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1章 謎の聖女は最強です!
伯爵、愛す! (1)※
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柔らかい何かが腕の中で動いたのを不審に思ったディルは、無理やり重たい瞼をこじ開けた。
まばゆい光に眉をしかめた後、彼は腕の中に目を向け――、
「……ッ!?」
すんでのところで声を出すのをこらえた。
それもそのはず、彼の腕の中では、彼の婚約者がすっぽりとおさまってスヤスヤ寝息を立てていたのだ。あろうことか、彼のたくましい二の腕を枕にして。
状況を鑑みるに、ディルはどうやらエミの話を聞いたあと、疲労がピークに達して眠ってしまったらしい。窓から差し込む夕日で部屋が染まっていることから、時間は夕方だろう。かなり長い間眠りこけてしまったようだ。
エミはディルが寝ている間に湯浴みを済ませたらしく、ゆったりとしたシルクのガウンに着替えていた。金髪が少しだけ濡れている。化粧は、いわゆる「オフった」状態だ。
(湯浴みを済ませたあと、わざわざこの部屋に帰ってきてということか……。まったくこんな姿で、男のベッドに自ら入ってくるとは、無防備にもほどがあるだろう……。飢えた狼の巣に自分から飛び込んでいくようなものだぞ)
心の中では文句を言いつつ、彼の心臓は痛いほどに脈打っていた。こうやって再び彼女を抱きしめたいとこの数週間ずっと願っていたのだ。彼の願望は思わぬかたちであっさり叶ってしまった。
いつもの彼であれば、寝ている隙に無断で誰かがベッドの中に入ったと知れば、烈火のごとく怒っただろう。しかし、聖女エミに対しては不思議と怒りはわかなかった。
ディルは、ドギマギしながらおそるおそる胸のなかのエミを見つめる。
エミの眼のふちはまだ涙のあとが残っているものの、寝顔はすこぶる穏やかだ。よく眠っている。
(今まで気づかなかったが、眼のふちに小さなホクロがあるのだな。それから、耳の後ろにも……。ああ、眺めているだけでは物足りない……。いつもは恥ずかしくてできないが、キスくらいしても罰はあたるまい……)
ディルはおそるおそるエミの髪の生え際にキスを落とす。そのまま、耳朶や頬もその唇で堪能した。
どこもかしこも柔らかいエミの身体はすこぶる抱き心地がよかった。節くれだった男の身体とは大違いだ。滑らかな髪に頬を寄せると、清潔なシャボンの匂いがディルの鼻腔をくすぐる。
触れているだけで、幸福感がディルの全身を駆け巡る。頭のなかがしびれ、この身体を蹂躙したいという気持ちと、限りなく優しく壊れ物のように扱いたいという気持ちがアンビバレンスに心を支配する。
しばらく唇で彼女を楽しみ、抱き心地を堪能していたディルだったが、ふっと小さくため息をついた。このままいくと、我慢できずに本能のままに彼女を襲って抱きつぶしてしまいかねない。現に、彼の股間がさきほどから存在を誇示し始めていた。
(ふう、私としたことが。あのまま触り続ければ理性を保てなくなるところだった……。そうなれば前回の二の舞だ)
危ないところだった、と身体を離そうとすると、寝ていたはずのエミがぎゅっと彼のシャツを掴んだ。
「あのぉ、ハクシャク……」
「な、な、な、な、なん……ッ!!?? おま、お前、寝てたんじゃ……」
「えーっと、ちょっとウトウトしてただけ……みたいな……?」
完全にエミが寝ていると思っていたディルは、大いに動揺した。
「いつからだ? いつから起きていた?」
「ええっと、完全に目が覚めたのはデコチューあたりから、かなぁ?」
「かなり初めからではないか! なんというかこれは、その……、すまない、つい調子に乗った……」
