建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第7章 川完成編

第157話 副リーダーの通達と川の本流の完成

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 今日は先日スカウトした副リーダー候補、イチトス、ルーク、クリスティン、キャンフィールド、それとリーヴァントに役所内の一室に集まってもらった。

「おはよう、みんな」
「「「「おはようございます!」」」」
「おはようさん」

「今日みんなに集まってもらったのは他でもありません。正式に副リーダー兼副市役所長の任に就いてもらいたいと思います」
 クリスティンには旅行から帰って来た後に打診し、了承を得ている。

「あの……アルトラ様、こちらの方はどなたですか? 見覚えがが無いのですが……」
「私も見覚えがないですな」
「私も存じ上げません」
「ああ、コイツは――」
 リーヴァントが話し出そうとすると――

「俺か? 俺はキャンフィールドって言う者だ、よろしく頼む。村はずれに住んでるから知らないかもしれないな」
「失礼ながら、なぜ僕たちが認知していないこの方が副リーダーに?」
「その人リーヴァントの幼馴染なのよ。勝手知ってるから彼の補佐と言うか……愚痴聞き役をお願いしようと連れて来たの。旅行行く前までフラフラだったから相当ストレス溜まってるのかなと思って」
「いや、お恥ずかしい話ですが、ちょっと働き過ぎましたね、ハハハ……」

 あのまま一人に任せていたら、過労死してたかもしれないから、笑いごとで済んで良かった……

「リーヴァントさんの、なるほど。僕はルークと言います。よろしくお願いします」
「イチトスです」
「クリスティンです。よろしくお願いしますね」

 後で聞いた話によると、この人キャンフィールドはこの村のイベント事、ほぼ皆勤賞らしい。
 村はずれ住まいだから、中央住みの人たちはあまり知らなかっただけで。

「早速質問なんですけど、副リーダーって一体何をしたら良いんですか?」
「主に私の業務の補佐や、私が休みだったりいない時のリーダー代理をしてもらいたいと思います」
「リーヴァントにも休んでもらう日を設けたいから、休みの間は実質的なリーダーになると思う。基本的には自分で考えて、自分がこの村が良くなると思うなら、それをやってくれれば良い」
「役所務めだと、今までとはそれほど変わらないみたいですけど……」
「そうね、でもリーダー代理をやるとなると、何かを決定しなければならない時もあると思う」
「それはある程度の権限が与えられるということですか?」

 現在は家を建てるにも、役所で許可がいるなど、ある程度のルールが作られてきている。ルークが言ってる権限というのもこの辺りを指してるんじゃないかと思う。
 今後土地の問題とかもこうやって出てくるんだろうな……面倒だけど、そこに人がいる限りはルールを作らないと仕方がない。

「そうなるね。ただ、村が良くなるためと言っても何やっても良いってわけではないことは肝に銘じておいて。例えば対人で無い場合は良いとして、対人の場合は相手も納得できるような案を模索してもらうことになると思うの。要は人の為になるように動いてもらいたいってところかな」

 この辺りはちゃんと集まってルール作りをした方が良さそうね。

「あの、早速ですけど、家の周りに種を撒いて畑にしたいって相談が来てるんですけど」
 私ばかり口出すのもなんだから、リーヴァントに回答を促す。こういう場だと、どうしても私が主になりがちでいけない。

「そういうのも副リーダーとして独自に判断してもらいたいと思います。自分が良いと思えば許可出して構いません。作られたら多くの人に迷惑がかかると思うなら相手が納得するように、なぜダメなのかを説明する必要があります」
「わかりました」

「キャンフィールド、あなたにはリーヴァントの補佐に付いてもらいます」
「補佐と言うか愚痴聞き役だろ?」
「まあ、そうとも言うわね。何とかストレスのはけ口になってあげて」
「了解した」

 こうして、簡単であるが、副リーダーの就任の通達は終わった。
 後日、月一の集会にて、副リーダーに就いた旨を村全体に知らせた。






 そして長く続いたかに思える川工事は、というと。
 そろそろ完成も近くなってきた。

「よし、あとは掘り進めて、あちらの川と合流させてしまおう」

 あちらの川というのは、以前カトブレパスを見つけた川のこと。
 川の整備のために、繋げるのをしばらくストップさせていた場所だ。
      (第31話、第98話参照)
 残りを掘削して二つの川を繋げた。少しだけこちらに水が侵入してきたが、既にコンクリートで固めてあるから特に問題は無い。

「よし! 完成だ!」
「「「うおおぉぉぉぉ~~!!」」」
「これで村に川が通るんだな!」
「水汲みもしなくて良くなるかもな」

 川が繋がってみんな大興奮。しかし、すぐにそれを掻き消す一言がヘパイトスさんから発せられた。

「いやいや、待て待て! まだ本流が出来ただけに過ぎない。これだけでは川を利用することはできないぞ?」
「「「えっ?」」」
「どういうことですか?」
「我々のやってきたことは無駄ですか?」

 みんなポカーン状態。

「まあ、そう心配するな。ここまでの工程だって絶対必須なことだ。無駄じゃない。ここからは村内への供給路を作らないといけない」






 そしてここから村内への供給路が作られ始めた。
 まずは、村を囲っている壁の一部を壊して、供給路のベースとなるように村の中を掘削していく。
 野生の獣もここから侵入できるようになってしまうから、後々ここにも見張りを立てる必要があるわね。
 あと供給路は村中を横切るから橋も必要になってくる。
 外の畑へ水を供給するための水路も作らないといけない。あと、これから作ろうと思っている田んぼ。これは絶対に水が必要不可欠だから。先に田んぼのベースを作っておくか。

「はぁ~……終わりかと思ったら、まだまだこの掘削作業続くんスね……」
「まあ、もう三分の二は終わったから、あとひと踏ん張りだ」
「本流完成したのに、まだ三分の一もあるんスか!?」

 村の中に浄水場と下水処理場を作ってもらう必要もあるよね……
 どちらも人間界なら、沈殿池やらろ過池やら反応槽やらに加え、薬剤や微生物なんかが必要らしいけど……私には何が何やら……

 そんなことを考えてたらヘパイトスさんが声をかけてくる。
「よおアルトラ、浄水場や下水処理場は俺たちで勝手に作るが良いな? 説明してもわからんだろ?」
「あ、ちょっと待ってください。それについては少しアテがあるので実験してから判断してもらいたいと思います」
「あんたが作るのか?」
「いえ、正直言って全くわからないので施設の建設自体はお願いします。私は今からその生物を捕獲しに行ってきます」
「まさか……生物にろ過させるのか? それは逆に汚くなるイメージしか湧かないが……」
「アテがあるので任せてください! じゃあちょっと捕まえに行ってきますね」
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