浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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これを見てわかるぐらいならば託せる

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黒舌さんさ桔原(きはら)商店街のみなさんとは上手くやっている。
その昔、正式に商店街の所属になる際には、研究所に隔離されて精密検査を受けることになり。
「るりりん~」
「うりりん~」
もしかして黒舌さんこと、るりりん、小さい男の子なんかは「る」が上手く言えず、うりりんと呼んでいる。黒舌さんが帰ってこないかもしれないと大泣きしたという。

チッカチカ
ここは組合のビルである。
階段の照明が寿命を迎えつつあるようだ。
「あっ」
それを黒舌さんが見つける。
「組合長」
黒舌さんが組合長を読んできた。
「これは交換だね」
組合長が替えを持ってきた。
「じゃあ、掃除してから取り替えるよ」
「お願いします」
この場合、人間ならば高所作業の準備が必要であるが。
ニュ
黒舌さんは体を伸ばせば届く。
ホコリをきちんと拭き取ってから、箱から新しい物を出して付け替えた。
スイッチを入れて確認。
パッと明るくなる。
「いいですね」
「そうだね」


Tさんの会社はお昼になるとキッチンカーがやって来る。
お昼はそこで買い物することが多いが、今日はなんだかお弁当とは違う甘い匂いがする。
「焼きいもあります」
なんとメニューに焼きいもの文字が、誘惑されてハーフサイズを買ってみる。焼きいもの袋には品種のシールがついていたが、あまり見かけない名前だった。
ふ~んと思いながら、一口食べたらこれが当たりである。
ねっとりとし大変美味しい。
そこから焼きいもと見るたびに、あの美味しい品種のものがあれば欲しいと思っていたのだが、なかなか見かけず。
しかし、再会というのはいつでも意外で突然なもの。
帰宅する前に発見、これならば黒舌さんにも食べてもらえると、大きさなサイズを一本買って帰ることにした。
黒舌さんがいる組合のビルまで行く。
「もう少しで戻ってくるから、ちょっと待っててね、あっ、お茶飲むかな?」
組合長自らがいれてくれた。
「そうだ、Tさんって手帳とか使う?」
「使いますよ、もうちょっとでページが無くなるんで、新しく買いにいかなきゃなって思っていたら、この手帳を買った店もうなくて」
「それは大変だね」
その手帳を見ると、組合長はTさんには手帳愛というか、文具好き、同好の何かを感じたようで。
「実はいいことあったら書き留めていたりして、少し前までは忙しくてゆっくり書き付けることはできなかったんですよね」
楽しいことを書き留めることが好きだった、でも大人になってからだんだん少なくなって、ここ最近は一年で数行増えることもいい方だった。
「三月から始まる手帳なんだけどもさ、使ってくれるいい人を探していたんだ」
組合長は10月始まり派、組合の人たちでも手帳を使う人は少なく、しかもほとんどが1月派てある。
「これはいい手帳ですね」
「でしょ、これを見てわかるぐらいならば託せる」
「僕でよければ」
ではいただきますともらったあと、二人していいよね、手帳。そうですねを繰り返していた。


黒舌さんがやってくると、なんかホカホカしていた。
「お風呂にでも入ってたんですか?」
「ビルの保守と掃除の後は、汚れるから、洗われるんだよね」
その洗うのが組合長の子供たちの昔からの仕事。
「娘さんは知ってるよね?あの子の下に弟くんがいるんだよ」
弟くんを見かけないのは勉強のためである。
「試験の、『かもくめんじょ』とやらのために、必要な資格を今から狙うって」
本番時の試験数を減らして集中、余裕を作るスタイル。
「あ~それはわかる」
「受験生あるあるなのかもしれないね」
そこで買ってきてくれた焼きいもを半分にして食べる準備をした。
「弟くんも大きくなったよ、昔はお姉ちゃんも一緒に背中に乗せて行ったり来たりするだけで喜んでくれたんだけどもさ」
ある時から乗ると明らかに遅くなりました。
「重量オーバーですか」
組合長からはその時にもう乗っちゃダメと言われた。
「しかしだ、あのときの私はもういない、脱皮も何回もしたし」
「脱皮するんですか」
「うん、実は」
そして恥ずかしそうに焼きいもをたべると。
「あっ、これ美味し」
「でしょ」
「こういう美味しいものもそうだけど、Tさんといると、何をするにしても楽しいよね」
「そ、そうですか」
「浮かれすぎて窓の外を掃除しないように気を付けなきゃね」
「それ、スクープにされますよ」
キャー!大きな蛇が窓のところに!
「そうしたら研究所のトラックがやってきて、私連れてかれちゃうね」
「それはダメ」
ジョークでいったつもりだが、それはダメ、本当にダメの目をTさんはしていた。
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