元姫だった私、魔法適正値10000オーバーの冒険者〜勘当された姫は、冒険者の夢を叶え旅をする〜

永遠ノ宮

文字の大きさ
12 / 42
一章〜ギルド設立を目指して〜

十一話 冒険者適正⑥

しおりを挟む


  
 次の日ーー。
 日暮れ前になり、テントから私達は移動した。
 試験監視官の元へ向かうと、そこには既に他のチームが集まり私達『15』番が最後だった。

「遅いじゃないか君達」

「あっれ。今日は昨日の奴と違うんな」

「試験内容毎に違う。今日は、チーム対抗で崖の上のフラッグを取ってもらう、フラッグ争奪戦だ。だから私だ」

「いや、しんねーし」

 昼寝していたシュートは、あくびしながら鼻をほじり、自分から振っておいて全く聞き耳を立てていない。
 自由気まま、悪く言えば自由奔放ーー個性派揃いの私達は、遅刻よろしくの迷惑チーム。そんな空気が作られている。
 でもそんなのお構いなし、むしろ気にも止めない。

 ネネが唯一の常識人であることが、大遅刻を免れることに繋がったが、それでも遅刻しているのでそのうち失格処分を受けるがオチな気がする。
 それはさておき、私達が集まったところで監視官は咳払いして、今日の試験内容に入る。

「ええ、じゃあ全チーム揃ったところで今日の試験内容に入る」

「はい、先生!」

「……黙っていることはできないか君達。なんだ」

「何で夜ばっかなんですか、そこから説明してください」

 私が手を挙げ、質問すると監視官はため息を大きく吐いた。

「夜は危険がつきものとなる。だからこそチームワークが試される、それだけだ」

「納得です、先生! 話を止めてしまい、申し訳ありませんでしたっ!」

「うむ。ーーああ、そうだ。昨夜、5番チームがズタボロにされ、試験続行が不可能となった。何処のチームとやり合ったかーーやり合ったチームは手を挙げるように」

 昨夜、私達は『5』とやり合っている。
 しかし、あれはやり合ったというのではなく、追っ払ったが正しい。
 それでも、やり合ったと言われるのなら手を挙げるしかなかった。

 手を挙げると、周りから色々な声が飛び交い出す。
 ーーマジか、あの荒くれチームを?
 ーーねえ、あの赤髪って……。
 ーー俺昨日たまたま見たけど、あのリーダーの小娘……。
 ーーもしかして、強いの?

 私達に全視線が向けられる。
 ネネが怯えきってしまい、私の背中に隠れフードを深々と被ってしまった。
 私達を勝手に注目するのは勝手だ。しかしそれで、こうして怯える子がいることに気づいて欲しい。
 そして、『5』だか5番だか、あのチームは確かに荒くれチームだったがそこら辺でうじゃうじゃ生きている小型モンスター並でしかないーーそのことにも気づくべきだ。

「……君達がやったのか」

「殺してはいないから、ノー問題でしょ?」

「ルール上、そうだな。いや、あいつら何処とやり合ったか聞くと黙ったのでな、うん、把握した。で、今日の試験内容について話を戻すーー今日は、フラッグ争奪戦。チームワークが昨日以上に試されることとなる」

 話が一気に、無理矢理に戻された。
 私達は手を下ろし、話が長くなりそうだとその場に勝手に座り込む。
 監視官は私達が座り込んだので、困ったと頭を抱えため息を吐き、

「じゃあ簡潔に纏めよう」

「ありがとうございまーす」

「君達なあ……! んっんんんっ! えー、フラッグは崖上に刺してあり、赤色だ。フラッグを手にしたら終わりではなく、ここまで持ち帰ってくること。いつ何時でも奪い合うことを許可とし、チームワークをフルに発揮して頑張ってくれ。何か質問は?」

 ーーはい、ですよ。

 私の傍らから、ネネが手を挙げた。

「あのう、もしそれで、フラッグを手にする以外の他のチーム全てが試験続行不可能となったら……どうなるのですよ?」

「そんなことが現実に起こるわけないだろ? まあ、そうなった場合はその時点で試験は強制終了となるだけだ」

「じゃあ手加減いらないねー」

「だな。うーし、早速やろうぜ」

「そうね。それなら遠慮はいらないわね」

「き、君達……」

 監視官は肩を落とす。
 やる気満々ーーみんなそれぞれ、使う身体の節々をほぐしだす。
 周りは、私達は異常だと空気で察する。
 フラッグ争奪戦ーーつまり、喧嘩よろしくの取り合い。
 それを好むかのように、それが楽勝であるかのように、私達は四人が四人共、笑っている。ネネだけは苦笑だけど。

「あまり調子に乗って怪我するなよ。まだ最終の明日があるんだ」

「心配御無用」

「明日は多分ないわあ」

「あーでも、そうしたら明日暇になっちゃうから、手加減して明日も残さないとーーなんて、甘い事誰が言うかっての!」

「い、行きますですよ~!」

 合図がされていないのに、私達は勝手にここから見える崖に向かって私のランタン一つで向かいだす。
 
「おーい! まだ合図……はあ。勝手な野郎達だ、では始め……」

 後ろから元気の無い監視官の声が聞こえてきた。
 多分、自由奔放過ぎる私達に呆れきったか疲れたかのどちらかだ。
 監視官が試験開始としたので、私達の後方からは当然足音が響き近づいてくる。

