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第9章 七大国会談編
第227話 魔王たちの会談 その3
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風の国の話題が終わったところで、サタナエルがヴェルフェゴールへと切り出す。
「ヴェルフェゴール殿は昨日起床されたそうだな」
「そうですな」
「起床してすぐは気分が良いと聞いていますが、どのような感じなんですか? 継承後、それほど時間が経っていない土の魔王に会うことなどあまり無いので少々興味があります」
アスタロトが話に加わる。
「そうですなぁ……継承して日が浅いため、まだまだ慣れませんな。起床した瞬間から突然身体の調子が良くなるので驚きますよ。執事だった頃には感じたことの無い爽快感と高揚感がありますな」
「あれは本当のことなのですか? 起床初日は『死なない』というのは。噂では……首を落とされても死なないと聞いたことがありますけど……」
噂に聞く“不死身さ”についてトライアが質問するも――
「さあ? どうでしょうな。腕を傷つけて超回復能力があるのは確認しましたが、流石に自殺紛いのことをするとなると勇気が出ず、試しておりません」
「あ、それはそうですよね……試してみて、それで死んでしまったら元も子もないですよね……」
死ぬ気も無いのに、そんな恐ろしいことできないよね……
まあ、そんなに高揚感があるなら、私なら『最高に「ハイ!」ってやつだアアアアアア』とか言いながらこめかみをグリグリやってみるかもしれないけど。
もう何千年も継承しているのだから、こういうのは判明しているんじゃないかと思うんだけど、実際に見てみたわけではないから、他国では噂止まりなんだろう。多分土の国でも国の芯となる秘密の一つだから、他国に対しては真偽を曖昧にしておきたい側面もあるだろうし。
しかも、死なないかどうかを実際に確認できるのが起床初日“のみ”ってところを考えても、歴代土の魔王を含めてもその不死身さを確認できたものはほとんどいないのではないかと思う。だって誰だって自殺紛いのことをしたくないだろうし。
「大分年を重ねた私からすれば、羨ましい限りだ」
「まあ、体調がすこぶる良いのも三日ほどですので。その後は入眠するまで年相応の身体に戻りますよ。その落差は中々……形容しがたい。身体中の老化による痛みが急激に復活しますからな」
「それはお辛いですね」
「失礼ながら……なぜ貴殿が継承されたのだ? もっと若い者もいたであろう? 『怠惰』は七つの大罪の中で唯一指名して継承できる大罪だと聞いておるぞ?」
大罪って、近くに居る者に移宿するって聞いてたけど(第55話参照)、指名できるものも存在するのか。
『怠惰』の大罪だから、自分で移宿先を選ぶのも面倒くさいのかな……?
「それは先王のご意思ですので、わたくしからは何も言えません。これが我ら土の国にとって最良の選択と考えてのことでしょう」
そこへ先程から疑問に思っていたのだろう、トライアが話に入る。
「先王が貴方に継承した、その理由はご存じなのですか?」
「ええ、ですがこれは誰にも言えぬことですので、これ以上の詮索はご遠慮願いたく思います」
ヴェルフェゴールが切り返す。
「サタナエル殿、貴方の国も情勢が安定せぬと聞き及んでおりますがいかがですかな?」
その質問返しに、少々ムッとした表情をした。
「最近私への反抗を企てている者がいるらしい」
それまで淡々とした口調だったサタナエルが、瞬間湯沸かし器のように突然怒り出し、顔を真っ赤にし、こめかみには血管が浮かび、「フーッ! フーッ!」と荒い呼吸になる。
「あのっ、、、ギアーチョの者どもめ!!」
円卓に拳を振り下ろし、「ガンッッ!!」という音が響き、円卓にヒビが入る。
その音に驚き、サタナエル以外の魔王・魔王代理全員の視線が、サタナエルに集まる。
少しの沈黙と嫌な空気が流れる。
ギアーチョって、確かさっき渡されたプログラムに……あった、十一番目に提議する国だ。氷の国の属国みたいだ。
周囲を見回して、ギアーチョと書かれたテーブルを見つけた。
ギアーチョ国出身らしき三人全員が、険しい顔でサタナエルの動向を窺っている。
