【本編完結】異世界で政略結婚したオレ?!

カヨワイさつき

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19、愛称

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「今、何時ですか?!」
「ナンジ?」
ミニエラは抱きしめられていたアントニの
腕からやっと解放されると、食いつき気味に
アントニに尋ねたのだった。
「今、お昼ですか?それとも夜?」
「あぁ、それなら君が目覚める前に教会の
鐘が鳴っていたから、お昼を過ぎたあたりかな。」
「お昼…昼……。」
「んっ?あぁ、お腹すいたのかな?
女将に頼んで持ってきてもらうから(ちょっと
待っててね。)」
アントニの言葉の途中で青ざめた表情で
部屋のドアを開けようとしたが、静電気
の様にぱちっと痛みとともに弾かれた。
ミニエラは痛む手を握りしめてドアと
アントニをにらんだ。
「ごめんね。悪い奴らから君たちを
守りたいだけさ。」
「今すぐ解放して。」
「ミニエラちゃんさ、君は何を企んでるの?」
「……。」
顔はにこにこしているのに、目が笑ってない
アントニを見て、ミニエラは深呼吸を
繰り返し自分を落ち着かせていた。
((アントニの偽名)名前が思い出せないけど
一応命の恩人?よね。口うるさいお兄ちゃんの
ようだし、公爵邸の家令補佐のアントニさんに
雰囲気がなんとなくにているから
兄(アン)ちゃんって呼ぼうかな?)
「兄(アン)ちゃん……。」
「……。」
アントニは目を見開き驚いていた。
公爵邸でのミニエラは同年代の子どもと
比べると思慮深く落ち着いている方だ。
令嬢ということであまり外出出来ないかわりに
正しく箱入り娘として扱い、かなり
甘やかされながら育つためほとんどの
貴族令嬢はわがままで、短絡的な
考えを持つものばかりだ。
あの毒親パーラーを見て育ってるからか
空気の様に存在が薄くなったり
時には、リアンジュ様を庇う位
強気に母親をにらみつけたり
どうもこちらの調子が狂う
よくわからない令嬢だった。
しかも俺のこと"アンちゃん"と呼んだ。
一瞬、アントニの名前からアンと
略した愛称かと自惚れてしまったが
そんなわけないと、自分の中に押し込んだ。
小さな頃、パーラーからムチで打たれた
傷を手当てしていた時、「あなたは
優しいのね。"アンちゃん"みたい。」
と言われた事があった。
アンちゃん、アンという女の子がいて
その子に似ていたのか?
アンという子はどうなったんだ?
まさか、パーラーの子?ミニエラの
姉君とか…同じようにムチで打たれ
まさか死にいたったのか?
それからも合間をみて、パーラーに
もう1人子どもはいなかったのか、
ミニエラと親しくした子に"アン"と
呼ばれた子どもがいなかったか
探しつづけていたのだった。
久々に聞いた"アンちゃん"どんな
子どもだったのか聞いてもいいのだろいか?
それとも、傷ついた心にまた傷を
つけてしまうからミニエラちゃんから
話してくれるのを待った方が
いいのかもしれない。
「"アンちゃん"とやらは……。」
「私にとって見守ってくれて傷の手当てとか
してくれて、こんな私に優しかったの。」
やはり過去形。
"アン"はやはり死んでしまっているのか。
アントニとミニエラの話は微妙に
すれ違っていった。
ミニエラの予想以上に驚いていた
アントニを見て"兄(あん)ちゃん"と
呼ぶのをやめようと思ったミニエラだった。

       ***

遠目に見える冒険者っぽい人や
商人たちが行き来しているなか
頑丈そうな包囲網で囲まれた一角があった。
(リアンジュお姉様だわ!!よかった
無事だったわ!!)
安堵しながらも横にピッタリと
くっつく人物をミニエラは必死に無視していた。
「……。」
チラッと見るとニコッと笑いかけてくる
アントニからは、何を思っているのか
読み取れなかった。
(リアンジュお姉様が、まぁ、ワイルドに
お肉にかぶりついたわ。あ~カメラが
欲しい。いやいややはりここはビデオだ。
スマホがあれば良かったのに。くそっ!
ここに絵師を呼んで、麗しいお姉様を
書いてもらうにも時間がかかりすぎるわ。
絵師に麗しいお姉様を描ききるのは
不可能だわ。やはりスマホがほしい。)

