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20、主人公はダレ?

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オレの名前はリアンジュ・ラルカ・カルセッサー
わずか1歳でグアーラ王国の第一王子
ディオ13歳と婚約、12歳差だ。
父は現在の国王の弟。
故母はベルク国の元第2王女。
ソフィアでリアンジュを産んだ後、
亡くなっている(産褥死)あとは
13話目に登場人物をざっくり書いたので
さらっと目を通してほしい。
作者はおバカで記憶力もイマイチなので
よく活用しているぞ!

オレの中のリアンジュはほとんど眠っている
状態で、転生した32歳の男である。
名前は加藤杏樹(かとう あんじゅ)
"あんじゅ"と"リアンジュ"似てる名前だから
なんとかやっていけてる。
源氏名とか芸名で活動してる人は
すごいと思う。自分の本名と違うのに
もう一人の自分の名前で活動するのは、
オレにとって戸惑うことばかりだ。
異世界で両生具有という、男のモノも
小さいながらあるけれど、女のモノも
ちゃんとある不思議な身体。
毎月の生理は身体はだるく、体験するたび
女性は大変だと思う。
日本にいた頃は、両親がいたはず
なんだけどなぜか思い出せない。
小さな頃から一人でご飯を
食べたり食べなかったりだった気がする。
親戚の不動産屋を営む、夫婦には
お世話になっていたけど、まあまあ
ブラックな働き方したかも。
そして、この世界にきたきっかけ?
友人と友人の兄、憧れていた人からの
非通知の電話で誘われ、不本意だったが
回転お見合いパーティーに参加した事だ。
名前と趣味は読書と映画鑑賞です、と
趣味を偽った覚えがある。
偽ったからバチが当たったのか?
日本にいた頃はオレなりに必死に
生きていた、はず。だけど、こうなろうとか
こんな人になりたいとか、希望や夢
そんなもんはないに等しかった、と思う。
読書も映画見ることも時間がなく
携帯であらすじをチェックし
それを仕事の会話の糸口にする。
仕事人間……。
仕事に逃げてた?
ゆっくりした時間欲しかった。
柔らかな布団に包まれて、睡眠を
むさぼりたかった。それなのにオレは
わずかな睡眠削りながら、携帯チェック。
ちゃんとした布団で寝ないまま
寝落ちし、翌朝早くに出勤。
アレはしんどかった。
今はその逆で、何もする事なく
ディオ様のお部屋で、着替え、食事が
すめばまた着替え、中庭に出るとなれば
またお着替え、着せ替え人形の様な生活。
転生したのに、リアンジュの記憶を
取り込んだのに、何一つ出来てない。
不動産屋の夫婦も忙しくしていたけど
しんどそうにはしてなかった。
オレが出勤すると、オレのために
いつでも食べてもいいよと、俺だけに
飲み物やお菓子、パンが置いていた。
んっ?アレ?なんで?
なんか色々、忘れてるのか?

      ***

わざと変形させたような土地。
ここ数日、雨も降ってないのに
山からの鉄砲水。
俺たちが避難する時にチラッと見えたのは
いつも不思議な感じがする
ミニエラだった。
目深に被った帽子から見えたのは
パーラーそっくりの明るい髪色、
きつめに見えるぱっちり二重の
大きな目は、オレを見る時には
優しく感じる眼差しだった。
避難する人とは逆方向に進む人影が数人。
「みんなは?」
「アン?」
「ここに住んでる人たちは無事なの?」
ディオ様は俺が久々に話したからか
驚いた顔をしていた。
いや、周りの人も驚きすぎだろ。
「……。」
ドンドンドン。
「こら、ここはダメだ。他の部屋に。」
「お願いします、他の部屋もいっぱいで
お願いします。この子を寝かるだけでも
ダメでしょうか?。」
病気か怪我した子と母親?
ドアの外で警護の者と母親との
やりとりが続いていた。
なんとかしてあげたい。
王族と平民、身分差ある世界だけど
同じ人間なのに、なんでこんなに差が
あるんだ?元日本人として、平和な国で
夢も希望もなく虚しく生きていた。
災害があれば、募金や災害派遣など
集いボランティアもやっていた。
オレは見てるだけで、コンビニの
お釣りを災害救援の募金箱に
一回入れただけ。
偽善者だけど、大した額ではないけど
なんとなくその日は、いい事した
気分になっていた。
このままでは、前のオレの様に
何もしないまま終わってしまう。
ここにいるのが王族とは知らないだろうけど
どこかの貴族だとはわかってるはず。
ここで暮らす人のために、偽善者でもいい
何か一つ役立ちたい。

        **

この町の人たちを教会と領主邸に
避難させる様にミニエラは指示したみたい
だが、この町に来てる人たちや町民が
全員動けるわけないし、2つの建物に
収まりきれるわけない。
この客室は豪華でオリヴァー様と
護衛の者たちとディオ様と俺たちだけ
なのに寝室とリビングふた部屋ある。
10人くらいはいるのに広々した部屋。
「ここを解放して、私たちは寝室に
行きましょう。」
「……。」
「だが、警備面が……。」
「みんな困っているのに、広々した部屋で
ふんぞり返ってるのは嫌です。避難民や
怪我してる方たちを中心に、
部屋を解放してください。お願いします。」
オリヴァー様の言葉にややかぶせ気味に言った。
"別に俺はふんぞり返ってはいないぞ。"
という声や非難の目で見られてしまったが
言ってしまった言葉を取り消す事は
不可能だった。言葉のアヤだよーっという
気持ちとごめんなさいの気持ちを込めて
オリヴァー様とディオ様のキレイな
アメジストの瞳を見つめながら
オレは言葉を続けようとした。
「わかった。」
ディオ様はそう言ってオレをヒョイっと
お姫様抱っこし、寝室に……。
いや、オレ年齢的にここでは成人だが
みんながいるしって焦りはないけど、
12歳の年齢差、かなりの身長差とはいえ
痩せてるのに筋肉質なのってくらい
軽々とオレ(リアンジュ)を抱っこ、
しかもお姫様抱っこするのは
恥ずかしくてなれなかった。
「首を持っていろ。」
「……。」
ゾクッ。
耳元で囁かれた言葉。
お姫様抱っこだから、相手の首のとこに
手を回した方が安定するんだが、なぜか
違う意味にも聞こえるのはなぜだ?
死神?
いやいや、ディオ様は吸血鬼だろう?
んっ?吸血鬼って、首筋をカプって
噛んで血を飲むんだよな?
痛いよな?首、首筋だよ。
「……。」
「怖いなら、しっかりつかまれ。」
ディオ様、すみません。
怖いのはあなたです。
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