「べ、別にいいよ! っていうか、あの……、こうやって自分からスキンシップ取ってくるハクシャクって激レアだからさぁ、嬉しかったってゆーかぁ……」
ディルのシャツの裾を、エミが遠慮がちに引っ張った。化粧をしていないためか、いつもより幼く見えるくりくりとした目が、熱っぽくディルを見つめる。
「あの、つづきを期待してもいい感じ……?」
可愛らしいエミの誘い文句に、ディルの理性が一瞬で蒸発した。間髪入れずに、ディルはエミを抱きしめる。二人の距離が一気に近くなった。
「いいのか……? 今日は、おそらく最後まですることになるぞ……」
ディルはエミの耳元でささやく。ずいぶん余裕をなくしたような切羽詰まった声に、エミは真っ赤になってコクリと大きく頷いた。
「大丈夫、だと思う……」
「……その言葉、後悔するんじゃないぞ」
ディルは抱きすくめるようにエミをベッド押し倒し、唇を重ねた。お互いの唇の柔らかさを確かめあうように、二人は何度も角度を変えてキスをする。
「んっ……。ふぅ……♡」
「……ッ、舌をだせ。噛むなよ」
少し開けられた唇の隙間にディルは舌をいれてこじ開け、口内を蹂躙する。エミは一瞬驚いたように目を見開いたものの、すぐに目を閉じてディルの舌を受け入れた。深い口づけはまるで麻薬のように、エミの身体に不思議な多幸感をもたらし、抵抗する力を奪っていく。
一方ディルはキスを堪能しながら、抜かりなくエミのガウンのあわせ紐を器用に解いた。ほっそりとした肩口からするりと寝衣が剥がれ落ちる。
エミのすらりとした上半身があらわになり、大きな窓から入る夕日に照らされた。
キスに夢中になっているあいだに、いつの間にか服を脱がされたエミは、恥ずかしさのあまりディルの視線から逃げるように体をよじる。
貪るような口づけをやめて、ディルはじっとエミの肢体を見つめた。
「ああ、よかった。今日はこの前みたいにコルセットをつけてないんだな」
「あれはメアちんがあたしのことをいろいろ思ってやってくれたことで……、きゃっ」
「こら、隠すんじゃない」
熱っぽい視線を遮るためか、エミはさりげなく手で小ぶりな胸を隠そうとしたものの、その手はあっさり捕えられる。ディルの大きな右手がエミの両手をいとも簡単につかんで頭の上で縫いとめてしまった。
小さいながらも形の良い膨らみが、ディルの前にあられもなく晒される。
「こ、これやだっ! せめてカーテンを閉めてよぉ。ハクシャク、お願い……」
「……ここは3階だ。窓から覗き見られることはない」
「そーゆーことじゃないの! あ、明るいと見えちゃうから、いやぁ……」
ディルは恥ずかしそうにイヤイヤと首を振るエミの双丘を愛おしそうに見つめ、尖り始めた場所をおもむろにベロリと舐めた。敏感なエミの身体がびくりとはねる。
「ふん。相変わらず、感じやすいものだな」
「そ、それ……やめ、……」
「止めてほしい? 前回もお前はここを吸ってやると悦んでいた記憶があるが」
ディルは片頬だけでニヤリと微笑み、小さな乳輪を咥えるとじゅ、じゅ、と音をたてて吸い上げる。急に与えられた強い快感をいなしきれないエミの身体がわななく。
「んぁっ……♡ ハクシャ、ク……。あっ……んっ………」
エミは弱々しくディルから逃れようとするものの、ディルはそんなエミを抑えつけて、敏感な尖りに執拗なほどの快感を与え続ける。
同時にもう片方の膨らみもやわやわと揉んでやると、エミの嬌声は一層甘いものになった。
「ああっ♡……気持ちいぃ……」
エミは息も絶え絶えにつぶやく。
とめどなくディルに攻めたてられ、すでに明るい部屋の中ではしたない行為をしていることすら、気にしていられなくなったようだ。
