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デストロイ・メトロポリス編

風魔一族が何故にここに現れたのか

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小太郎の刀が離されるのと同時に、マリヤが額を抑えてその場に倒れ込む。
状況が状況であるだけに孝太郎は慌てて駆け寄る事が不可能であったが、その代わりに大きな声で彼女の意識が保つ様に仕向ける。
「ご、ごめんなさい……私、剣を交わした際にあの人の前世が見えてーー」
「前世?どんな前世だ!?」
マリヤはロシア正教の司教であるが、同時に彼女は見事な霊力に長けており、それが特徴となって顕れているのが、彼女の前世を見る力なのだろう。
実際、孝太郎が目にしただけでも、彼女は多くの犯罪者を逮捕あるいは彼女自身の手で裁く前に前世を見抜いて、それを相手に語ってから必ず罰を下している。
その際に彼女はロシア正教会の司教に相応しい堂々とした態度で決して揺らぐ事のない決意を持って語っているのだが、今回に至っては小太郎の姿を見て酷く動揺しているではないか。
孝太郎は頭を巡らせてその理由を思案したが、いまいち思い付かない。
と、そんな事を考えていて気を取られたためか、目の前に富永が近付いて来ている事に気が付かなかったらしい。
富永は孝太郎の前に立つと同時に、孝太郎の頬を強く叩いて彼を転ばせていく。
そして、倒れた孝太郎の腹をその足で弄り回しながら得意そうな顔を浮かべて告げる。
「ハッハッ、これであの時とは形勢逆転だな?おれはこの日をずっと待っていたぜ!お前に復讐できるその時をなッ!」
富永はより一層強い力で孝太郎の腹を踏む。
孝太郎はその度に悶絶してその場で転がっていく。
だが、弱音は決して吐かない。あくまでも強い瞳で富永を睨み続けていた。
「……ッ、チクショウ!どうして、テメェはおれに服従しない!」
「……富永、お前はそんな奴だよな?常に自分より下の相手を探してお山の大将……威張り散らして手下を殺せば、新たな手下をその毒牙にかける。おれはてめーの様な奴が死刑にならねーのが不思議でたまらねぇよ」
それを聞いた途端に富永の目が大きく見開いていく。同時に頬の色がまだら色に染まっていき、彼の孝太郎を蹴る力をより一層が強まっていく。
「テメェ!言わせておけば!」
富永は何度も何度も蹴りを入れるが、その度に孝太郎は皮肉めいた微笑を浮かべるばかり。
富永からすればもっとも詰まらない部類に入る。
しまいには孝太郎を蹴るのにも飽きたのか、両手に持っていたビームライフルの銃口を孝太郎に向けて言い放つ。
「テメェは後でダズの奴に引き渡す予定であったが、もうダズの奴も死んだ以上、生かしておく義務もねぇや。死ねよ」
「死ぬと言われて死ぬ馬鹿がいるか」
孝太郎はそういうと富永が手に持っていたビームライフルの銃口を左手で強く掴むと、その銃口を無理矢理に上空に向けさせて彼の狙いを混乱させていく。
富永がビームライフルを取り返そうと躍起になっている隙を利用して、孝太郎は彼から無理矢理にビームライフルを奪い取り、彼のみぞおちに強い蹴りを喰らわせる。
富永は悶絶して地面の上に倒れ噛込む。
孝太郎は銃口を構えると同時に富永に向かって告げた。
「お前の負けだな?大人しく降伏するのなら、命だけは助けてやるぞ」
「て、テメェ……」
再度逆転された状況に富永は歯軋りを行う。このままでは再び逮捕されかねない。そこで、彼は例の魔法を孝太郎の仲間に使う事を決めた。
いや、仲間では面白みに欠ける。今の状況ならば、孝太郎が守ろうとしているこの船の看守どもを洗脳した方が面白いに違いない。
富永は背後に控えている看守たちの方を向くと、自身の両目を赤い染め上げて睨む。
富永の魔法『赤い目の絶対的な支配者レッド・ブリタニアン』の効力は絶対。
誰だろうと破る事はできないだろう。富永は絶対的な自信を持ちながら、口元に微かな笑みを浮かべる。
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