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番外編

商人の例の贈り物 ※

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 エミとディルが正式に婚約し、ガシュバイフェンに戻ってしばらく経った、とある春先の夜のこと。

「え、え~~~、このベビードール、さすがにヤバいかなぁ……」

 エミは鏡の前で困惑した顔をしていた。

 それもそのはず、エミが身につけているのは、いつものミニスカートに改造したシスター服ではなく、かなり露出の多いランジェリーだった。ベビードールと呼ばれる類いの下着だ。
 バストの部分は純白のレースでできており、桃色の胸の頂が見えてしまっている。胸から下は切り替えでサテン生地になっており、尻をぎりぎり隠す丈だ。そして、なめらかな絹でできたショーツの恥部にはスリットが入っており、肝心な場所がまったく隠れていない。その上、サイドはリボンで結ばれているだけだ。なんとも心許ないつくりである。

「ああー、リボンとかレースとかは超かわいいし、色とかも好みなのに、ぜんっぜん隠したいところ隠れてないよぉ……」

 エミはあちこち引っ張ってなんとか局部を隠そうとしたが、今のところどの試みも失敗に終わっている。

 この下着は、以前外商にきた商人が、エミとディルに媚薬と一緒にプレゼントしたもの。この下着を見たディルが「けしからん!」とどこかに隠してしまっていたのを、数日前に部屋の掃除をしていたエミがクローゼットでたまたま発見してしまったのだ。

「う~ん、見つけたからとりま着てみたけど、見せるのはちょっと恥ずかしいよねえ」

 エミがぽつりと呟いたその時、廊下から聞き慣れた足音がした。湯浴みに行っていたディルが戻ってきたらしい。

「わわ、ディルが帰って来ちゃった! ヤバい、ヤバいよぉ!!」

 エミは反射的にベッドに投げてあったガウンを羽織る。それと同時に、濡れた銀髪をタオルで拭きながら、ディルがドアをあけて入ってきた。
 明らかに挙動不審な動きをするエミと、怪訝そうな顔をするディルの視線がぶつかる。

「……どうしたんだ、なんだかバタバタした音がしたが」
「なっ、ナンデモナイヨー」
「おい、見え透いた嘘をつくな! どうせろくでもないことを……、って、な、なんだそれは!? ガウンの下に何を着ている!?」

 ディルがあからさまに動揺しはじめたため、エミは一瞬不思議そうな顔をしたものの、自分の格好を見てハッとした顔になる。急いでいたためか、中途半端にしかガウンが羽織れておらず、胸元のランジェリーが丸見えになっていた。

「あっ、見えちゃってたかぁ!」
「どこからそんなものを拾ってきたんだ! 戻してきなさい!」
「拾ってきたわけじゃないもん! 商人さんからプレゼントに貰ったベビードールだよぉ! だって、クローゼットの奥に大事に置いてあったから、あたしに着てほしかったのかなって思って着たんだけど……」

 エミの声が尻すぼみに小さくなっていく。だんだん恥ずかしくなってきたらしい。

「……やっぱ自意識過剰だった?」

 消えいりそうな声で訊ねるエミに、ディルは顔を真っ赤にして勢いよく頭を振った。

「……お前の推測は正しい。そのけしからん下着を着てほしいという願望は確かにあった。しかし、清らかなお前にこのような格好をさせるなどという不埒な考えを抱いてはならぬと己を律し、ずっとクローゼットの奥に封印していたのだ。まさか見つけられてしまうとは、不覚だった」

 やたらと早口で喋りながらも、なんだかんだでディルはエミの胸元から見えているベビードールを凝視している。どうしても視線が外せないらしい。
 一瞬ぎこちない空気が流れた。

「え、えーっと、見とく?」

 エミがおずおずとガウンの前を開き、ベビードールを見せる。ディルは息をのみ、しばらくエミの頭の先からつま先まで眺めまわした。
 無遠慮に向けられる熱い視線に、エミは顔を赤らめる。

「ど、どうかなぁ……?」

 一瞬の沈黙のあと、ディルは目頭をおさえ、天を仰いだ。

「……目に毒すぎるが、あの商人には感謝せざるをえない」
「あっ、喜んでる~~~。よかったぁ♡ ――って、きゃっ」

 急にディルがエミをベッドに押し倒したため、エミは小さく悲鳴をあげる。ガウンはあっという間に剥ぎ取られてしまった。
 ベビードール姿のエミを、ディルは瞬きも忘れてじっと見入り、ぽつりと呟いた。

「可愛すぎる……」
「や~ん、見すぎだってぇ! 化粧もオフってるし、あんまり見ないでよぉ……」
「あいにく、魅力的な私の婚約者からしばらく目が離せそうにない」

 恥ずかしそうに目を背けたエミの頤を掴み、ディルは深いキスをする。エミは最初驚いたように眼を見開いたが、すぐにディルの肉厚な舌から一方的に与えられる快楽に眼をトロンとさせた。

「……ふ、……んっ」

 口腔内を蹂躙しながら、ディルは薄い布越しにエミの形の良い胸を揉みはじめる。快感に敏感に反応した胸の先がとがり、色づいた。

「……ぁ、……っ」

 ベビードールごしにピンと蕾をはじかれて、むずがゆい快感がエミを襲う。直に触ってもらえないじれったさとないまぜになって、エミは唇を離し、甘い吐息を漏らした。
 エミの華奢な肩口から頼りないベビードールの細いリボンが落ちようとしている。胸の頂はツンと薄い布地を押しあげ、存在を主張しているようで、なんとも蠱惑的だ。

