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嫌な予感
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グラナー先輩という先輩に連れられてやってきたのは武器庫の裏。武器庫は騎士団共通の倉庫だからめっちゃでかい。その分影で死角になっている部分も広く、しかも19時以降は人通りも殆どない。
こんなところまでやってきて、何を話すつもりなのか。少なくとも、大勢の前では話せないもの、つまり後ろめたさがあるような話であることは間違いないだろう。
「この辺でいいかな」
「グラナー先輩。こんなところまで来ていったい何の用ですか?」
「いや、そんな重い話じゃないんだけどね…ライちゃんは、月桂樹の遣いなのかい?」
「…は、月桂樹の遣い、ですか?」
「いや、違うなら大丈夫なんだ。わざわざごめんね」
月桂樹の遣い、一体何なんだそれは。…少しでも情報を集めるか。
立ち去ろうとするグラナー先輩の腕を掴む。
「月桂樹の遣い?というのは分かりませんが、月桂樹の遣い?を探しているのですか?何か手伝えることがあれば手伝いますよ」
「いやいや、これは僕の問題だから大丈夫だよ。ありがとね。それと、一つ忠告しておくよ。月桂樹の遣いに会ったら一目散に逃げることをお勧めする。あいつらは、人の常識が欠落してるから」
そう言って先輩は立ち去った。
止めようと思ったが、声をかけようとした瞬間、金縛りのように声が出なくなった。背中を冷や汗が流れる。
今声をかけたら確実に殺される。そんな雰囲気を纏ったグラナー先輩に声をかけるなど出来なかった。
グラナー先輩が視界から消えてしばらくした後、ようやく息を吐いた。体が極度の緊張状態にあり、無意識に息を止めていたのだ。手足が震えているのが分かる。
恐怖。この短時間でこの言葉が頭を支配した。
「…戻ろう」
この事を班長に報告するか迷った。
というのも、私とグラナー先輩は普通に話しただけだ。正直言って、恐怖を感じたのだって、私が勝手に恐怖を感じたのであって、グラナー先輩が何かしてきたわけでもない。
ただ班長達には、前回の一件でどんな些細なことでも報告しろ、と言われている。どうするか…
取り敢えず、カール班長には伝えておくか。今の時間だと…食堂かな?丁度私もご飯食べないとだし、報告ついでにご飯食べるか。
食堂に向かうと人がまばらにいる位で、いつもより空いていた。これならいつもこの時間に来とけばよかったな、なんて思いながら食堂の人に定食を頼み、待っている間にカール班長を探す。
同じ種族同士ということもあり、広い食堂でもすぐに見つかった。いつもより空いているが、それでも八十人ぐらいはいる。まあ、いつもは二百人ぐらいいるんだけどね。
カール班長は他の班長といるようで、三人程で集まって談笑していた。あの中に入っていくのは、勇気がいるな…なんて思いながら定食を貰う。
すると、私の視線に気がついたのか、カール班長がこちらに向かって手招きしてくる。
「よお!今日一日どうだった?いつもやっている訓練とは大分違っただろ?」
「お話し中すみません。そうですね、色々学ぶこともあり、とても勉強になりました」
「だろ?しかも、第3班のやつらにも結構影響与えるから一石二鳥なんだよ。他の班の奴らもやればいいのにな」
「なに言ってんだよカール。あれは第1班の奴らが来るからこそ影響与えるんだろうが。はっきり言って第1班のやつらは異常だからな?強すぎるんだよ」
「ラインハルトの言う通りです。他の班でやったとしても、一石二鳥にはならないです。最悪な場合、班同士で喧嘩なんてこともありえます」
「やっぱり?圧倒的実力差があるからこそ成り立つんだよな~…と言うか、第1班が異常とか言ってるけど、お前らも元々は第1班の班員だったじゃねぇか」
「それとこれはまた別です」
「そうだそうだ~」
カール班長と話していたのはラインハルト班長と第5班班長のラズ班長、だった。
「それで?わざわざこっちに目線やってたってことは何か話でもあんのか?」
「えっと…ここじゃなんなので、隅の方でもいいですか?」
ここは食堂のど真ん中。ここで話して誰かに聴かれたらまずい。たださえ獣人は耳がいいんだ。騎士なんて五割は獣人って言われてるぐらいだから、いつどこで誰に聴かれてるか、常に警戒しとかないといけない。
私の歯切れの悪さに真剣な話だと分かったのか、三人はさっきの穏やかな表情とな一変して、騎士の顔つきになった。
隅の方に移動して防音の壁を作る。風魔法Lv.8
「隔てろ 遮断しろ サウンド·フローフリング」
「…ここまでするのか」
「一応ということもありますので」
「それもそうか。で?どうした」
思い出すだけで恐怖で体が固まるが、それでも説明するため口を開く。
「実は…」
接触した時間は短かったため、説明はすぐに終わった。説明が終わった後、班長達を見ると、何か考え込んでいるようだ。声をかけるのも気が引けるので、ゆっくりと待つことにした。
どうせ私が班長達みたいに考えても、なにも浮かばないだろうし。まあでも、月桂樹の遣い、っていうのは気になるよな。
遣いってことはそれの上がいるってこと。単語的にそれは月桂樹だろう。それで、グラナー先輩は月桂樹の遣いが来るのを待ってるって言ってたよね…
だめだ。全くわからん。
取り敢えず、班長達が結論を導き出すまでは頑張って考えてみますか
こんなところまでやってきて、何を話すつもりなのか。少なくとも、大勢の前では話せないもの、つまり後ろめたさがあるような話であることは間違いないだろう。
「この辺でいいかな」
「グラナー先輩。こんなところまで来ていったい何の用ですか?」
「いや、そんな重い話じゃないんだけどね…ライちゃんは、月桂樹の遣いなのかい?」
「…は、月桂樹の遣い、ですか?」
「いや、違うなら大丈夫なんだ。わざわざごめんね」
月桂樹の遣い、一体何なんだそれは。…少しでも情報を集めるか。
立ち去ろうとするグラナー先輩の腕を掴む。
「月桂樹の遣い?というのは分かりませんが、月桂樹の遣い?を探しているのですか?何か手伝えることがあれば手伝いますよ」
「いやいや、これは僕の問題だから大丈夫だよ。ありがとね。それと、一つ忠告しておくよ。月桂樹の遣いに会ったら一目散に逃げることをお勧めする。あいつらは、人の常識が欠落してるから」
そう言って先輩は立ち去った。
止めようと思ったが、声をかけようとした瞬間、金縛りのように声が出なくなった。背中を冷や汗が流れる。
今声をかけたら確実に殺される。そんな雰囲気を纏ったグラナー先輩に声をかけるなど出来なかった。
グラナー先輩が視界から消えてしばらくした後、ようやく息を吐いた。体が極度の緊張状態にあり、無意識に息を止めていたのだ。手足が震えているのが分かる。
恐怖。この短時間でこの言葉が頭を支配した。
「…戻ろう」
この事を班長に報告するか迷った。
というのも、私とグラナー先輩は普通に話しただけだ。正直言って、恐怖を感じたのだって、私が勝手に恐怖を感じたのであって、グラナー先輩が何かしてきたわけでもない。
ただ班長達には、前回の一件でどんな些細なことでも報告しろ、と言われている。どうするか…
取り敢えず、カール班長には伝えておくか。今の時間だと…食堂かな?丁度私もご飯食べないとだし、報告ついでにご飯食べるか。
食堂に向かうと人がまばらにいる位で、いつもより空いていた。これならいつもこの時間に来とけばよかったな、なんて思いながら食堂の人に定食を頼み、待っている間にカール班長を探す。
同じ種族同士ということもあり、広い食堂でもすぐに見つかった。いつもより空いているが、それでも八十人ぐらいはいる。まあ、いつもは二百人ぐらいいるんだけどね。
カール班長は他の班長といるようで、三人程で集まって談笑していた。あの中に入っていくのは、勇気がいるな…なんて思いながら定食を貰う。
すると、私の視線に気がついたのか、カール班長がこちらに向かって手招きしてくる。
「よお!今日一日どうだった?いつもやっている訓練とは大分違っただろ?」
「お話し中すみません。そうですね、色々学ぶこともあり、とても勉強になりました」
「だろ?しかも、第3班のやつらにも結構影響与えるから一石二鳥なんだよ。他の班の奴らもやればいいのにな」
「なに言ってんだよカール。あれは第1班の奴らが来るからこそ影響与えるんだろうが。はっきり言って第1班のやつらは異常だからな?強すぎるんだよ」
「ラインハルトの言う通りです。他の班でやったとしても、一石二鳥にはならないです。最悪な場合、班同士で喧嘩なんてこともありえます」
「やっぱり?圧倒的実力差があるからこそ成り立つんだよな~…と言うか、第1班が異常とか言ってるけど、お前らも元々は第1班の班員だったじゃねぇか」
「それとこれはまた別です」
「そうだそうだ~」
カール班長と話していたのはラインハルト班長と第5班班長のラズ班長、だった。
「それで?わざわざこっちに目線やってたってことは何か話でもあんのか?」
「えっと…ここじゃなんなので、隅の方でもいいですか?」
ここは食堂のど真ん中。ここで話して誰かに聴かれたらまずい。たださえ獣人は耳がいいんだ。騎士なんて五割は獣人って言われてるぐらいだから、いつどこで誰に聴かれてるか、常に警戒しとかないといけない。
私の歯切れの悪さに真剣な話だと分かったのか、三人はさっきの穏やかな表情とな一変して、騎士の顔つきになった。
隅の方に移動して防音の壁を作る。風魔法Lv.8
「隔てろ 遮断しろ サウンド·フローフリング」
「…ここまでするのか」
「一応ということもありますので」
「それもそうか。で?どうした」
思い出すだけで恐怖で体が固まるが、それでも説明するため口を開く。
「実は…」
接触した時間は短かったため、説明はすぐに終わった。説明が終わった後、班長達を見ると、何か考え込んでいるようだ。声をかけるのも気が引けるので、ゆっくりと待つことにした。
どうせ私が班長達みたいに考えても、なにも浮かばないだろうし。まあでも、月桂樹の遣い、っていうのは気になるよな。
遣いってことはそれの上がいるってこと。単語的にそれは月桂樹だろう。それで、グラナー先輩は月桂樹の遣いが来るのを待ってるって言ってたよね…
だめだ。全くわからん。
取り敢えず、班長達が結論を導き出すまでは頑張って考えてみますか
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