王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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サラマンダー・パシュート編

お姫様のサラマンダー狩り

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「そうか、テメェ、そんなに死にてぇのか、なら、お望み通りに引導を渡してやろう!」
男はそう叫ぶと、背後や自身の体の周囲に玉を作り出し、その玉を両手で構えていた長銃に入れていく。
エネルギー波で一杯になった長銃を私に向けて、彼は笑顔で引き金を引く。
だが、私は怯まない。代わりに男に向かって自身の手に持っている拳銃の引き金を引く。
乾いた音が部屋の中に響き渡っていく。私は男の方を見てみたが、やはり弾は届いていなかったらしい。
男は得意そうな顔を浮かべて私を狙う。その様は無力な兎を狙う狼のようだ。
私は懸命にその場を駆け、狼から逃れるべく体を屈めてその場から逃げていく。
男はそれを狙って舌舐めずりをし、何度も私が逃げる度に砲撃を行なっていく。
見た目は単なる銃に過ぎないのにその実は全く持って未知数。
加えて、あの男は先程、発狂した時に見知らぬ土地の名前を、いや見知らぬ土地の名前ではない。
私はトーキョーなる街を聞いた事があった。確か、ピーターがそんな土地の名前を口に出していたような気がする。
そうすれば、あの男はピーターと同じ種類の人間になってしまう。
要するに、私たちの相手にした事のない人種の人間なのだ。
言われてみれば宇宙人に近い存在だと言えるのかもしれない。
その未知の世界の記憶を持った男が未知の武器を構えて立っていたのだ。
この世界には無い知識を持つ男に魔法で作り出された未知の兵器。
相手にするには部が悪いだろう。中には恐怖を感じて逃げてしまう人間もいるかも知れない。
それでも私は負けられないのだ。この男を倒し、サラマンダーを壊滅させてこの国人々を救うまでは。
私は声を張り上げて、自分の左手の掌を広げて相手が魔法を放つ瞬間に魔法を吸収していく。
だが、私の前に登場したのは先程と同様の玉。今度は桃色であったが何の違いがあるというのだろうか。
私の失望と共に例のエリートの男がけたたましい声を上げて笑う。
「フッハッハッ、惨めだな!クソ女!ぼくの魔法を吸い取ったのはいいけれども、吸収したのは単なる一個の玉ッ!ここから出るのはこの銃の部品となる小型のロボットだけだよぉ~この間抜けがッ!」
『ろぼっと』なる単語が何なのかは分からないが、きっと一部品にしか過ぎない物の事なのだろう。
大きく声を張り上げて、悔しさの雄叫びを叫ぼうとした時だ。桃色の玉が私の銃の中へと入り込む。
そして、私の持っている回転式の拳銃が先程の玉と同じ桃色に輝いていく。
私は思わず息を呑む。もしや、あの男の魔法を吸収した際に銃組み立ての召喚の過程を吹っ飛ばして、ここに来たのではないのか。
だが、過程を省略するなんて今までにあったのだろうか。これまではどんな魔法でも攻撃に至るまでの過程があった場合にはその過程まで吸収した筈では無かったか。
それが一番省略された?私は首を傾げたい気分であったのだが、何より疑問に思っているのはあの男であったに違いない。あの男は首を傾げて、
「あり得ない、ぼくの魔法の過程を省略するなんて!このエネルギーの波長を持つ玉を銃はこの玉から出てきた小型のロボットが合体して出来たこいつだけなんだッ!どうして、普通の銃でしか無いのに、貴様にそんな真似ができる!?」
「さぁ、何でかしら?分からないけれど、出来たのよ。でも、もしかしたらーー」
私は一度言いかけた『魔法の進化』という言葉を飲み込め。そもそも魔法というのは生き物ではないのだ。成長などする筈が無いではないか。
代わりに、私はふてぶてしい顔で笑って、
「何でもないわ。奇跡が起きたとでも言っておきましょうか」
「奇跡?一体何を言ってやがる。テメェら負け犬どもに奇跡なんて起こるはずがねぇだろ、そんなものは負け犬どもの遠吠えに過ぎないんだッ!」
男は長銃の銃口を私に向ける。同時に周囲から多くの玉が長銃の中に入っている事に気が付く。
男は先程、私の言った『奇跡が起きた』という言葉を否定するために、長銃の引き金を絞り、エネルギー波を放っていく。
私がそれに合わせて玉の宿る拳銃の引き金を引いたたために、虹色のエネルギー波と桃色のエネルギー波が互いにぶつかり合う。
最初こそ虹色のエネルギー波が押していたのだが、徐々にピンク色のエネルギー波が押し戻していく。
私はこの流れを逃さないために両手に握っていた拳銃を前方へと押していく。
愛銃のフレームがこのエネルギーに耐え切れなかったのか、音を立てて割れ始めていく。
だが、構う事なく私は前へと拳銃を押し出す。
私の手により、前方に押し出された拳銃はとうとう圧力に耐え切れずに破裂してしまう。
だが、拳銃が壊れた目的は甲斐はあったらしい。
桃色のエネルギー波は虹色のエネルギー波動を押し出し、男を飲み込む。
桃色のエネルギーに飲み込まれた男は大きな悲鳴を上げて地面の上へと放り出されてしまう。
全身を火に焼かれたような火傷に見舞われていたのだが、どうも彼は死んでいなかったらしい。
瀕死の体で床を這いながら、出口の方向へと向かって行く。
男は瓦礫まみれの出入り口周辺に来ると油断したのか、お化けのような顔をさらに歪めさせて、
「ちくしょう……死んでたまるもんかよ。オレさえ生きていれば組織なんてまた立て直せる……だからオレは死なないようにーー」
「死なないようにする?それはあまりにも虫が良すぎるんじゃあないかしら?」
私は這い出そうとする男の手の甲を踏みながら言う。
男は手の痛みを訴えるものの私はその場からは動こうとしない。
冷ややかな視線で、あの男を見下ろすような調子で、
「このままあなたが大人しくしているんだったら、このまま病院に連れて行ってあげるわ。でも、暴れるんらだったら、ここまでね……」
私は足を男の手の甲から離し、戦いの間、この部屋で息を潜めていた仲間の元へと向かおうとしたが、その言葉を聞いて焦ったのか、男は口をパクパクとさせて私に縋り付いてくる。
「お願いだッ!頼むッ!病院に連れて行ってくれ!何でもするからッ!」
私は溜息を吐いて、男を助けようと手を差し伸べようとしたが、男は最後の力を振り絞って私を羽交い締めにしていく。
そして、得意な顔で大きな声を上げて笑いながら、
「どうだッ!大人しくしろよッ!テメェらが妙な真似をすればこの女の首を絞め落とすからなッ!」
男の言葉を通りに私の首が男の両腕によって締められていく。
やはり、情けを掛けたのが間違いだったようだ。私は自分の甘さを悔いた。
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