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ナギの身体がピクリと震えた。
自分の耳に届いた言葉に恐怖したわけではない。
それが怒りだったのか、後悔だったのか……ナギ自身も判っていなかった。
「……今……なんて言った…………」
ただただ、聞き間違いであって欲しいと……嘘であって欲しいと……その一心で聞き返していた。
だが男の答えは、非情な現実をナギに突きつける。
「わっ……私はその手伝いをしただけ!
実際にやったのはヤツだ! ガルシアだ!!
私は止めた方がいいと、何度も……!」
「貴様ッ……!
シュリに……!!
神の子に悪魔の紋章を灼きつけたと言うのか!!
…………クソッッ!!!! なんて事を……!!
それでどうなった!! ……シュリは!! どうした!!」
「それだけ!! そこで皇子が倒れて、それでおしまい!!
……ヒ……ヒィィ……ッッ!!」
椅子を蹴倒し立ち上がったナギの剣が、男の首元にあった。
あと20センチ腕を引けば、男の首は落ちる。
口惜しさで唇を噛み締めたナギの顔は蒼白となり、その手は怒りに震える。
“絶対に許さない!”
その一念だけが、今、ナギの全てを支配していた。
「止めろ! ナギ!」
止めたのはヴィルだった。
だがナギの剣を握る手は緩まない。
「止めろ……だと……!?
お前も聞いただろッ!
こいつがシュリに何をしたか!!
それなのに、斬るなと言うのか!!」
「今はだめだ!!
この男には、まだ証言してもらわなければならん事がある!」
「クソがッ……!!」
今この場で、この男を斬り捨てられないという事が、余計に悔しかった。
怒りが心臓に達し、胸が掻きむしられるように熱く苦しくなる。
身体の震えが止まらず、剣を押し付けた男の喉元に、赤い血線がプツリと浮かぶ。
「ギャぁあああーー!
痛いぃぃぃいーー! 痛いぃーー! やめてくれっーー!
助けてくれぇ……!!
頼むから……っ……!! ……ああ……!
……っ……あ、、あ、、、……そ、そうだ!
ま、まだあった……!
あの皇子には秘密があるぞ!!
それを知りたくはないか! 私だけが知ってる秘密だ!!」
「うるさい! 黙れ!
もう、貴様の言う事など、何も聞きたくない!
黙らないなら、その首……!!」
「ダメだ! ナギ!!」
ヴィルが横から強引にナギの剣を奪い取る。
手から剣の重さがなくなると、ナギはそれを取り返そうと暴れ、それも叶わぬと判ると、今度は素手で男に掴み掛かろうとした。
それをヴィルが後ろから羽交い絞めにする。
「落ち着けナギ!
ここでこいつを斬り捨てても何もならん!!
皇子を助けたいなら、殺すんじゃない!!」
「助けてくれ!
……助けてくれぇ……!
悪かった! 許してくれ!!
全部、ガルシアの言う通りにしただけ!
私はアイツに騙されただけなんだ!!」
わずかに切れた首の皮を押さえ、自分の手に血を見た男は恐怖に震え、半泣きに叫んだ。
両手を擦り合わせ、懇願しながら蹲り、ナギの足元まで這いずると、靴を舐めるように取り縋る。
そして額を床に擦りながら、必死に命乞いを繰り返した。
「俺に触るな!
くそっ……! ……こんなヤツに……どうして……!
どうしてシュリが……!!
…………どうして…………!!」
男の情けない姿と声に、ナギは一気に魂が抜けたように放心し、天を仰ぐと、ぐったりとイスに座り込んだ。
「おい、秘密とは何だ。
まだ何かあるなら、さっさと話した方が身のためだ」
そんなナギの代わりに、ヴィルの冷たい声が響く。
「……わ、、わかった……。
あの皇子はたぶん……」
自分の耳に届いた言葉に恐怖したわけではない。
それが怒りだったのか、後悔だったのか……ナギ自身も判っていなかった。
「……今……なんて言った…………」
ただただ、聞き間違いであって欲しいと……嘘であって欲しいと……その一心で聞き返していた。
だが男の答えは、非情な現実をナギに突きつける。
「わっ……私はその手伝いをしただけ!
実際にやったのはヤツだ! ガルシアだ!!
私は止めた方がいいと、何度も……!」
「貴様ッ……!
シュリに……!!
神の子に悪魔の紋章を灼きつけたと言うのか!!
…………クソッッ!!!! なんて事を……!!
それでどうなった!! ……シュリは!! どうした!!」
「それだけ!! そこで皇子が倒れて、それでおしまい!!
……ヒ……ヒィィ……ッッ!!」
椅子を蹴倒し立ち上がったナギの剣が、男の首元にあった。
あと20センチ腕を引けば、男の首は落ちる。
口惜しさで唇を噛み締めたナギの顔は蒼白となり、その手は怒りに震える。
“絶対に許さない!”
その一念だけが、今、ナギの全てを支配していた。
「止めろ! ナギ!」
止めたのはヴィルだった。
だがナギの剣を握る手は緩まない。
「止めろ……だと……!?
お前も聞いただろッ!
こいつがシュリに何をしたか!!
それなのに、斬るなと言うのか!!」
「今はだめだ!!
この男には、まだ証言してもらわなければならん事がある!」
「クソがッ……!!」
今この場で、この男を斬り捨てられないという事が、余計に悔しかった。
怒りが心臓に達し、胸が掻きむしられるように熱く苦しくなる。
身体の震えが止まらず、剣を押し付けた男の喉元に、赤い血線がプツリと浮かぶ。
「ギャぁあああーー!
痛いぃぃぃいーー! 痛いぃーー! やめてくれっーー!
助けてくれぇ……!!
頼むから……っ……!! ……ああ……!
……っ……あ、、あ、、、……そ、そうだ!
ま、まだあった……!
あの皇子には秘密があるぞ!!
それを知りたくはないか! 私だけが知ってる秘密だ!!」
「うるさい! 黙れ!
もう、貴様の言う事など、何も聞きたくない!
黙らないなら、その首……!!」
「ダメだ! ナギ!!」
ヴィルが横から強引にナギの剣を奪い取る。
手から剣の重さがなくなると、ナギはそれを取り返そうと暴れ、それも叶わぬと判ると、今度は素手で男に掴み掛かろうとした。
それをヴィルが後ろから羽交い絞めにする。
「落ち着けナギ!
ここでこいつを斬り捨てても何もならん!!
皇子を助けたいなら、殺すんじゃない!!」
「助けてくれ!
……助けてくれぇ……!
悪かった! 許してくれ!!
全部、ガルシアの言う通りにしただけ!
私はアイツに騙されただけなんだ!!」
わずかに切れた首の皮を押さえ、自分の手に血を見た男は恐怖に震え、半泣きに叫んだ。
両手を擦り合わせ、懇願しながら蹲り、ナギの足元まで這いずると、靴を舐めるように取り縋る。
そして額を床に擦りながら、必死に命乞いを繰り返した。
「俺に触るな!
くそっ……! ……こんなヤツに……どうして……!
どうしてシュリが……!!
…………どうして…………!!」
男の情けない姿と声に、ナギは一気に魂が抜けたように放心し、天を仰ぐと、ぐったりとイスに座り込んだ。
「おい、秘密とは何だ。
まだ何かあるなら、さっさと話した方が身のためだ」
そんなナギの代わりに、ヴィルの冷たい声が響く。
「……わ、、わかった……。
あの皇子はたぶん……」
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