ながら、彼は腕時計と指輪をポケットに入れる。
この態度から分かるように、俺は彼に好かれていない。
たまにSubを軽視するDomがいるが、彼はそれだ。Dom至上主義。SubはDomの奴隷だと思っている。
多分、俺に指図されることが気にくわないのだ。
「そしたらここのスイッチを入れるよ。これで終わり。
何か聞きたいこと、あるかな?」
「ないない。それより先輩、ちょっとこっち見てくれません?」
「…?」
なんだろう?
振り向くと、彼にじっと瞳を覗かれる。
「あんたglareが効かないとか本当にSubです?もしかして欠陥品ですか?」
数秒俺の目を見た後、彼は大きなため息とともに俺に対してそう言った。
…そっか、そうだよね。
「…あはは、実は効きにくいんだ。よく言われる。」
なんとか作り笑いでごまかすと、“そりゃ可愛くないですね”、なんてあざけるように笑われた。
由良さんや東弥と接するようになってからはあまり気にしないできたけれど、面と向かって言われれば傷をえぐられたような痛みが走る。
「じゃーお疲れ様です。俺帰っていいですか?」
「うん。でも午後から教授と一緒に光学系をいじるから、できたら来てほしい。」
「…はーい。」
変わらずだるそうに返事をする彼を見送ってから、荷物と一緒に講義のある教室に移動する。
最近由良さんと会っていない。というより彼は5日前から長期出張に行っている。なんでも新人研修で教育係を任されたとか。
そして後輩との関係も研究も、まだずっとうまく行っていない。
授業は忙しいし、もうすぐテスト期間だし。この頃周りもみんなこなしているであろうことができていない無力な自分にイライラする。
前に由良さんに話を聞いてもらって楽になったはずなのに、なんだかどんどん、また悪い方向に考えが向かっている気がする。
「おはよう、幹斗。」
講義室では既に入っていた東弥が明るく挨拶をしてくれた。
相変わらずの爽やかぶりである。
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