「サタナエル殿……大丈夫ですか?」
「フーッ…………いやはや、失礼した。私の政治的指向が気に入らない者がいるようで、連日のようにテロ紛いのことが起こり、少々イライラしておりましてな」
その後、会話をする雰囲気ではなくなり、時間も大分経っていたため、次の提議パートへと移行する準備が進められた。
ここでこの会談を私が見たところの分析。
七大国会談……地球で言うところのG7サミットみたいなものかと思ったけど、その実はG7ほど大したものというわけではないらしい。
要は、集まっての近況報告の側面が強いように思う。
各小国・属国の面々は、自分の国に何か関係する話題が出ないかと傾聴している者もいるが、興味無さそうに別のことをやっている者もいる。他国の者と歓談・情報交換している者もいる。
地球なら、ネット環境の進歩によって、遠く離れていてもそれぞれの国の代表の顔を見ながら会話が可能だが、魔界にはまだネット環境が整えられるところまで技術が達していない。
空間魔法で、例えば私が度々アニメ視聴に利用している『千里眼』を使えば可能に見えるけど……
ごく短い時間で魔法が終了するゲートですら常人なら数回から十回程度しか使えないというのは既に確認済み。『千里眼』のように相手側の映像を映し、更にそれを長時間持続させるとなると、常人では難しいのかもしれない。仮に魔王クラスの魔力を持つ空間魔術師がいるなら可能かもしれないが……
それ故に、こうして四年に一回、七大国の王が顔を突き合わせる必要があるのだろう。
「お時間も大分経ちましたので、会談はここまでとし、次の提議の時間に移りたいと思います。ここからはわたくしが司会進行役を務めさせていただきます、カイムと申します」
次の各属国・小国の提議の時間に移行する。
「ヴェルフェゴール殿は昨日起床されたそうだな」
「そうですな」
「起床してすぐは気分が良いと聞いていますが、どのような感じなんですか? 継承後、それほど時間が経っていない土の魔王に会うことなどあまり無いので少々興味があります」
アスタロトが話に加わる。
「そうですなぁ……継承して日が浅いため、まだまだ慣れませんな。起床した瞬間から突然身体の調子が良くなるので驚きますよ。執事だった頃には感じたことの無い爽快感と高揚感がありますな」
「あれは本当のことなのですか? 起床初日は『死なない』というのは。噂では……首を落とされても死なないと聞いたことがありますけど……」
噂に聞く“不死身さ”についてトライアが質問するも――
「さあ? どうでしょうな。腕を傷つけて超回復能力があるのは確認しましたが、流石に自殺紛いのことをするとなると勇気が出ず、試しておりません」
「あ、それはそうですよね……試してみて、それで死んでしまったら元も子もないですよね……」
死ぬ気も無いのに、そんな恐ろしいことできないよね……
まあ、そんなに高揚感があるなら、私なら『最高に「ハイ!」ってやつだアアアアアア』とか言いながらこめかみをグリグリやってみるかもしれないけど。
もう何千年も継承しているのだから、こういうのは判明しているんじゃないかと思うんだけど、実際に見てみたわけではないから、他国では噂止まりなんだろう。多分土の国でも国の芯となる秘密の一つだから、他国に対しては真偽を曖昧にしておきたい側面もあるだろうし。
しかも、死なないかどうかを実際に確認できるのが起床初日“のみ”ってところを考えても、歴代土の魔王を含めてもその不死身さを確認できたものはほとんどいないのではないかと思う。だって誰だって自殺紛いのことをしたくないだろうし。
「大分年を重ねた私からすれば、羨ましい限りだ」
「まあ、体調がすこぶる良いのも三日ほどですので。その後は入眠するまで年相応の身体に戻りますよ。その落差は中々……形容しがたい。身体中の老化による痛みが急激に復活しますからな」
「それはお辛いですね」
「失礼ながら……なぜ貴殿が継承されたのだ? もっと若い者もいたであろう? 『怠惰』は七つの大罪の中で唯一指名して継承できる大罪だと聞いておるぞ?」
大罪って、近くに居る者に移宿するって聞いてたけど(第55話参照)、指名できるものも存在するのか。
『怠惰』の大罪だから、自分で移宿先を選ぶのも面倒くさいのかな……?
