建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第7章 川完成編

第164話 橋作りについて

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 川作りも佳境に入ってきた。
 もう浄水施設、下水施設はかなりの部分出来て来た。建築に魔法を使ってる所為か、進捗が早い早い。人間界の工事速度とは比較にならない。
 そして、村のあちこちが掘だらけになってきたので、この段階になってきちんとした橋を架けることを考えることに。

「これって魔法で架けちゃダメなんですか?」
 ヘパイトスさんに訊ねる。

「魔法だけで橋を? まあ良いんじゃないか? 壊れないなら問題無い。試しに自分で作ってみたらどうなんだ?」
 試しに土魔法で作ってみる。

「何か……見るからに壊れそうで恐ろしいんだが……」
 見た目は一応橋として架かっているが、かちかち山の泥船を彷彿とさせる脆そうな橋が出来た。

「土で作るのはダメっぽいですね……壊します」
「まあ、大方予想はついていたけどな」

 考えてみれば土だけで出来た橋なんて見たことないな……
 じゃあ、物質魔法の鉄系統で、と思ったが物質魔法は消費MPが多いから鉄橋を複数作ろうとしたら、多分死ぬ覚悟をしないといけない。
 そもそも村内の川幅はそれほど広いわけじゃないから鉄橋なんて強固なものにする必要は無い。

「あ、それじゃあこんなのはどうですか?」
 樹魔法で橋を作り出した。
 地球には樹で出来た天然の橋があるらしい。

「こりゃ良いな! ただな……これも樹が病気に罹ったり、不意の失火が起きた場合は、使えなくなる可能性がある。それに年月が経つと形が変わってくるしな。やはりきちんと工事して作るのが無難だと思うぞ?」
「そう……ですよね……」
「しかしな、正式な橋が作られるまでの、仮橋としてならかなり有用だと思う。この村も橋を架けないとならん場所が複数ヶ所あるからな」

 そう、村中お堀だらけになってしまったから、橋も複数ヶ所かける必要がある。

「川作って終わり、って考えてたけど、それに付随するものが色々と出てくるんですね……」
「そりゃそうだろ、ワシらのような亜人ひとが生活するからには、どうしたって健康や利便性に気を使わにゃならんからな」

 川作り計画してた当初は、浄水施設やら、橋やら、田んぼやらに繋がるところまで考えてなかった。
 橋についても、村のあちこちに堀が出来てきてから気付いたくらいだ。
 川の本流さえ作ってしまえば、あとはみんな適当に水汲みしたり、川で洗濯したり、水浴びしたりしてもらえば良いや、なんてことくらいしか考えてなかったのだ。
 当時の私の思考は桃太郎で言うところの超序盤『川へ洗濯に』のところで止まっていたようだ。





「ところで前々から一つ疑問なんだが、何だってお前さんこの村にそこまで肩入れするんだ? お前さん、この村のほとんどの村人と全然違う種族だろ? 肌の色もどちらかと言えばワシらに近いし。この村で肌の色で判断するならフレハルとかの方が近い気がするが……」

 とんでもない……彼らの正体を知らない人からはそう見えるかもしれないけど、トロルとレッドドラゴンを比べるなら、どちらかと言えばトロルの方が近い生態ですよ。

「う~ん……肩入れの理由……特に理由は無いですね。一人寂しくこの場所へ転生させられて、話す相手が無かったところ、たまたま近くにあったのがこの村だっただけで」
「話し相手なら数日に一回来る亡者じゃダメなのか?」
「あの方々、地獄で刑罰を受けに行く方々なので、私のわがままで留めておくわけにはいきません。あとあの方々しゃべれるような意思が無いので、話しかけても無反応なんですよ」

 オルシンジテンの話だと、突然意思を取り戻すことがあるらしいけど、個人差があるらしくて、いつ取り戻すかもわからないしね。

「へぇ~、そうなのか。うちの系列店にいる亡者はよくしゃべるやつなんだけどな」
 亡者雇ってるんだ……よくしゃべるって言うと、詐欺で地獄行った人とかかな?

