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第四章
7.喉が乾く【2】
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あっという間にヴォルの部屋に到着してしまい、エスコートされてた私は寝室の方へ共に向かいました。
「気分が悪いのか?」
「……いいえ」
「頭が痛いとか?」
「……いいえ、何処も痛くないです」
ベッドの端へ腰掛けた私に、ヴォルが色々と問い掛けて来ます。お医者様みたいでした。
「昼もあまり食べていなかったようだが」
眉根を寄せたヴォルです。
う──そう言えば当たり前ながら、ガルシアさんに見られていました。
今日のお昼はヴォルと別で食べたのですよね。彼が研究室に籠ると、良くそういう事があるのです。
「えっと……今日は頭も使っていないからか、お腹が空かなくてですね……」
「……そうか。風呂は?」
「い、いらないです。私、先に寝ますね」
質問に答える事が限界になってきました。──もう、答える度に悪い方へ転がっていっているようです。
そのまま私は、逃げるように布団の中へ潜り込みました。
うぅ……、布団越しにヴォルの視線を感じます。
「気分が悪くなったのなら言え。俺も風呂に入ったらこのまま寝る」
それだけ告げて──たぶんお風呂に入る為、ヴォルは部屋を出ていきました。
このまま夕食も終わりにしてしまうのですね。──いえ、私のせいですけど。食材さん、ごめんなさい。
──はぁ……私、何してるのでしょう。
布団に頭まで包まれたまま、今日の研究室での事を思い返します。
温度差があるようだな、とヴォルが言いました。想いに……温度差がある、と。
あれはいったいどういう意味なのでしょう。『想い』──それは私がヴォルが好きだという事ですね。これはもう、誤魔化しようのない感情です。
でもヴォルは、それが違うと言いました。男女差?個人差?それとも……、経験の差?
もしこれだとしたら、今の私にはどうしょうもない事なのですけど。
「また……心配を掛けてしまいました」
布団の中で呟きました。
いつも私の事を気に掛けてくれるヴォルです。あの優しさに応えたいと思いながらも、その方法が分からないという未熟な私でした。
情けないですね。こんなでは、飽きられてしまいますよ。
──飽きられて……?
ヴォルが優しいのは、元々の彼の性格なのでしょう。もしかしたら既に私の事なんか飽きてしまっていて、それでも彼は優しいから傍にいてくれているだけなのではないでしょうか。
「私は…………」
どうしたら良いのでしょうか。
彼の負担にはなりたくないです。これは絶対。それならどうすれば──、何をすれば良いのでしょう。
けれど私に出来る事なんて、何もないです。何も……。
「……メル?」
声を掛けるが、返答がない。
部屋に戻ってみると、既に彼女は深い眠りの中にいるようだった。──だが。
手を伸ばして、躊躇した。泣いていたのだ。いや、本人は眠っている。無意識の涙か?
深呼吸をしてから、彼女の濡れた頬に触れる。
一瞬彼女はピクリと反応したものの、覚醒には至らないようだ。
俺が泣かしたのか……?
そう思い至った時、ザワリとした感覚が身体を走った。──何だ、これは。
守りたいのに……、無性に壊したくなる。
相反する感情に自分でも驚き、だがしかしこのまま彼女を壊してしまいそうな恐怖にも捕らわれそうだった。
「気分が悪いのか?」
「……いいえ」
「頭が痛いとか?」
「……いいえ、何処も痛くないです」
ベッドの端へ腰掛けた私に、ヴォルが色々と問い掛けて来ます。お医者様みたいでした。
「昼もあまり食べていなかったようだが」
眉根を寄せたヴォルです。
う──そう言えば当たり前ながら、ガルシアさんに見られていました。
今日のお昼はヴォルと別で食べたのですよね。彼が研究室に籠ると、良くそういう事があるのです。
「えっと……今日は頭も使っていないからか、お腹が空かなくてですね……」
「……そうか。風呂は?」
「い、いらないです。私、先に寝ますね」
質問に答える事が限界になってきました。──もう、答える度に悪い方へ転がっていっているようです。
そのまま私は、逃げるように布団の中へ潜り込みました。
うぅ……、布団越しにヴォルの視線を感じます。
「気分が悪くなったのなら言え。俺も風呂に入ったらこのまま寝る」
それだけ告げて──たぶんお風呂に入る為、ヴォルは部屋を出ていきました。
このまま夕食も終わりにしてしまうのですね。──いえ、私のせいですけど。食材さん、ごめんなさい。
──はぁ……私、何してるのでしょう。
布団に頭まで包まれたまま、今日の研究室での事を思い返します。
温度差があるようだな、とヴォルが言いました。想いに……温度差がある、と。
あれはいったいどういう意味なのでしょう。『想い』──それは私がヴォルが好きだという事ですね。これはもう、誤魔化しようのない感情です。
でもヴォルは、それが違うと言いました。男女差?個人差?それとも……、経験の差?
もしこれだとしたら、今の私にはどうしょうもない事なのですけど。
「また……心配を掛けてしまいました」
布団の中で呟きました。
いつも私の事を気に掛けてくれるヴォルです。あの優しさに応えたいと思いながらも、その方法が分からないという未熟な私でした。
情けないですね。こんなでは、飽きられてしまいますよ。
──飽きられて……?
ヴォルが優しいのは、元々の彼の性格なのでしょう。もしかしたら既に私の事なんか飽きてしまっていて、それでも彼は優しいから傍にいてくれているだけなのではないでしょうか。
「私は…………」
どうしたら良いのでしょうか。
彼の負担にはなりたくないです。これは絶対。それならどうすれば──、何をすれば良いのでしょう。
けれど私に出来る事なんて、何もないです。何も……。
「……メル?」
声を掛けるが、返答がない。
部屋に戻ってみると、既に彼女は深い眠りの中にいるようだった。──だが。
手を伸ばして、躊躇した。泣いていたのだ。いや、本人は眠っている。無意識の涙か?
深呼吸をしてから、彼女の濡れた頬に触れる。
一瞬彼女はピクリと反応したものの、覚醒には至らないようだ。
俺が泣かしたのか……?
そう思い至った時、ザワリとした感覚が身体を走った。──何だ、これは。
守りたいのに……、無性に壊したくなる。
相反する感情に自分でも驚き、だがしかしこのまま彼女を壊してしまいそうな恐怖にも捕らわれそうだった。
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