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学園生活篇
26迷い子
しおりを挟む平井は、公園に寄り道中にリュックの中から着信音が鳴っているのに気付いた。
自分のスマホは、ズボンのポケットに入れている筈だ。ベンチに座り、リュックを下ろす。
リュックを開けると、蛍から盗んだスマホがあった。取り出して、その画面を見る
「三吉……?」
蛍の友達かも知れないし、出ない方がいい。
しばらくすると、電話は切れる。
「……中身見てやろう」
そう言って、画面をタッチするも真っ黒なままであった。
さっきまで動いていたのだから、バッテリー切れではないはず……。
しばらく画面を見ていると、人の眼のようなモノが見えた。
平井はその眼と眼があったような気がして、ゾクッとした。
「な、なんだよ……気味が悪いぜ……持ち主とそっくりだ」
平井はどうも、物静かで陰気な感じのタイプが苦手だ。蛍はまさにそのタイプ。
しかも、何もかもを見通しているような眼が更に苦手だ。
『……ゴ本人様確認ガ取レマセンデシタ。モウ一度、スキャン行イマス』
「何だよ……これ」
急にスマホが喋りだして、面を食らったが、顔認証システムが動いただけだと平井は思った。
そしてもう一度、画面を覗き込む。
『ヤハリ、ゴ本人様確認ガ取レマセン。攻撃ヲ開始シマス』
「はあ?」
すると、スマホがバイブレーションしているかと思っていたら、画面から何かが、飛び出てきた。
平井は思わず、スマホを投げ飛ばしたが、スマホは地面に落ちる前に宙に浮かぶ。
「な!?」
平井は、立ち上がりスマホを見る。
スマホは目の前で、上下に動いている。平井は、口をパクパク動かしながら、その場から走り出す。
『……攻撃対象、逃亡。追跡ヲ開始シマス』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
息を切らし、平井は走り出す。
公園から、だいぶ離れたところで、平井は足を止めた。
「……はあ…はあ。何だよ…あれ……」
平井は、周りを見渡した。どうやら、いつの間にか霊園にたどり着いたらしい。
「…よりによってこんなところかよ」
霊園に着いたころには、日が落ちかけていた。辺りも暗くなり、人通りも少ない。
いや、少ないというよりいないが正しい。
それに静かすぎるし、夏だというのに何故か寒気がする。
「……ちっ。もう戻るか」
平井は一人、墓の中を歩くのだが、なんだか違和感を感じている。
道が暗いから?人がいないから?それとも夏なのに寒気を感じるから?
そんなものではない。ここは不気味だ。それに何故か、誰かに見られている気がする。
「誰だよ!さっきから見てるのは!?」
後ろを振り向き吠えるように怒鳴ったが、当然返事はない。
額から、たらりと汗が流れていく。
「くそ!!」
また前を見て、平井は歩き始める。
しかし、歩いても歩いても霊園からは出れず、途方に暮れるばかり。
そのうちに、ショキ、ショキという何かを研ぐ音が聞こえてきた。
通りかかった墓の前で、老人が何かをしている、たぶん、米か何かを研いでいるのだろう。
水と何かをかき回す音。
「おい!出口はどこだよ?」
老人は、こちらを見ようともせず、ただひたすら作業に集中している。
老人は、どうも老婆らしく、着物の前が少しは開けていた。しわしわの胸が見えた。
「…無視してんじゃねえよ!」
平井は老婆に怒鳴ったが、耳が遠いのか聞こえていないようだ。
「…小豆洗おうか」
「は?」
老婆が歌うようにそういった。
「小豆洗おうか………人喰ってとろうか?」
老婆は顔を上げて、にやあと笑い、平井を見る。
あまりの不気味さに、平井は一目散に逃げだした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ほ、本当に何なんだよ!ここは!?」
行けども行けども、墓、墓、墓。
平井は、途方に暮れてふらふら歩きだす。すると、墓のない草むらにたどり着いた。
やっと出口かと、平井は安堵するが、草むらに何か落ちている、
「なんだ?」
何かに近寄り、そっと覗き込むと平井はぎょっとする。
「…攻撃対象ヲ発見。攻撃ヲ開始シマス」
聞き覚えのある機械音。
「あ、ああああああああ!」
平井は断末魔を上げ、そこから猛スピードで逃げ出した。
しかし、スマホも後から追いかける。
平井は無我夢中で、全速力で走った。それはもう、手足が千切れそうな勢いだ。
だが、平井は例え手足が千切れても構わないとさえ思った。それほど、恐怖していたのだ。
走っているうちに、袋小路に向かっていると知らず……。
「くそ!あんな事さえしなきゃ……!田中から、スマホなんて盗まなきゃ!」
平井は、夏のに背筋が凍り、さらに行き着いた先は行き止まり。
今日やった事を今更、後悔しながら怯える。
「攻撃ヲ開始シマス」
「ぎゃああああああ!!!」
スマホは画面から触手を出し、触手は平井を襲いだした。逃げるところがない平井は、ただただ身を縮こませるしか出来なかった。
「…………そこまでだ」
触手が、平井に届く寸前に動きを停止した。
「……って、君。漏らしちゃってる」
蛍は、暴れようとするスマホを掴み取り、平井を見下ろす。
平井はただ口をパクパクと動かして、蛍を見た。
「君さあ、人のもの盗んだら駄目でしょう?」
蛍は、にやにやと含み笑いをしながら、近づき目線を合わせる。
平井は首を振りながら、立ち上がろうとするがうまく立てずにいた。
そんな平井に蛍はスマホの画面を見せると、画面は光だし平井はそれに包まれ消える。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
,
「………全く。今回は許してやったけど」
平井が消えた場所を睨む。
「次はない」
そういって、蛍は顔を歪ませた。
「で、ここはどこなの?………まあいいか」
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