「あ(ちっ)。」
「リィ……アン様!!大丈夫ですか?」

(あぁ、お姉様大丈夫かしら?
串焼き肉が、熱かったのかしら。
私がそばにいればふぅふぅして
あげれたのにィー無念だわ。」

「切り分けなくても大丈夫そうだな。
まぁ全~部、毒見済みだから安心して
食べてくれ。ここのはクセもあるが
魔力回復も出来るしお気に入りの店だ。」
「……?」
(あの方はたしかオリヴァー様、
第二王子で筋肉ムキムキ。すごく
たくましくて素敵な方だわ。
まあ、リアンジュお姉様が
1番素敵だけどね。ディオ様も
素敵だけど、リアンジュ様とディオ様の
2ショットは、小説の挿し絵をコピーして
部屋に飾ったくらい大好きだったわ。
2ショット最高!!)

リアンジュ様を見るミニエラは
くるくる表情がかわり、手は時折
握りこぶしを作り笑っていた。
物陰から見ていたが、さすがディオ様
いち早くこちらに気づいていた。
【何をしている?】
【ミニエラと例の伯爵家のメイド頭と
ご令嬢を保護しました。】
【あぁ。】
アントニはミニエラが2日前冒険者登録した事、
ありえない討伐数に、ゴブリンの
作りかけの巣を1人で討伐し、伯爵令嬢と
メイド頭を助けた事など、簡潔に報告した。
【で、なぜここにいる?】
ミニエラが自分の毒親パーラーととある男が
悪だくみしているから、リアンジュ様を
助けたい事、多少の予知は出来るから
早くしないと、村や町が大変な事になる
とミニエラからの言葉を、ディオに
伝えたのだった。
器用にも表情を変えないまま、お肉を
切り分けたり、魚の串焼きを骨を
とってあけたからか、バラバラになり
ほぐしみになったものをリアンジュ様に
渡していた。
【ディオ様、その魚に別売りの塩を
ふりかけたほうがおいしく食べれますよ。】
【もう、食べている。】
【そ、そのようですね。たぶん、魔力は
多少回復しますが味ないですよ。】
しょんぼり顔でお皿を受けとり
食べてるリアンジュ様を見たディオ様。
ディオ様の柳眉がピクッとなった姿を
ミニエラとアントニは眺めていた。
ミニエラが、相変わらずコロコロと
表情を変えながら時折呟いていた。
"スマホ""2ショット""カメラ''"ビデオ"
リアンジュ様に好意を持っていそうだが
本当はディオ様に恋心を持ってるんじゃないか?
【どんな被害を想定してるんだ?】
【川やため池の地形を変形し、水害を
何度か起こしたと……。】
【……。】
魔法通話での報告途中でけたたましく
教会の鐘が鳴らされ、人の悲鳴や
逃げ惑う人の群れが出来た。

「兄(アン)ちゃん、信頼出来る人たちに
手分けして領主様の館と教会の敷地の四隅に
これを置いてほしいの。」
「これは?」
「早く。そこに人々を避難させて。
立派な建物に避難させて。ギリギリ2つの
建物分しか採掘出来なかったの。」
「君が!!」
「お願い!!早く!!」
アントニに手渡されたのは魔石を含んだ
鉱石で、今ではほとんど発掘されてない
代物だった。値段のつけようのない
貴重な鉱石。手のひらサイズの大きな
鉱石一つで、平民の家族4人が10年~15年は
楽に暮らせるほど価値あるものだった。
その鉱石が8つもある事に、アントニでさえ
手渡された袋を持つ手が震えるほどだった。

リアンジュとディオ達は領主邸に向かう様で
アントニはディオ様と魔法通話しながら
オリヴァー様にミニエラから預かった
鉱石を渡した。
領主邸と教会の分をわけ、敷地内の四隅に
そっと埋められた。
土魔法を使う気か?
水を防ぐための土壁だとしても魔法の使い手
だとしても、せいぜい幼児の背丈程度で
魔力がなくなるだろう。
ましてや教会や領主邸を囲む程の土壁を
作るには相当数の、土魔法の使い手がいる。
土魔法が使える人を集めなければ!!

ディオは影と護衛たちに命じて
リアンジュを優先して避難させ
村や町の人を領主邸か教会に
避難させるよう誘導させた。
人々が逃げ惑いながら避難し始めた頃
山の方からは、恐ろしい音をたてながら
水の流れる音とともに、鉄砲水から
逃れるためなのか魔物たちまで
村や町になだれ込んできた。
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