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 5年以上退治し続けてきた魔物が、人間だった。
 それを理解するため、俺は出来るだけ古い記憶を辿っていた。
 魔物は始めから攻撃的だっただろうか?
 俺が1番初めに倒してしまった魔物はどんな奴だっただろうか?
 何故夜になると暴れる?
 俺はどうして森で魔物を倒すようになった?
 それは、親父にやれと言われたから。そこはハッキリと思い出せる。
 なら、そう言われてすぐに森に行ったか?
 魔物討伐前になにか特別な訓練はうけたっけ?
 「あ……」
 そうだ、俺は自分も兄さんと同じように学校へ行きたいと返事したんだっけ。
 森に行きたくないと駄々をコネていた気もする。
 それで……。
 「アール……」
 隣には心配げに俺を見つめてくる2つの目がある。
 「ジョーは、お父さんが好き?」
 俺は父さんを尊敬していたし“なにもしないことが最大の手伝い”とか言われていたけど、それでもちゃんと育ててくれたから恩もある。
 森での討伐を任されたことも、魔物が人間だと知るまでは苦とも思っていなかった。
 でも、知ってしまったら、やっぱり……。
 「そんなわけない。俺は島から逃げて来たって言わなかった?」
 うん、言ってた。
 「兄さん、決まったよ。俺は父さん達を止める」
 実験体を増やしたいって目的で起こされる戦争なんて、阻止するしかない。
 例えそれで父さんを殺すことになったのだとしても、もはや俺は人殺しなんだ、最後に元凶となった2人の人間を退治するだけだ。
 「うん。俺も同じ意見だよ」
 「兄さん達はジョーとトッシュを守ってて。まずは父さんから説得してみる。兄さんはジョー達の父さんから狙われてるんだから、出来るだけ出ない方が良い。ジョー、チビ借りてくぞ」
 勢いに任せて洞窟を飛び出し、屋敷に向かって走る。
 1人で突っ走っているのは、説得に失敗した時のためだ。
 もしここで誰かを連れて行ってしまったら、俺が倒れた後無事では済まされないだろう。
 まだ兄さんなら強いからどうにかなりそうだけど、錬金術に長けているジョー達の父さんの戦力が分からない以上、強敵だと考えておくべきだ。
 「チビ、いるか?」
 「(いるよっ!)」
 「洞窟に近付く妖しい奴がいたら追い払ってくれ。戦わなくて良い、追い払うだけで良いからな」
 「(分かった!)」
 上空を目指して飛んでいくチビを視線だけで見送り、走るスピードを上げていけば森の出口までは以外とすぐだった。
 入り口付近にはノンビリと座り込んでいる兵士が数人いて、俺を見つけると、ちゃんと見張りをしていたとでも言いたげに慌てて立ち上がって見せた。
 「少し外す。森から魔物が出て来たら対処してくれ」
 「え……アイン様、森にお戻りください」
 あぁ、これがジョーが言っていた”言う事をきかせられる呪文”か。
 確かに、こんな感じの言葉は毎日聞いてるわ……。
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