「それは先王のご意思ですので、わたくしからは何も言えません。これが我ら土の国にとって最良の選択と考えてのことでしょう」
そこへ先程から疑問に思っていたのだろう、トライアが話に入る。
「先王が貴方に継承した、その理由はご存じなのですか?」
「ええ、ですがこれは誰にも言えぬことですので、これ以上の詮索はご遠慮願いたく思います」
ヴェルフェゴールが切り返す。
「サタナエル殿、貴方の国も情勢が安定せぬと聞き及んでおりますがいかがですかな?」
その質問返しに、少々ムッとした表情をした。
「最近私への反抗を企てている者がいるらしい」
それまで淡々とした口調だったサタナエルが、瞬間湯沸かし器のように突然怒り出し、顔を真っ赤にし、こめかみには血管が浮かび、「フーッ! フーッ!」と荒い呼吸になる。
「あのっ、、、ギアーチョの者どもめ!!」
円卓に拳を振り下ろし、「ガンッッ!!」という音が響き、円卓にヒビが入る。
その音に驚き、サタナエル以外の魔王・魔王代理全員の視線が、サタナエルに集まる。
少しの沈黙と嫌な空気が流れる。
ギアーチョって、確かさっき渡されたプログラムに……あった、十一番目に提議する国だ。氷の国の属国みたいだ。
周囲を見回して、ギアーチョと書かれたテーブルを見つけた。
ギアーチョ国出身らしき三人全員が、険しい顔でサタナエルの動向を窺っている。
「サタナエル殿……大丈夫ですか?」
「フーッ…………いやはや、失礼した。私の政治的指向が気に入らない者がいるようで、連日のようにテロ紛いのことが起こり、少々イライラしておりましてな」
その後、会話をする雰囲気ではなくなり、時間も大分経っていたため、次の提議パートへと移行する準備が進められた。
ここでこの会談を私が見たところの分析。
七大国会談……地球で言うところのG7サミットみたいなものかと思ったけど、その実はG7ほど大したものというわけではないらしい。
要は、集まっての近況報告の側面が強いように思う。
各小国・属国の面々は、自分の国に何か関係する話題が出ないかと傾聴している者もいるが、興味無さそうに別のことをやっている者もいる。他国の者と歓談・情報交換している者もいる。
地球なら、ネット環境の進歩によって、遠く離れていてもそれぞれの国の代表の顔を見ながら会話が可能だが、魔界にはまだネット環境が整えられるところまで技術が達していない。
空間魔法で、例えば私が度々アニメ視聴に利用している『千里眼』を使えば可能に見えるけど……
ごく短い時間で魔法が終了するゲートですら常人なら数回から十回程度しか使えないというのは既に確認済み。『千里眼』のように相手側の映像を映し、更にそれを長時間持続させるとなると、常人では難しいのかもしれない。仮に魔王クラスの魔力を持つ空間魔術師がいるなら可能かもしれないが……
それ故に、こうして四年に一回、七大国の王が顔を突き合わせる必要があるのだろう。
「お時間も大分経ちましたので、会談はここまでとし、次の提議の時間に移りたいと思います。ここからはわたくしが司会進行役を務めさせていただきます、カイムと申します」
次の各属国・小国の提議の時間に移行する。
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