嫁いできた花嫁が男なのだが?

SIN

文字の大きさ
43 / 66

37

しおりを挟む
 耳鳴りがするほどの静けさのまま、4人の視線が俺に注目している。
 この戦争のどちらにつくのか?
 俺達の父さんとジョー達の父さんが協力して、大陸の王様を退治するんだっけ?そこでどちら側かってことは、父さん達に味方するか、父さん達を倒すかの2択になるんだよな?
 え?それ俺に意見聞かなくても、考えなくても答えは明白じゃないか。
 「父さん達に味方するのが普通……だよな?」
 なにか間違ってる?
 心理テストかなにか?
 「親父達についたとして、勝利すればお前はこれからも森の番人として一生過ごせるだろうな。負ければ反逆者の息子として処刑だ。なら大陸の王側についた場合、勝利すれば親父達を失い、負けた場合、お前は真実を知って自害でもするか?」
 「兄さん!」
 ジークベルトが長く喋った後、隣にいたジョーが叫びながら立ち上がった。
 そして兄さんも表情が暗い。
 え?なに?
 また俺だけなにもわかってない感じ?
 この空気感、流石にもう飽きたんだけど……いや、分からないなら聞くしかない。
 「……真実ってなに?それを知ったら俺は自殺すんの?」
 「アイン、それを知る必要は……」
 いや、知らなきゃ今のままだ。
 「教えて、全部。父さん達の味方をするのが普通なのに、そうじゃなくて俺に決定権があるのって可笑しい。なにかがあるからなんだよな?なら、まずはそれを聞かなきゃ判断できない」
 切実に訴えてみたというのに、ジークベルトはまた溜息を吐くと、
 「1、お前の親父は不老不死になる技術欲しさに長男を俺達の親父に売ろうとした。2、俺達の親父は錬金術の実験体の失敗作を大陸に輸出した。3、失敗作は人の目が届かない森の深くに廃棄されている。4、失敗作の捨て場所がある地の領主の次男が、森で毎日毎日“魔物を”退治し続けている。5、俺達の親父は多くの実験体を求めて大陸を奪おうとし、実験の先にある不老不死を求めているお前達の親父と手を組んだ。どうだ?これ以上ないってくらい分かりやすい説明だろう?」
 指を1本づつ立てながら教えてくれた。
 「え……」
 「カインもお前の親父もこれを知っててお前を“森の番人”とか言ってんだ。まぁ、そもそも失敗作が島に戻らないように俺の親父がお前の親父に要求したことなんだけどな……」
 いや、違う。
 そんなのは嘘だ。
 だって魔物は確かに暴れて人を襲うし、卵……そうだ、卵を産むじゃないか!それで人間を攫って、卵を温めさせるじゃないか。
 「な、なら……ならどうして魔物は夜になると暴れるんだ!?村が襲われたことだって1度や2度じゃない!子供も卵で産むのに、人間?嘘つくな……」
 なぁ、これなんのテスト?
 本当にもう止めて欲しいし、いい加減に本当のことを教えてくれよ。
 「確かにな、お前の退治している魔物全部が人間とは限らない。失敗作が産んだ子供の可能性が高いからな。子については、卵で子を産む個体だけじゃなくて、人のように子を産む個体もいるぞ。失敗作が暴れる理由と村を襲う理由については……理由があるとしか……な」
 失敗作が生んだ、子?
 失敗作ってのが人なのだとしたら、その子供も人間?
 待て……魔物のような姿になってからの繁殖だから、なにかの生物と人間のハーフ……そうじゃなくて、魔物同士が番いの場合、それはもう純粋な人間だ。
 「……暴れる理由と、村を襲う理由は?ここまで言ったんだから、もう教えてくれよ」
 「それは……屋敷の中に罠があったように、森の中にも罠があるんだ。それにかかった魔物は暴れるようになっていたんだよ」
 さっきまではなにも教えないって態度だった兄さんが、急にポンポンと喋り出し、軽く目を閉じたジークベルトは兄に同意した。
 その様子から分かることは、違うんだろうなってことだけで、ジョーの方を見ると何も知らないといった風にブンブンと首を振ってきた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

処理中です...