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第三章 常夜の魔女と月門の邑
三の肆.
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「夭い女が鳥や猫の妖魔と共に凶悪な妖虎を連れて暴れ回っているんだ」
「そんな事をする奴はお前しか考えられん!」
「違います!」
刀夜によって疑いが晴れたと思っていたが、どうも邑人はまだ蘭華を疑っているらしい。
「私達はずっと森にいましたし、此処へはたった今やって来たばかりです」
「魔女の言う事など信じられるか」
「貴様が妖虎を手引きしたんだろ!」
蘭華の弁明は門番達には届かず、彼らはいきり立つばかり。
「問答無用!」
「やっちまえ!」
そして、遂に男達が剣を振り翳し、槍を構えて臨戦態勢となった。
「貴様の悪行もここまでだ!」
「や、止めてください!」
真っ先に右前方から子雲が剣を振りかぶって迫り来る。そして、蘭華の制止の懇願も虚しく子雲の剣が振り下ろされた。
「てや!」
その剣筋が閃く。
(神賜術!?)
子雲が賜術を使ったのだと悟り蘭華は慌てて身を引いた。
間一髪!――蘭華の眼前を切っ先が通り過ぎ、子雲の剣は光の軌跡を宙に残す。
はらり……はらり……
その軌跡に黒髪が数条ひらりと舞った。
蘭華が避けてなければ頭を割られていただろう。今のは明らかに殺意のある一撃だ。
何の弁明も許さず有無を言わせず襲いかかる蛮行。いくら疎んじている相手と言ってもあまりにあんまりな対応ではないか。
「貴様らぁ!」
そんな蘭華への狼藉に芍薬がシャーッと毛を逆立て怒りを露わにした。
「この化け猫が!」
青年の一人が手にした槍を芍薬に突き出す。
あわや切っ先が芍薬に突き立てられる!――そう思われた瞬間、芍薬はヒョイッと軽々と躱し槍は地を穿った。
そのまま芍薬は地に突き刺さった槍の柄の上を走る。
「にゃっ!」
「いてっ!?」
そして、青年の顔に爪を立てた。
「ふんっ、少しは男前になったんじゃないか?」
「このっ!」
芍薬の挑発に三本の引っ掻き傷を頬に刻まれた青年が激怒した。
「利成、そんな小物に構うな!」
逆上する青年に叱責を飛ばし子雲が蘭華へ剣を向ける。
「魔女を囲め」
「は、はい」
利成と呼ばれた青年は手で頬の血をグイッと拭うと蘭華へ向け槍を構える。
「観念しろ悪しき魔女!」
「死ねぇ!」
躱しきれない!
左右正面三方からの斬撃に、さすがの蘭華も無理を悟り方術で防ごうと印を結んだ。
が――
キンッ!
キンッ!
ガキンッ!
金属音が殆ど重なるように同時に聞こえたかと思うと若者達の槍の先が斬り飛ばされ、正面から斬り掛かってきた子雲の剣がくるくると宙を舞う。
「そこまでだ」
蘭華を庇うように邑人達の前に立ちはだかったのは剣を抜いた銀髪の麗人――今朝方、蘭華の破屋を訪れた刀夜であった。
「そんな事をする奴はお前しか考えられん!」
「違います!」
刀夜によって疑いが晴れたと思っていたが、どうも邑人はまだ蘭華を疑っているらしい。
「私達はずっと森にいましたし、此処へはたった今やって来たばかりです」
「魔女の言う事など信じられるか」
「貴様が妖虎を手引きしたんだろ!」
蘭華の弁明は門番達には届かず、彼らはいきり立つばかり。
「問答無用!」
「やっちまえ!」
そして、遂に男達が剣を振り翳し、槍を構えて臨戦態勢となった。
「貴様の悪行もここまでだ!」
「や、止めてください!」
真っ先に右前方から子雲が剣を振りかぶって迫り来る。そして、蘭華の制止の懇願も虚しく子雲の剣が振り下ろされた。
「てや!」
その剣筋が閃く。
(神賜術!?)
子雲が賜術を使ったのだと悟り蘭華は慌てて身を引いた。
間一髪!――蘭華の眼前を切っ先が通り過ぎ、子雲の剣は光の軌跡を宙に残す。
はらり……はらり……
その軌跡に黒髪が数条ひらりと舞った。
蘭華が避けてなければ頭を割られていただろう。今のは明らかに殺意のある一撃だ。
何の弁明も許さず有無を言わせず襲いかかる蛮行。いくら疎んじている相手と言ってもあまりにあんまりな対応ではないか。
「貴様らぁ!」
そんな蘭華への狼藉に芍薬がシャーッと毛を逆立て怒りを露わにした。
「この化け猫が!」
青年の一人が手にした槍を芍薬に突き出す。
あわや切っ先が芍薬に突き立てられる!――そう思われた瞬間、芍薬はヒョイッと軽々と躱し槍は地を穿った。
そのまま芍薬は地に突き刺さった槍の柄の上を走る。
「にゃっ!」
「いてっ!?」
そして、青年の顔に爪を立てた。
「ふんっ、少しは男前になったんじゃないか?」
「このっ!」
芍薬の挑発に三本の引っ掻き傷を頬に刻まれた青年が激怒した。
「利成、そんな小物に構うな!」
逆上する青年に叱責を飛ばし子雲が蘭華へ剣を向ける。
「魔女を囲め」
「は、はい」
利成と呼ばれた青年は手で頬の血をグイッと拭うと蘭華へ向け槍を構える。
「観念しろ悪しき魔女!」
「死ねぇ!」
躱しきれない!
左右正面三方からの斬撃に、さすがの蘭華も無理を悟り方術で防ごうと印を結んだ。
が――
キンッ!
キンッ!
ガキンッ!
金属音が殆ど重なるように同時に聞こえたかと思うと若者達の槍の先が斬り飛ばされ、正面から斬り掛かってきた子雲の剣がくるくると宙を舞う。
「そこまでだ」
蘭華を庇うように邑人達の前に立ちはだかったのは剣を抜いた銀髪の麗人――今朝方、蘭華の破屋を訪れた刀夜であった。
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