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18、シセン

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魔の森の西側で狼煙(のろし)が上がりました。

*アントニ*
27歳、公爵邸の家令補佐。
変装が得意。
ディオの乳兄弟で公爵邸の内部から
見張っているうちの1人。

冒険者ギルドに持たされた知らせより
半刻前(約1時間)アントニは魔の森に
入っていた。
アントニは3名を保護した。
ミニエラと思える女性と行方知れずに
なっていたとある伯爵家のメイド頭と
男の子の服を着せられている伯爵令嬢。
この伯爵令嬢は男として育てられていたが
あまりにも女顔だったため、伯爵夫人と
参加した同格のお茶会先で子どもは
からかわられ軽く押された拍子に
よろけてしまいポットのお茶を
かぶってしまったのだった。
とっさに夫人が庇ったおかげで子どもは
肩から手にかけて軽いやけどを 
おった程度ですんだ。
念のため服を着替えることになり
別室に行き着替えていた。
お茶をかけてしまった事をあやまろうと
その家の息子が入室してきたが
伯爵令嬢は着替えていたため
ほぼ衣服を身につけていなかった。
それがきっかけで、性別がバレ
求婚が殺到した。
しばらく騒ぎがおさまるまで
信頼おけるメイドの生家で
匿ってもらおうとしたが、不運が重なり
移動中の乗合馬車が魔物の襲来に合ったのだった。
男は殺され、女は連れ拐われた。
ギルドに乗り合い馬車が襲われたと
連絡が入っていたがほぼ同時刻に
連絡が入った騎士団では、平民の
乗り合い馬車だからと、後回しにし
騎士団が動き出したのは
かなり遅れてからだった。
ギルドの者たちが魔物に襲われた馬車と
殺された男たちの特定し遺品整理がほぼ終えた頃
遅れてきた騎士団に仕事を奪われる形で
退去を命じられたのだった。
相手は貴族の騎士団だから揉めたくない
ギルド所員たちはしぶしぶ、その場を
後にしたのだった。

      ***

コッチノ町

王都から一刻(約2時間)にあるコッチノ町。
シャワー付きのやや高めの宿に
衰弱した女性と小さな子どもが
寝ており、ミニエラと正直に名乗った
髪を無惨にも切られた少女がいた。
アントニは必死に男の子を演じる
ミニエラが哀れに思えてきた。
悪い噂が絶えないパーラーの娘、
ミニエラ。
公爵邸に内偵する為派遣され、家令の
セバスチャンの協力のもと
パーラーとその娘ミニエラを見張っていた。
パーラーは噂通り毒親であったが
その娘であるミニエラには驚かされる
行動ばかりとっていた。
人形のように美しいリアンジュ様を
パーラーがイジメようとしたとき
ミニエラが止めに入り、何度かミニエラが
母親に打たれているのを見かけた事があった。
すぐに止めに入ったが、腕や背中には
ムチで打たれた後や火傷の跡もあった。
こんなに傷付きながらもなぜ
ミニエラはリアンジュ様を庇うんだろうか?
何か見返りを求めているのか?
そう思っていたが、今回も目覚めた
ミニエラから聞かされた内容に
驚かされたのだった。

パーラーととある男(マルク)が
悪だくみをし、いくつかの村や町に損害を
与えようとしている。
数年前のアッチ村とソチラ町の水害も
たぶんパーラーととある男(マルク)が
起こした事だと言ってきた。
認識阻害で公爵邸にいた家令補佐の
アントニとは別人と思わせてるはずなのに
偽名を名乗ったにもかかわらず
俺の偽名を口にしないミニエラ。
君は何者なんだ?
「ミニエラ、僕の名前覚えてる?」
「えっ、えぇ、えーっと。」
目を泳がせて思い出そうとするミニエラに
クスッと笑ってしまった。
「思い出すまで、君の話を聞かせて欲しい。」
ほんの少しイタズラ思いついた時の
楽しい気持ちになってしまった。
「ごめんなさい。ぼーっとしてしまい
覚えていないの。ごめんなさい、
宜しければもう一度のお名前を
教えて頂けない、でしょうか?」
ミニエラは、途中で気づいたのか
男の子のフリしているのに、無意識に
女の言葉を使っている事に
気づいたのだった。
俺はニコっとし、気づかない振りをした。
女言葉もだけど、庶民にしては綺麗すぎる
丁寧語が私は貴族です!て言うてるのと
同じだよミニエラちゃん。
あぶなっかしい子だよ、君は。
「これからどおするんだ?」
「……!!」
「わた、ぼ、僕たちはどのくらい
眠ってたんですか?」
「ほんの2刻(約4時間)ほどだよ。」
「えっ?でもここは、王都近くの
コッチノ町ですよね?」
「そうだよ。」
「わた、ボクがいたのが(王都から馬車で
2日の距離)ドコーノ村だったはず。
なんで?まさか瞬間移動?」
「……ミニエラちゃん?」
脳内思考ダダ漏れだよミニエラちゃん。
それに俺、はるか昔の賢者様が使えた
瞬間移動とか使えないよ。
影の者たちと協力して、馬に身体力強化と
馬と馬車に風魔法を付与して
僅かながらに馬車を浮かして
ドコーノ村からコッチノ町まで
まさに飛ぶように来たんだよ。
腕のいい医師に見せたんだよ。
ミニエラちゃんと女性は
魔力切れをおこしており、3人とも
精神的からくる疲労と、軽い栄養失調を
おこしていた。
ミニエラが倒した魔物は、ゴブリンアーチャ、
ゴブリンナイト、ゴブリンであとわずかに
遅れればキングとクイーンも誕生していた。
見た感じ数百匹はいたはずなのに
1人で倒したという事に驚きを隠せなかった。
驚いていると、「信じてないでしょ。」と
顔をプクッと膨らませていた。
首から下げられた、Fランクのプレートの
魔石に触れると討伐したゴブリンたちの数が
しるされていた。
角うさぎ2匹、スライム6体、スライム変異種1体
ボア一頭、ゴブリン253匹、ゴブリンアーチャ1匹
ゴブリンナイト2匹、その他にも
小型の魔物がチラホラ記されていた。
登録したのは2日前だよな?!
しかも公爵邸ではド派手なドレスを
身につけて贅沢暮らししていた
ご令嬢様が冒険者?!
しかもズボン履いて髪も……。
「髪の毛が短いな。」
誰かに襲われて切られたのか?
さぞ辛い思いをしたんだな。
精神的からくる疲労。
栄養面ならこれから徐々に食べれる
だろうけど、精神面を治すのは
なかなか難しいだろう。
アントニがミニエラに対して
憐れみの視線を送っていた。
「あっこれ?自分でナイフで切ったんだけど
ボサボサだからやっぱ変だよね。」
「自分で?」
「そう、自分で。長くて邪魔だったから
切ったんだけど、予想以上に高く
買取りしてくれたし運が良かったよ。」
「……そっか、そうなのか。」
「うあぁ、えっ?えぇ。」
アントニはミニエラを抱き寄せ
しばらくの間、背中や頭をなでていたのだった。

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