「じゃあ俺達も走るかー」

「仕方ないわね」

「良いじゃない、たまには。さてーー飛ばすわよー!」

「は、はいなのですよー!」

 全員、クラウチングスタートで構えた。
 後方から走ってくる大勢の冒険者が私達を避けて走り抜けて行くーー。
 が、それも数秒のことーー。

「魔力を足に集中ーー」

「飛ばすわよ? 崖についたら、一気に駆け上がる」

「フラッグ取ったら後は行く手を阻む者全てタコ殴り」

「明日はないのですよ」

 足に魔力が集中していき、全員の脹脛と太腿から赤色のオーラが発生する。
 リーダーの私が先頭を走ることは、当然だった。
 私が走り出すのを合図に、三人も着いてスタートを切った。

 一番後ろから、一瞬で風の如く人混みを走り抜け、私達は最前線へと抜け出した。
 一番前に出てからも、そのまま失速せず速度を持続して崖に突っ込んでいく。
 崖は地面と垂直にできており、大きさが不揃いの岩でできている。

 勢いのみで登る必要がある。
 ロッククライミングで呑気にフラッグを目指していたら、何処かで小岩などが崩れ登り直しがオチだ。
 今や人間ロケットとなった私達は、他のチームに差を大きくつけて試験開始からものの少しで崖の前に到着した。

 そして、ここからは男のシュートが頑張る番となった。
 シュートが先頭に入れ替わり、崖を登っていく。
 私達は速度を落とし、後ろから着いていく。

「ーーあ、やべっ」

 私の前に居るシュートが、小さく声を漏らした。
 
「悪い、足滑らかした。ごめんちゃい?」

「ええええ!?」

 シュートが足を滑らかし、私に向かって背中から落ちてくる。
 咄嗟のことで驚いたが、私はシュートを抱きしめ、体勢を立て直して着地に入る。

 ネネとアリアータは言うまでもなく流石ーー。

 二人はしっかりと私の動きに反応して、崖を一蹴りし反転して正面から着地に入る。
 先に着地した二人が、私とシュートを受け止めてくれる。
 
「わ、悪い……足、攣った……」

「馬鹿! あれで死んだらどうするつもりよ、私達泣くわよっ!?」

「アハハ……死なねーよ流石に……」

 シュートは空見上げながら、笑う。
 その間に、ぞろぞろと追い着いてきた他のチームが崖を一斉に登りだす。
 足が遅い冒険者達はまだまだ崖に向かって走ってきているがーーやっと追い着いてきてくれた。そう思った。

「今だ! あいつらが動けない間にーー」

「フラッグを取れーー」

「我らが先にフラッグをーー」

 各チームのリーダー達が、崖を登りながら士気を上げようと声を貼る。
 しかしーー彼ら彼女らは、気づく。
 崖の下から、一匹の猫が崖を軽快にーーそれは舞うように登ってくることを。

「ーー茶番は終わりよっ! 明日は無いってーー言ったじゃない?」

「行くですよおおおお! ニャアアアア!!」

 ネネの手足は、猫のように変化しており肉球もある。だから崖を登っても、衝撃が吸収され、それを猫族特有の変化魔法を使い筋肉を強化していく。
 登っていくにつれ、速度が上がっていく。

 そして、とうとうネネは崖を仲良く横一列に登る他のチームのリーダー達と同じ高さまで登った。
 
「なんだあいつーー……まさか、猫族!?」

「ニャッハハハハッ! そうなのですよ、猫族なのですよ! ニャッハハハハッ! ニャア……ごめんなさいですよ、手加減できないーーですよっ!?」

 ネネはピョンと、崖の頂上目掛けて真っ縦にジャンプする。
 
「やってやりなさーいネネ!」

 ここにきて、明かすとしよう。
 シュートが崖から落ちるアクシデントは最初から仕組んでいたもので、他のチームの冒険者を崖に登らせるための芝居だった。

 そもそも、二日目の試験内容がフラッグ争奪戦であることは今日の今朝には分かっていた。
 目の良いアリアータが、凝らして見てくれた際、既にフラッグが刺さっていたのだ。
 何故崖を見たのかーーそれについては触れて欲しくない。
 まあ、ロマンチックな試験後の思い出浸りの場所に、この崖を使ってみようかなーーとかなんとか。それだけのこと。

「ーーと、リーダーから言われてはやるしかないですよ。ニャッハハハハッ! ニャンドレイン……!」

 ネネは崖の中腹より少し上の辺りで、爪を岩に食い込ませて地面に向いて止まった。
 岩に爪を食い込ませているとはいえ、重力に逆らってはいないだろうか?

「ドレインーー? ……やばい! 全員引け!」

 ドレインと聞き、一人の女リーダーが男らしい低い声で叫んだ。
 叫んだには叫んだーーが、その時には遅かった。
 ネネのニャンドレインは、放たれる微粒の電磁波が人に触れ、すると皮膚から精気を吸い取る。
 エナジードレインの猫バージョン。

 伝説上の怪物である、吸血鬼が血を飲む際に使うのがエナジードレインとも言われている。
 ネネのニャンドレインは、崖を登る者に次々触れていき精気を吸い取っていく。
 精気を吸い取られた冒険者達は、岩のように崖から落ちていき、下の冒険者達に受け止められる。

「ニャッハハハハッ! フラッグゲットなのですよー」

 いつの間にか目を黄金色に輝かせ、尻尾も生やしたネネは猫のように頬を手ですりすりしながら、フラッグを上着の中に旗の部分だけ見せて仕舞っていた。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ

よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。   剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。  しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。   それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。 「期待外れだ」 「国の恥晒しめ」   掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。  だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。 『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』  彼だけが気づいた真実。  それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。  これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。 【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...