「ケルベロスとかは?」
「犬が話し相手になりますか?」
「癒しにはなるな。可愛いじゃないか」
「寂しさは変わらないじゃないですか!」
 私から見ればケルベロスでは、でか過ぎて癒しにもならないし……

「私がここに居る理由は、たまたま近くにあった村で、たまたま私が頭を良くする魔法が使えて、コミュニケーションできるようになってなぜか領主に祀り上げられて、村の発展に寄与することになって、関わる内に徐々に愛着が湧いてきたからって感じですかね」
「なるほど、全部たまたまだったんだな」
「あと、話してみるとここの亜人ひとたちが良い人が多かったってのが大きいですね。これがもし悪人ばかりだったらとっくに見切りを付けて、別の土地へ移ってます」
「それもそうだな。確かに良いやつが多いってのは納得できるよ」
「今思えば、領主に祀り上げられたのが一番大きいかもしれません。私、こう見えて責任感は強い性格ですので」
「一度領主に就いたからには途中で投げ出したくないってわけだな」
「そうですね」
「さて、そろそろおしゃべりも終わりにして、橋をどうするか考えるか」

「あ、そうだ土魔法って、石も作れるから石の橋はどうでしょう?」
 土魔法の中の石系統で、一枚岩で橋になるように作ってみる。

「こりゃ凄いな、土魔法で小石を作れるやつはそれなりにいるが、石橋まで作れるやつは中々いないぞ。ただな――」
 そう言うと、今作った石橋に飛び乗った。

「一件頑丈そうに見えるが、う~ん……」
 何だろう? 何か探してるような手触りね。

「ああ、ここだな、危ないからちょっと離れておけ」
 そう言うと、キリとハンマーで一点を打ち付け、すぐに橋の上から離脱した。

「見てろ」

 ガララ……
 ゴゴオオォォォオオオン!!!

 石で出来た橋が一瞬で崩落!?

「ええぇぇ!? ど、どういうことですか!? 何したんですか!?」
 私、しっかり頑丈になるようにイメージしたはずよね!?
 細部までイメージしなくても強固になるように、一枚岩の橋にしたのに……
 いくらイメージの仕方次第で品質が変わる魔法って言ったって、巨石を一撃で破壊するなんて……

「一番弱いポイントを探し出して、そこにダメージを与えた。巨大な一枚岩なら亀裂も無いから大丈夫そうに見えていても、内部にはダメージがあったりするから、一番弱いポイントにダメージを与えてやれば一瞬で崩壊させることが可能なんだよ」
「そ、そんなの見てわかるものなんですか!?」
「ドワーフの熟練者には分かるヤツは結構いるな。まあ人間だと寿命が短すぎてそこに到達できるヤツなんか稀だけどな。お前さんももし石で家を作ることがあるなら注意しておけ」

 確かに生前、武術の達人なら頑丈なものでも、最も弱い一点を攻撃することで簡単に崩すことができるって話を漫画やアニメで聞いたことくらいはある。
 最も弱い一点なんて見て分かるものじゃないと思ってたし、そんなことできる人間を見たことがないから、正直眉唾物まゆつばものとしか思ってなかった。むしろ「そんなわけないじゃ~ん」ぐらいに考えてたのに……
 まさか本当に一点を攻撃しただけで頑丈な石橋が崩されるなんて……

「でも、そんなこと出来る人はほとんどいませんし、この石橋でも良いんじゃ……?」
「まあ、そうかもしれん。だがもし偶然弱点に何かが当たって崩落した場合はどうする? その時に上を渡っている者がいるかもしれんし、下で水遊びしてる者がいるかもしれん。リスクは極力排除しておいた方が良い」
「確かに……そうですね……」

「俺はそろそろアクアリヴィアから帰って来いってお呼び出しがかかったから、もうこちらにいられる時間も少ない」
「え!? 呼び出し!? もう帰っちゃうんですか!?」
「まあ、一線を退いているとは言え、引退はしてないし、今は統括責任者だからな。息子に任せてはいるが三ヶ月近くここにいるから、そろそろ呼び戻されると思ってたよ」
「そうなんですか……」
「石の橋を作るなら、魔法で一枚岩にせず、リスク分散のためにアーチ状に石を積んでいくのが無難だろうな。そうだなぁ……村全体の橋を作るのも大分時間がかかるだろうから、まずはお前さんが樹魔法で仮橋を村中に作って、徐々に石橋に変えて行くようにすると良いかもな。全部完成するまでワシがここに居ることはできないが、石橋の作り方はトロルたちに教えて込んで行くし、ワシの孫弟子はそのまま残るから、徐々に交換していってくれ」
「わかりました。それで、あとどれくらい居られるんですか?」
「そうだなぁ~……川が開通したら帰ろうと思う。このペースなら今月か来月初旬くらいには完成させられるだろう」
「そうですか……お別れするのは残念です。何も無かったトロル村に、これだけ大規模な川を作ってくれたことに感謝します」
「ああ、ワシもここで生活して中々楽しかったよ。ああ、そうだ、すまんがさっき壊した石橋の瓦礫は、邪魔になるから片付けてくれ」

 石橋の瓦礫は土魔法で更に砕いて川石として利用することにした。
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