とろんとした黒目がちな目が、ディルだけを見つめている。その瞳にたまらなく欲情したディルは、噛みつくようにキスをした。
まばゆい光に眉をしかめた後、彼は腕の中に目を向け――、
「……ッ!?」
すんでのところで声を出すのをこらえた。
それもそのはず、彼の腕の中では、彼の婚約者がすっぽりとおさまってスヤスヤ寝息を立てていたのだ。あろうことか、彼のたくましい二の腕を枕にして。
状況を鑑みるに、ディルはどうやらエミの話を聞いたあと、疲労がピークに達して眠ってしまったらしい。窓から差し込む夕日で部屋が染まっていることから、時間は夕方だろう。かなり長い間眠りこけてしまったようだ。
エミはディルが寝ている間に湯浴みを済ませたらしく、ゆったりとしたシルクのガウンに着替えていた。金髪が少しだけ濡れている。化粧は、いわゆる「オフった」状態だ。
(湯浴みを済ませたあと、わざわざこの部屋に帰ってきてということか……。まったくこんな姿で、男のベッドに自ら入ってくるとは、無防備にもほどがあるだろう……。飢えた狼の巣に自分から飛び込んでいくようなものだぞ)
心の中では文句を言いつつ、彼の心臓は痛いほどに脈打っていた。こうやって再び彼女を抱きしめたいとこの数週間ずっと願っていたのだ。彼の願望は思わぬかたちであっさり叶ってしまった。
いつもの彼であれば、寝ている隙に無断で誰かがベッドの中に入ったと知れば、烈火のごとく怒っただろう。しかし、聖女エミに対しては不思議と怒りはわかなかった。
ディルは、ドギマギしながらおそるおそる胸のなかのエミを見つめる。
エミの眼のふちはまだ涙のあとが残っているものの、寝顔はすこぶる穏やかだ。よく眠っている。
(今まで気づかなかったが、眼のふちに小さなホクロがあるのだな。それから、耳の後ろにも……。ああ、眺めているだけでは物足りない……。いつもは恥ずかしくてできないが、キスくらいしても罰はあたるまい……)
ディルはおそるおそるエミの髪の生え際にキスを落とす。そのまま、耳朶や頬もその唇で堪能した。
どこもかしこも柔らかいエミの身体はすこぶる抱き心地がよかった。節くれだった男の身体とは大違いだ。滑らかな髪に頬を寄せると、清潔なシャボンの匂いがディルの鼻腔をくすぐる。
触れているだけで、幸福感がディルの全身を駆け巡る。頭のなかがしびれ、この身体を蹂躙したいという気持ちと、限りなく優しく壊れ物のように扱いたいという気持ちがアンビバレンスに心を支配する。
しばらく唇で彼女を楽しみ、抱き心地を堪能していたディルだったが、ふっと小さくため息をついた。このままいくと、我慢できずに本能のままに彼女を襲って抱きつぶしてしまいかねない。現に、彼の股間がさきほどから存在を誇示し始めていた。
(ふう、私としたことが。あのまま触り続ければ理性を保てなくなるところだった……。そうなれば前回の二の舞だ)
危ないところだった、と身体を離そうとすると、寝ていたはずのエミがぎゅっと彼のシャツを掴んだ。
「あのぉ、ハクシャク……」
「な、な、な、な、なん……ッ!!?? おま、お前、寝てたんじゃ……」
「えーっと、ちょっとウトウトしてただけ……みたいな……?」
完全にエミが寝ていると思っていたディルは、大いに動揺した。
「いつからだ? いつから起きていた?」
「ええっと、完全に目が覚めたのはデコチューあたりから、かなぁ?」
「かなり初めからではないか! なんというかこれは、その……、すまない、つい調子に乗った……」
「べ、別にいいよ! っていうか、あの……、こうやって自分からスキンシップ取ってくるハクシャクって激レアだからさぁ、嬉しかったってゆーかぁ……」
