44 / 66
38
しおりを挟む
5年以上退治し続けてきた魔物が、人間だった。
それを理解するため、俺は出来るだけ古い記憶を辿っていた。
魔物は始めから攻撃的だっただろうか?
俺が1番初めに倒してしまった魔物はどんな奴だっただろうか?
何故夜になると暴れる?
俺はどうして森で魔物を倒すようになった?
それは、親父にやれと言われたから。そこはハッキリと思い出せる。
なら、そう言われてすぐに森に行ったか?
魔物討伐前になにか特別な訓練はうけたっけ?
「あ……」
そうだ、俺は自分も兄さんと同じように学校へ行きたいと返事したんだっけ。
森に行きたくないと駄々をコネていた気もする。
それで……。
「アール……」
隣には心配げに俺を見つめてくる2つの目がある。
「ジョーは、お父さんが好き?」
俺は父さんを尊敬していたし“なにもしないことが最大の手伝い”とか言われていたけど、それでもちゃんと育ててくれたから恩もある。
森での討伐を任されたことも、魔物が人間だと知るまでは苦とも思っていなかった。
でも、知ってしまったら、やっぱり……。
「そんなわけない。俺は島から逃げて来たって言わなかった?」
うん、言ってた。
「兄さん、決まったよ。俺は父さん達を止める」
実験体を増やしたいって目的で起こされる戦争なんて、阻止するしかない。
例えそれで父さんを殺すことになったのだとしても、もはや俺は人殺しなんだ、最後に元凶となった2人の人間を退治するだけだ。
「うん。俺も同じ意見だよ」
「兄さん達はジョーとトッシュを守ってて。まずは父さんから説得してみる。兄さんはジョー達の父さんから狙われてるんだから、出来るだけ出ない方が良い。ジョー、チビ借りてくぞ」
勢いに任せて洞窟を飛び出し、屋敷に向かって走る。
1人で突っ走っているのは、説得に失敗した時のためだ。
もしここで誰かを連れて行ってしまったら、俺が倒れた後無事では済まされないだろう。
まだ兄さんなら強いからどうにかなりそうだけど、錬金術に長けているジョー達の父さんの戦力が分からない以上、強敵だと考えておくべきだ。
「チビ、いるか?」
「(いるよっ!)」
「洞窟に近付く妖しい奴がいたら追い払ってくれ。戦わなくて良い、追い払うだけで良いからな」
「(分かった!)」
上空を目指して飛んでいくチビを視線だけで見送り、走るスピードを上げていけば森の出口までは以外とすぐだった。
入り口付近にはノンビリと座り込んでいる兵士が数人いて、俺を見つけると、ちゃんと見張りをしていたとでも言いたげに慌てて立ち上がって見せた。
「少し外す。森から魔物が出て来たら対処してくれ」
「え……アイン様、森にお戻りください」
あぁ、これがジョーが言っていた”言う事をきかせられる呪文”か。
確かに、こんな感じの言葉は毎日聞いてるわ……。
それを理解するため、俺は出来るだけ古い記憶を辿っていた。
魔物は始めから攻撃的だっただろうか?
俺が1番初めに倒してしまった魔物はどんな奴だっただろうか?
何故夜になると暴れる?
俺はどうして森で魔物を倒すようになった?
それは、親父にやれと言われたから。そこはハッキリと思い出せる。
なら、そう言われてすぐに森に行ったか?
魔物討伐前になにか特別な訓練はうけたっけ?
「あ……」
そうだ、俺は自分も兄さんと同じように学校へ行きたいと返事したんだっけ。
森に行きたくないと駄々をコネていた気もする。
それで……。
「アール……」
隣には心配げに俺を見つめてくる2つの目がある。
「ジョーは、お父さんが好き?」
俺は父さんを尊敬していたし“なにもしないことが最大の手伝い”とか言われていたけど、それでもちゃんと育ててくれたから恩もある。
森での討伐を任されたことも、魔物が人間だと知るまでは苦とも思っていなかった。
でも、知ってしまったら、やっぱり……。
「そんなわけない。俺は島から逃げて来たって言わなかった?」
うん、言ってた。
「兄さん、決まったよ。俺は父さん達を止める」
実験体を増やしたいって目的で起こされる戦争なんて、阻止するしかない。
例えそれで父さんを殺すことになったのだとしても、もはや俺は人殺しなんだ、最後に元凶となった2人の人間を退治するだけだ。
「うん。俺も同じ意見だよ」
「兄さん達はジョーとトッシュを守ってて。まずは父さんから説得してみる。兄さんはジョー達の父さんから狙われてるんだから、出来るだけ出ない方が良い。ジョー、チビ借りてくぞ」
勢いに任せて洞窟を飛び出し、屋敷に向かって走る。
1人で突っ走っているのは、説得に失敗した時のためだ。
もしここで誰かを連れて行ってしまったら、俺が倒れた後無事では済まされないだろう。
まだ兄さんなら強いからどうにかなりそうだけど、錬金術に長けているジョー達の父さんの戦力が分からない以上、強敵だと考えておくべきだ。
「チビ、いるか?」
「(いるよっ!)」
「洞窟に近付く妖しい奴がいたら追い払ってくれ。戦わなくて良い、追い払うだけで良いからな」
「(分かった!)」
上空を目指して飛んでいくチビを視線だけで見送り、走るスピードを上げていけば森の出口までは以外とすぐだった。
入り口付近にはノンビリと座り込んでいる兵士が数人いて、俺を見つけると、ちゃんと見張りをしていたとでも言いたげに慌てて立ち上がって見せた。
「少し外す。森から魔物が出て来たら対処してくれ」
「え……アイン様、森にお戻りください」
あぁ、これがジョーが言っていた”言う事をきかせられる呪文”か。
確かに、こんな感じの言葉は毎日聞いてるわ……。
10
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
キスから始まる主従契約
毒島らいおん
BL
異世界に召喚された挙げ句に、間違いだったと言われて見捨てられた葵。そんな葵を助けてくれたのは、美貌の公爵ローレルだった。
ローレルの優しげな雰囲気に葵は惹かれる。しかも向こうからキスをしてきて葵は有頂天になるが、それは魔法で主従契約を結ぶためだった。
しかも週に1回キスをしないと死んでしまう、とんでもないもので――。
◯
それでもなんとか彼に好かれようとがんばる葵と、実は腹黒いうえに秘密を抱えているローレルが、過去やら危機やらを乗り越えて、最後には最高の伴侶なるお話。
(全48話・毎日12時に更新)
目覚めたそこはBLゲームの中だった。
慎
BL
ーーパッパー!!
キキーッ! …ドンッ!!
鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥
身体が曲線を描いて宙に浮く…
全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥
『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』
異世界だった。
否、
腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
幸福からくる世界
林 業
BL
大陸唯一の魔導具師であり精霊使い、ルーンティル。
元兵士であり、街の英雄で、(ルーンティルには秘匿中)冒険者のサジタリス。
共に暮らし、時に子供たちを養う。
二人の長い人生の一時。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる