奴隷少女は騎士となる

灰色の街。

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行方不明事件⑧

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先へ先へと進むこと10分。
馬からはとっくに降りて、自分の足で進んでいく。足場はどんどん悪くなっていくし、魔物の気配だって強くなっている。早いところ班長達を見つけないといけない。
その前にもうひと悶着ありそうだけど。

背後に数十名の気配を察知する。咄嗟に前に飛ぶと、背後で大きな音がした。
そこには武器をもち、武装した男達がいた。人間もいれば獣人もいる。流石に魔族はいないみたいだけど。
先程の人達とは比べ物にならない程強い。

「これが本命、ってことですか。厄介なことをしてくれますね」

「くくっ厄介な存在であれたことを嬉しく思うぜ。第1班所属のライさん?」

「!」

「ほう、表情は変わらないのに感情の起伏はわかりやすい。あの人のいった通りだな。面白い」

あの人ってことは誰か情報提供者、つまり……裏切り者がいる、ってことか?だって騎士団内部の情報は国家機密。その中でも新人の情報は王家と騎士団団員しか知らないぐらい。そのくらい騎士団では新人を大切に、そして厳しく育てているってことなんだけど。
私はまだ入団して一年未満。しかも一番情報が漏れにくい第1班にいる。そんな私のことをさも聞いたことあるように言えるってことは、誰かが裏切っている可能性が高い。
でも……いや、考えるのは後にしよう。こいつらは強いんだ。隙を見せている暇はない。

「切り替えが早いんだな。流石、第1班所属なだけある」

こいつに全ての思考を読まれているようで怖い。しっかりしろ、そう体に言い聞かせ、使わないと思っていた鎌を手に取る。この辺はさっきみたいに開けたところではないし、足場も悪い。鎌なんて使ったらその辺の木々はあっという間に切り倒れると思って使うつもりはなかったが、こいつらは本気出さないといけないぐらい強い。魔法を使っても勝てる可能性は五分五分だ。

「さて、始めるか」

その言葉と同時にその場にいる全員が殺気を出す。それだけで察する。これは無傷では帰れないやつだ。少なくとも骨折、打撲、多量出血は覚悟しないと。

覚悟を決めた瞬間、図ったように襲ってくる。鎌で受け止めるが、一撃が重い。しかも、土魔法の上位魔術、土石魔術を使って私の立ってる足場を悪くするというのも追加で。私が動けないでいる間にも次々と襲いかかってくる。

「っ!」

こちらも空間魔術や雷鳴魔術を使ったりとなんとか防ぐが、全部は防ぎきれない。何人かの攻撃が肩や腕に入る。致命傷は避けれたが、このまま戦うのはまずい。せめて足が動かせるようになれば……でもそんな魔術あったっけ……いや、これならいけるか?でもそうなると辺り一面の被害が……そんなこと言ってられない。今も攻撃の雨は止まないんだ。そんなこと言っている暇はない。

「轟かせ 吹き飛ばせ トルネード·ウィン」
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