ディルのシャツの裾を、エミが遠慮がちに引っ張った。化粧をしていないためか、いつもより幼く見えるくりくりとした目が、熱っぽくディルを見つめる。
「あの、つづきを期待してもいい感じ……?」
可愛らしいエミの誘い文句に、ディルの理性が一瞬で蒸発した。間髪入れずに、ディルはエミを抱きしめる。二人の距離が一気に近くなった。
「いいのか……? 今日は、おそらく最後まですることになるぞ……」
ディルはエミの耳元でささやく。ずいぶん余裕をなくしたような切羽詰まった声に、エミは真っ赤になってコクリと大きく頷いた。
「大丈夫、だと思う……」
「……その言葉、後悔するんじゃないぞ」
ディルは抱きすくめるようにエミをベッド押し倒し、唇を重ねた。お互いの唇の柔らかさを確かめあうように、二人は何度も角度を変えてキスをする。
「んっ……。ふぅ……♡」
「……ッ、舌をだせ。噛むなよ」
少し開けられた唇の隙間にディルは舌をいれてこじ開け、口内を蹂躙する。エミは一瞬驚いたように目を見開いたものの、すぐに目を閉じてディルの舌を受け入れた。深い口づけはまるで麻薬のように、エミの身体に不思議な多幸感をもたらし、抵抗する力を奪っていく。
一方ディルはキスを堪能しながら、抜かりなくエミのガウンのあわせ紐を器用に解いた。ほっそりとした肩口からするりと寝衣が剥がれ落ちる。
エミのすらりとした上半身があらわになり、大きな窓から入る夕日に照らされた。
キスに夢中になっているあいだに、いつの間にか服を脱がされたエミは、恥ずかしさのあまりディルの視線から逃げるように体をよじる。
貪るような口づけをやめて、ディルはじっとエミの肢体を見つめた。
「ああ、よかった。今日はこの前みたいにコルセットをつけてないんだな」
「あれはメアちんがあたしのことをいろいろ思ってやってくれたことで……、きゃっ」
「こら、隠すんじゃない」
熱っぽい視線を遮るためか、エミはさりげなく手で小ぶりな胸を隠そうとしたものの、その手はあっさり捕えられる。ディルの大きな右手がエミの両手をいとも簡単につかんで頭の上で縫いとめてしまった。
小さいながらも形の良い膨らみが、ディルの前にあられもなく晒される。
「こ、これやだっ! せめてカーテンを閉めてよぉ。ハクシャク、お願い……」
「……ここは3階だ。窓から覗き見られることはない」
「そーゆーことじゃないの! あ、明るいと見えちゃうから、いやぁ……」
ディルは恥ずかしそうにイヤイヤと首を振るエミの双丘を愛おしそうに見つめ、尖り始めた場所をおもむろにベロリと舐めた。敏感なエミの身体がびくりとはねる。
「ふん。相変わらず、感じやすいものだな」
「そ、それ……やめ、……」
「止めてほしい? 前回もお前はここを吸ってやると悦んでいた記憶があるが」
ディルは片頬だけでニヤリと微笑み、小さな乳輪を咥えるとじゅ、じゅ、と音をたてて吸い上げる。急に与えられた強い快感をいなしきれないエミの身体がわななく。
「んぁっ……♡ ハクシャ、ク……。あっ……んっ………」
エミは弱々しくディルから逃れようとするものの、ディルはそんなエミを抑えつけて、敏感な尖りに執拗なほどの快感を与え続ける。
同時にもう片方の膨らみもやわやわと揉んでやると、エミの嬌声は一層甘いものになった。
「ああっ♡……気持ちいぃ……」
エミは息も絶え絶えにつぶやく。
とめどなくディルに攻めたてられ、すでに明るい部屋の中ではしたない行為をしていることすら、気にしていられなくなったようだ。
とろんとした黒目がちな目が、ディルだけを見つめている。その瞳にたまらなく欲情したディルは、噛みつくようにキスをした。
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