122 / 232
-121
しおりを挟む
画面に大きく映し出された匠の写真。
しかもそれは、あの地下室での写真だった。
薄暗い部屋の金属の台の上、ライトを浴びるように照らされているのは、全裸でうつ伏せに横たわる匠の姿。
そして背中の蛇と龍。
思わず四人が息を呑んだ。
匠は声も出せず、ただ“それ”を映す画面をじっと見つめていた。
心臓が脈打ち、体が震える。
客観的に自分の姿を見たのは初めてだった。
思い出したくも無い、あの地下での自分の姿……。
そして何よりも、背中の刻印……。
視力が回復しきっていない今、匠はまだ自分の背中を見た事がない。
シャワー室でも鏡に映る自分の姿はいつもモノクロで、ぼんやりと霞んでいた。
それが今、鮮明な画像となって目の前に突きつけられていた。
これが俺の体……なのか……。
目を伏せ、その画面――
一点を見つめたまま微動だにしない匠に気が付くと、浅葱は初めて動いた。
スッと匠の後ろへ回り、テーブルの下で何も言わず匠の手を握り締めた。
その手は冷たく、動揺し震え、呼吸もわずかに乱れている。
浅葱がその手を引き、外へ連れ出そうとするが、匠はゆっくりと首を振るだけで動こうとはしなかった。
今まで一番肝心な部分から逃げていたのだと、そう思い知らされていた。
正直、見たくも聞きたくもない……。
でも、もう逃げてはいられないのだと……。
「どうしてそんなモンが…………」
オヤジの声がやっと一言、部屋の静寂を破った。
「『どうして』ええ、その通りです。
こんなショッキングな写真が、ここにある事自体が不自然だ。
これを入手できるのは、こんな物を作った……。
あ…… “こんな物” と言うのは、一ノ瀬君に失礼な発言だったね。
そこに居るんだろ? 今回の当事者なんだから。
あと、ここに名前が載っている深月君も。
この四人が今の先生のチーム……」
「話を続けろ。透」
余計な事だ、と言わんばかりのオヤジの低い声がした。
「そうですね。話を戻しましょう。
まず、こんな写真が撮れるのは、この事件の関係者のみ。
これがどこで撮られたのか私にはわかりませんが、先生は再三の出頭要請に『一ノ瀬君の体調が回復してから』……と回答しておられる。
そうでしょうね。これだけの傷だ。
と言う事は、一ノ瀬君はかなりの重傷で、今もまだ自由に動けない状態と考えられる。
その彼がわざわざ自分の写真を撮り、外部に流出させるはずもない。
しかし、そのあるはずの無い写真がこうして添付され、今回の出席予定者全員に配られた……」
「配られた……だと!?
数十人が、もうこの写真を手にしたと言うのか!」
「確実ではありませんが、予定者が私と同じ物を受け取っているなら」
……数十人……。
それだけの人間が既に自分のこの姿を……この体を見ている……。
浅葱に握られた手に力が入る。
思わず目を閉じたが、その瞳の裏にはあの写真が……自分の背中を這うあの淫猥な龍蛇の映像が、残像のように付き纏い離れなかった。
苦しかった……。
息が出来なくなっていく……。
しかもそれは、あの地下室での写真だった。
薄暗い部屋の金属の台の上、ライトを浴びるように照らされているのは、全裸でうつ伏せに横たわる匠の姿。
そして背中の蛇と龍。
思わず四人が息を呑んだ。
匠は声も出せず、ただ“それ”を映す画面をじっと見つめていた。
心臓が脈打ち、体が震える。
客観的に自分の姿を見たのは初めてだった。
思い出したくも無い、あの地下での自分の姿……。
そして何よりも、背中の刻印……。
視力が回復しきっていない今、匠はまだ自分の背中を見た事がない。
シャワー室でも鏡に映る自分の姿はいつもモノクロで、ぼんやりと霞んでいた。
それが今、鮮明な画像となって目の前に突きつけられていた。
これが俺の体……なのか……。
目を伏せ、その画面――
一点を見つめたまま微動だにしない匠に気が付くと、浅葱は初めて動いた。
スッと匠の後ろへ回り、テーブルの下で何も言わず匠の手を握り締めた。
その手は冷たく、動揺し震え、呼吸もわずかに乱れている。
浅葱がその手を引き、外へ連れ出そうとするが、匠はゆっくりと首を振るだけで動こうとはしなかった。
今まで一番肝心な部分から逃げていたのだと、そう思い知らされていた。
正直、見たくも聞きたくもない……。
でも、もう逃げてはいられないのだと……。
「どうしてそんなモンが…………」
オヤジの声がやっと一言、部屋の静寂を破った。
「『どうして』ええ、その通りです。
こんなショッキングな写真が、ここにある事自体が不自然だ。
これを入手できるのは、こんな物を作った……。
あ…… “こんな物” と言うのは、一ノ瀬君に失礼な発言だったね。
そこに居るんだろ? 今回の当事者なんだから。
あと、ここに名前が載っている深月君も。
この四人が今の先生のチーム……」
「話を続けろ。透」
余計な事だ、と言わんばかりのオヤジの低い声がした。
「そうですね。話を戻しましょう。
まず、こんな写真が撮れるのは、この事件の関係者のみ。
これがどこで撮られたのか私にはわかりませんが、先生は再三の出頭要請に『一ノ瀬君の体調が回復してから』……と回答しておられる。
そうでしょうね。これだけの傷だ。
と言う事は、一ノ瀬君はかなりの重傷で、今もまだ自由に動けない状態と考えられる。
その彼がわざわざ自分の写真を撮り、外部に流出させるはずもない。
しかし、そのあるはずの無い写真がこうして添付され、今回の出席予定者全員に配られた……」
「配られた……だと!?
数十人が、もうこの写真を手にしたと言うのか!」
「確実ではありませんが、予定者が私と同じ物を受け取っているなら」
……数十人……。
それだけの人間が既に自分のこの姿を……この体を見ている……。
浅葱に握られた手に力が入る。
思わず目を閉じたが、その瞳の裏にはあの写真が……自分の背中を這うあの淫猥な龍蛇の映像が、残像のように付き纏い離れなかった。
苦しかった……。
息が出来なくなっていく……。
0
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる