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第7章 川完成編

第158話 スライムによる水浄化実験 その1

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 というわけで、アクアリヴィアの地下水道へやって来た。
 以前浄化したスライムが、浄水機能を持っているから、あれを捕まえて実験してみて、ドワーフの方々に大丈夫だと判断されたら、これを使った浄水場や下水処理場を作ってもらおうと思う。
      (第74話参照)

「この地下水路、以前来た時より目に見えて綺麗になってる。浄化したスライムの効果かしら? あ、いたいた」
 目的のスライムはすぐに見つかった。
 常に清潔を保つように作り変えたから、綺麗な透明を保っている。とりあえずの実験用に一匹捕まえよう。

 捕えにくいな……手で持ち上げようとすると、身体の形が変わってスルリと抜け落ちる。
 ゴムと水を足して二で割ったような感触だから、掴んだ状態で保ってられない。
 ちょっとばかり冷やして固まってもらおう。
 カチコチにすると死んでしまう可能性があるから、少し硬め程度に留めて凍らせる。
 とりあえず時間の流れの無い亜空間収納ポケットに放り込みゲートで帰還。






 帰ってきて、ドワーフ四人と合流。

「これが目的の生物か?」
「ワシらが知ってるものとは少しだけ透明度が違うが……ただのスライムじゃないのか?」
「これ、実は私が作り変えた非常に浄化能力が高い個体なんです」
「作り変えた!? あんたそんなことも出来るのか!?」
「これ、ヘパイトスさんの孫のヒノモトくんが捕まってたスライムの組織を変異させたものの仲間なんですよ」
「本当か!? 何人も亜人ひとを食ってるって聞いたぞ!? そんなの連れて来て危なくないのか!?」
      (第72~73話参照)

「これはもう亜人を食べない生態に変化させたので大丈夫です。更に浄化能力を高めて、濁らないようになってるので、常に透明な身体を保ちます。そこでスライムこの子に水の浄化をしてもらおうと思って捕まえてきました」
「なるほど、確かにスライムは浄化能力があるらしいからな。しかもそれをパワーアップさせたものなら尚更」
「ただ……私も水を浄化しているところを実際に見たことがないので、ここで実験して、ヘパイトスさんたちが大丈夫と判断されたなら、このスライムを基点とした浄水場や下水処理場の建設をお願いしたいと思います」
「そいつの浄化能力次第ってわけだな」
「はい。もしこのスライムの浄化能力が飛び抜けている場合は、浄化行程を大幅に短縮できると思います。じゃあ実験してみましょう」

 スライムを大きめの水槽に入れ、その中に泥水を流し込む。

「こんな真っ茶色な液体が透明になるんですかね?」
「待て! もう色が変わってきてる!」

 泥水を入れて数十秒、もうかなり土色が薄くなっている。

「こ、ここまで浄化能力が高いのか……これは今後も何かに活かせそうだな。どこで捕まえたんだ?」
「トリトナ (アクアリヴィアの首都)の地下水道で繁殖してますよ。今はもうかなりの数がこのスライムに置き換わってると思います」
「置き換わってる?」
「以前私がトリトナを訪れた時期、スライムはきっかけさえあれば亜人を食べるということが判明してしまったので、亜人を絶対に食べないように作り変え、更にそれを他のスライムに遺伝させるように変質させました。なので、今トリトナの地下水道にいるスライムはかなりの数がこのスライムになってるはずです」

 そんな話をしていると、すでに水槽の中の水は完全に透明に変わっていた。

「す、凄いな……これは微生物なんかよりよほど早いぞ。スライムってここまで浄化能力高かったんだな。今後の浄水処理業界が変わるぞ」
 いや、確かに浄水能力はあるらしいけど、以前汚物を蓄え過ぎてパンパンに膨らんだ状態を見たことがあるからここまでの浄化能力ではないんじゃないかな。
 多分私が創成魔法で組み替えたからこその、この浄化能力なんじゃないかと思う。
      (第74話参照)