「くっ、私としたことが、こんな俗っぽい服装に欲情してしまうとは……」

 否応なしに視界から入ってくる快感に目眩を覚えたディルは、ぐっと眉間を抑える。
 聖女エミに会うまで、ディルは情欲の類いの感情を他人に抱くことはなかった。媚薬や夜の営みに関する道具を目の色を変えて買いもとめる貴族たちを、ずっと冷ややかな眼で見ており、馬鹿らしいと軽蔑さえしていた。
 しかし、今はどうだ。

(……ああ、何度見ても可愛すぎる。このような淫乱そうな姿もなかなかにそそられるな)

 愛する人のいつもと違った姿を見られるのであれば、媚薬やベビードールの類いも悪くはない。ディルは心の底から商人に感謝した。次会った時には、こっそり報奨金を渡さねばならないだろう。
 ディルは薄い布の上から胸を揉み、エミのしなやかな首筋や肩にキスを落とす。
 散々じらされたエミのショーツから、すでに透明なしずくが垂れていた。エミは恥ずかしそうに太ももをモジモジと擦りあわせる。

「ねえ、このベビードールは脱いじゃダメかな……? せっかく可愛いのに、汚しちゃうのはイヤだし……」
「気にするな。こういった類いのモノは、汚すためにあるようなものだろう」

 そう言って、ディルはエミの太ももを割り、ほっそりとした両脚の間に身体をねじ込んだ。無理やり脚を開かれたエミはたじろぐ。

「あっ、だめ……っ!」
「まったく、見れば見るほどまったく機能的ではない構造をした下着だな。隠すべきところを、まったく隠せていない」
「やだ、恥ずかしいから解説しないでよぉ!」

 エミは羞恥のあまり必死で脚をとじようとしたものの、ディルがっしりした体躯がそれを阻む。
 愛蜜で濡れたショーツが、柔肉にぴったりと張り付いている。その上、ちょうどショーツの中央に入ったスリットのせいで、ツンとたちあがった恥核や濡れた蜜孔が丸見えだ。
 ディルは戸惑いなくエミの脚の間に顔を埋め、割れ目にたまった愛液を舐めとった。

「わあっ!?」

 まさかそんな場所を舐められると思っていなかったエミは、腰をびくりと震わせた。

「ダメだよ、そんな場所舐めちゃ……。き、汚い、からぁ……」
「お前の身体が汚いと思ったことは一度もない」
「ちがーう、そういう意味じゃないの……んんっ、……ダメってば……、ディル……」

 いやいやと子供がむずがるようにエミは首を振る。しかし、ディルはエミの抵抗をものともせず、ぐちゅぐちゅとはしたない水音をたてながら割れ目を舌で割り、ねっとりと舐めあげた。

「ふぁっ……、ああっ……」

 抵抗していたエミの力が徐々に弱まっていく。あえぎながら、エミはシーツをぎゅっと握る。羞恥からか、快感からか、指先まで真っ赤だ。
 蜜があふれる部分で舌がちろちろと蠢き、そのたびにエミは甘い声であえいだ。
 ついにじんじんとうずく花芯を探りあてた舌が、神経の集中している中心の部分を掘り起こす。エミの身体がビクビクと痙攣した。

「はぁ、……んっ」
「……ちゃんと、感じているな。偉いぞ」

 ディルの吐息まじりの低い囁きすら、敏感になった局部には快感に変わる。
 エミのショーツは、ディルの唾液とエミの愛液でぐっしょり濡れていた。
 感じる場所を見つけだしたディルは、唾液をたっぷりまとわせて、敏感な突起を舌で転がす。指で触られるのとはまったく違う未知の快感に、甲高い嬌声をあげた。

「ひゃぁぁ……、んんっ……」

 一方的に与えられる強すぎる快感から逃げようと、エミの細い腰が浮く。しかし、ディルのがっちりとした腕が両脚をおさえてエミを離さない。口淫はさらに執拗に、激しくなる一方だ。
 
「ぁああん……っ、そんなにしたら、……おかしく、なっちゃう」
「そんな淫乱な格好をして、私を煽ったお前が悪いんだぞ、エミ」

 じゅるりと淫靡な音を立ててディルが花芯を強く吸いあげると、いよいよエミは悲鳴のような嬌声をあげ、腰をビクビクと痙攣させた。忘我の淵で、子宮の奥に溜まった快感が、一気に吹きだす。

「イ……、くっ……は、……んん――ッ!」

 エミが息を詰めて高みに昇りつめ、ついに全身をわななかせた。

「あっ……あぁあん……っ!」
「……達したか?」

 じゅくじゅくに濡れた陰部からようやくディルが口を離すと、エミは肩で息をしながら、四肢をシーツに投げ出していた。蜜口から滴りおちた蜜は、ベビードールの裾をぐっしょりと濡らしている。
 
「……死んじゃうかと、思った」

 快感の余韻にひたりながら、息も絶え絶えにエミは呟いた。ディルはそんなエミに覆い被さる。

「えっ、なに……?」
「……これで終わるわけがないだろう」

 ベビードールの裾をめくりあげ、ディルはエミの腰を掴む。エミの蕩けきった蜜口に、熱い屹立があてがわれた。
 エミはハッとした顔をする。

「あっ、そういえばディルはまだイってない……」
「ああ。そのような可愛らしい格好で私をその気にさせたのだ。最後まで責任をとってもらうぞ」
「んんっ、ひゃぁああ……」

 ――その晩、その気になったディルが満足するまで、エミは一晩中執拗に抱かれることになる。

 翌日、愛されすぎて足腰がガクガクになったエミはベビードールを着たことを心の底から後悔した。一方ディルはかなり満足げな表情で、ベッドから出られないエミの世話を焼いたという。
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