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12.最終判断と紙飛行機

最終判断と紙飛行機①

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 日の落ちかけた海際のカフェで夕陽が沈むのを楽しんで、二人は車に戻った。
 紬希を助手席に乗せ、運転席に乗り込んだ貴堂が紬希に向かって話しかける。

「さて、どうしよう? このまま帰る? もし差し支えなかったら夕食を一緒にどうかな、と思うんだけど」
 紬希もこのまま帰るのは何だか淋しいような惜しいような気持ちだった。

「ご飯、ご一緒したいです」
「ん……」
 少し考えている様子の貴堂が車のエンジンをかけた。

「もし、良かったら僕の家に来ませんか? 外で食べるには寒いし。帰りはきちんと送るので」
 本当に、貴堂は紬希のことをとても考えてくれているのだとよく分かる。  

 ゆっくりと言葉を選びながら話してくれているのが紬希にも伝わるからだ。
 紬希は確かに外出は苦手なのだけれど、今日、貴堂と一緒にいて出掛けるのも悪くはないと少し思い始めていた。

 それに何より貴堂が不在の間も貴堂のことを考えたりして、こんな風に一緒にいられる時間はとても貴重で、一緒に時間を過ごすことがとても幸せなことだと、今日は改めて感じることができた。

 だから、自分のそんな気持ちを正直に伝える。
「私、貴堂さんと一緒にいるの、とても好きです」

 一瞬目を見開いた貴堂は紬希が見とれるくらい、綺麗に笑ったのだ。

「紬希は僕を幸せにする名人だよね」



 貴堂の家は空港から車で20分くらいのベイサイドにある高層マンションだった。

 散らかっているけれどもと上げてくれた部屋は綺麗に片付いている。
 周りにはいくつものマンションが建っているけれど、貴堂の部屋は窓が海の方を向いていて、周りに建物がない分とても景色が良かった。

 湾になっている海が見え、海の向こうのビル群に明かりがたくさんついているのが見えて、キラキラと星のように光っているのがとても綺麗だ。
 その間を横切るように飛行機が飛んでいるのも見える。

「ここからも飛行機が見えるんですね」
 おそらくは空港が近いのだ。
「通勤に便利だからここを買ったんだけれど、思いのほかいい場所だった」

 広めのベランダには白いデッキチェアが置いてあった。

「お外に椅子があるんですね」
「うん。夜景とか、飛行機とか見ながら翌日もオフの時はそこでぼうっとして飲んだりするから。なかなか気分いいよ」
「素敵ですね」

 おいで、とベランダへの大きな窓を貴堂は紬希に開けて見せた。その椅子に紬希を座らせる。
 空と夜景とが視界いっぱいに広がって、それは飽きることのない景色だった。
「綺麗……」

 しかし、段々外気温は下がってきている。

 紬希が気に入ったのならいつまでも見せてあげたいような気がするが、風邪をひかれても困るので、貴堂は紬希の肩をそっと抱いた。

「そろそろ部屋に入って。風邪をひくといけないから」
「はい」

「椅子をもう一つ買わなくてはいけないな」
 ベランダにあるデッキチェアは一脚だけだから。

 それは景色を気に入った紬希のため、と聞こえて紬希は嬉しくなってしまった。

 その時、ピンポンと部屋のインターフォンがなった。
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