建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第9章 七大国会談編

第228話 各国提議の時間 その1

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 今までは七大国の王たちが好き勝手会話している形だったが、ここからは様相が変わり、カイムという人が司会進行役に付いた。

「あの方も魔人ですよ」
「へぇ~」

 今まで魔人って会ったことなかったけど、魔王が集まる場になると、魔人が多くなるのね。
 提議リストに最初に載っているのは……トニトール自治領。
 私たち属国・小国が集められている部屋は、今現在魔王たちが会談を行っている部屋の真下にある。この部屋の奥の中央にある色の違う床に立つと、床が上階へとせり上がる仕組みになっているらしい。

 トニトール自治領からの来訪者が色の違う床の上に立つと上階へとせり上がる。

「おぉ!? こうやって七大国の前へ出されるわけね」

 猛獣たちのいる場へね……


   ◇


 トニトール自治領の提議が始まった。

「お初にお目にかかります、雷の国属国のトニトール自治領のロバート・ハワードンナーと申します」
「……うん、それで何の相談……?」

 アスモが応対した。雷の国への提議みたいだ。

「我らの国は雷の国エレアースモへ隣接している属国ですが、エレアースモへ出稼ぎに行く者が多くいます。しかし、首都トールズのある雷平原は常に危険と隣り合わせなため、交通の便をもう少々便利にはしてはもらえないでしょうか? 具体的に言えば列車の数を多くしていただくとか」

 ああ、あの雷雲溜まりがある平原か。
 あそこは雷雲溜まりの近くを通らなければ雷に打たれる可能性は低くなるだろうけど、それでも普通の場所に比べたら、きっと何百倍も高い確率で雷に打たれそうだ。
 雷対策できないとかなり危険よね。雷に耐性があるとかなら別だけど。

「……うん、わかった、もう少し列車を多くできないか、鉄道開発に掛け合ってみる……私も直接あそこを歩いてみて列車の数が少ないかなと思ってた……」
「ありがとうございます!」

 終わった後は、この部屋へは戻ってこず、そのまま上階にある別の扉から出て行った。

 何かすぐ終わったな……提議ってこんな簡単に通るものなのか? それともアスモが聞き分けが良いのかしら?
 簡単に済みそうな議題ほど先の方にあるのかしら?
 と言うか……属国なら四年に一回こんなところ出て来なくても、直接王様に直訴した方が良いんじゃないの?
 と、この時は考えてたけど、各国でも普通に直訴が行われているらしい。軽いものも自国で直訴した方が早いが、この七大国会談が時期的に近かったということで、この場で提議しようとした国が多いようだ。
 どうやらこの場で提議するには色々と理由があるみたいだ。


   ◇


 各属国の提議は順調に進み、十番目の国――

 最初の方の提議はスムーズに終えたが、十番目の国で、なぜわざわざ七大国会談に出てまで提議するのかその理由がわかった。

「ひ、火の国・属国のファーイオから来ましたホルディ・マルティジャーマです」
「ああ、それでどうした?」

 今までの魔王たちとは違い、尊大な態度で対応するルシファー。

「その……税収をもう少し下げてはもらえませんでしょうか……?」
「却下だ。貴様誰に物を言ってるのかわかっているのだろうな?」
「ヒッ!」

 レヴィの話では、今代のルシファーは『傲慢プライド』の大罪と相性が良すぎるから国が荒れてるって話だったけど……
 直接目にすると、かなり酷いわね……領民の話も聞けないのかこの男は……傲慢どころの話ではない。

「話くらい聞いてあげてはどうなのですか!」

 レヴィが救いの手を差し伸べる。

「ふむ……年長者に言われては仕方ないな、“年長者”に言われてはな」
「………………」

 レヴィの方をチラリと見ながらしゃべる。
 嫌味ったらしく聞こえるわ……
 よほど自分より魔王の経歴が長いのが気に入らないのかな……?

「なぜ税収を下げねばならぬ事態になったのだ?」
「イナゴが大発生し、作物を食い荒らす事態が起こっています。今年は特に酷く、ほとんど取れない状態に……」
「それは仕方ないな」

 この世界でも蝗害こうがい(※)ってあるのね。
   (※蝗害:イナゴやバッタによる食害)

「出来ることなら、今後もう少しの減税を……」
「貴様……図に乗るなよ」
「も、申し訳ありませんっ!!」
「とは言え属国民が飢えるのも困りものだな。今年に限り免除してやろう。今年のうちに解決しておけ。来年は一.五倍増しで取り立てる」
「わ、わかりました! ありがとうございます!」

 今年は免除して、来年一.五倍って……領民に死ねって言ってないか?
 とりあえず、今年のところは従っておくという感じか。きっと帰った後は死に物狂いで改善に励むんだろうな……

 ああ、そうか……これが他の七大国の王の前で提議する意味か。
 このルシファーのように傍若無人に振舞う王だと、直訴だと絶対に通らないから、七大国会談の場で提議するのか。
 レヴィのアシストが無ければ、聞いてすぐに一蹴されていたかもしれない。それどころかルシファーの前評判を聞く限り、これが火の国ルシファーランド内での直訴なら、聞く耳を持ってもらえず斬首とかいう可能性もある。
 これは七大国会談が決まった時からの取り決めかな?
 多分、初期の頃は大罪の影響も強いだろうから、もっと勝手気ままに振舞う魔王が多かったかもしれないしな。きっと大罪の影響が薄い魔王が、濃い魔王を諫めるとか、そういうことが続いてきたんだろう。
 それともしかしたらある程度、魔王に対しての誓約があるかもしれない。『ここで提議され、その対応をしたからには、その対応とあまりにも外れた対応をしてはならない』みたいな。
 まあ想像でしかないけど。
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