「じゃあ、次は…………少しお待ちください」

 ゲートでとあるものを借りに転移。

「またどこかへ行ったな……」
「アルトラの行動は予測が付かん……」
「まあすぐ帰ってくるだろうし、少し待つか」

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 十数分後――

「どこに行ってたんだ?」
「ハンバームちゃんに調味料と調理用の赤ワインと純米酒を借りてきました。調味料は汚れが落ちにくいことで有名ですからね。これを垂らして検証してみます」

 その前にスライムを外に出して水槽の水を全部流す。
「あ、スライムその子、どっか行かないように見ててください」
 水も念入りに拭き取っておく、もしかしたら入れたものがろ過されて出てくるかもしれない。その時に水が残っていたら、今スライムから出されたものなのか、拭き残しなのか判断が付かないため。

「スライム触るの初めてだが、ツヤツヤしてて手触り良いな」
「それにひんやりしてる」
「このトロル村は暑いから日中はずっと触ってたいな」
「いっそ抱きかかえて寝たいくらいだ、がっはっは」

 おっさんたちが集団でスライム囲って触りまくっている……
 水槽の水も拭き取って準備完了。中に再びスライムを入れる。

「じゃあこれを垂らしてみます」
 醤油やケチャップ、ソースを垂らす。

「一瞬で色が消えたな……」
「下から水が出ているぞ」
「まさか、ろ過されて出て来たのか?」
 予想通り水になって出てきた。ただ……これがホントに水なのか、スライムの分泌液なのか後で検証が必要だけど……

「調味料は大丈夫そうですね。じゃあ次を――」
 ワインを垂らそうとすると――

「ちょ、ちょちょちょっと待て!!」
「何しようとしてるんだ!」
「自分が何やろうとしてるかわかってるのか!?」
「頭がおかしくなったのか!?」

 ドワーフ総出で制止された……
 いや、頭がおかしいって……そこまで言わんでも……

「赤ワインも落ちにくいことで有名ですので、これを入れようと――」
「ダメだ!」
「そんな勿体ないことを!」
「バカか! この村でまだ生産されてないんだぞ!!」
「それを垂らすなんてとんでもない!」

「じゃあ、これと同じものを購入してきますから……」
「ダメだダメだ!」
「金の問題じゃないんだ!」

「いや、でも実験しておかないと……」
「「「「ダメだ!!」」」」
 四人全員の声が合わさった。

「…………しかし、やっておかないと後々困る事態が起こり得ることもありますから……じゃあスプーン一杯で……」
「うぬぬぬ………………し、仕方ない……!」
「「「親方!!?」」」
「正気ですか!?」
「少しの犠牲は仕方ないんだ……コイツらの村の安全のためだ……涙を呑んで承諾しろ……」

 ここまで必死になる?
 ホントは四分の一くらいドバドバっとかけて、色が消えるかどうかわかったら、次はスライムが酔わないかどうかも検証したかったところだけど、反感買いそうだからスプーン一杯にしておくか。
 大さじに注いで、スライムに垂らす。
 こんな少量で実験になるのか不安だ……一緒に借りて来た純米酒の出番無いな、きっと……これも垂らしたいなんて言ったら激怒されそうだ……

「ああ……勿体ない……」
「貴重な一口が……」
 たった大さじ一杯なのに……未練がましいなぁ……しかも自分たちが飲む分ではないのに……

「あ、透明になって下から出てきましたね」
「……そうだな……」
「……ふ~ん」
「……それは良かったな……」
「……それはそれは……」
 お酒が絡むと子供みたいね……

「じゃあ、ここまでは問題無さそうなので、混入したら少し危なげなものを持ってきます。ちょっと待っててください」
 ゲートでとあるものを探しに転移。

「…………さて、ワシらはアルトラが帰ってくるまで、腰でも掛けて休んどくか」
「そうですな」
「酒でも飲むか?」
「いや、一応仕事中だから止めておけ」

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 二十数分後――
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