浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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中のインナーでも引っ掛かってるようなモコモコ感

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ピッ
「んっ?どうしたの?」
秋澄(あきすみ)にシャドウスワローのぴヌは甘えるのである。
(あれ?もしかして、私は気を使われている?
)
何となくそう思った。
「私は大丈夫よ」
ピッ
それでもやめない。
「もう、…なんか体温高いわね。あ~暖かいな」
心からその言葉が出ると、ぴヌはようやく止まってくれた。
「ちょっとね、私、今日は落ち込んでいたのよね」
回復の魔法を使う彼女だが。
「少し、届かなかった」
それで元気を無くしてた。
「これ以上は無理をするな、はい、お疲れ様って交代してきたんだけどもさ、それでも、一人になると来るんだよ、そこに遊びに来てくれたからね、伽羅磁さんは仕事かな?この時期だと忘年会かもしれないね」
ピッ
「メッセージ入れておけって?忙しいと思うよ」
ぴヌは器用に自分の羽の中から端末を取り出した。
「えっ?いつの間にそんなものを…」
ピッ
「緊急連絡用?」
そこでタッチというか、嘴でトントンして、定型文だけで送ると。
「秋澄、大丈夫?今は会議あるから、また連絡するから」
と秋澄の方にメッセージが届いた。
「何てメッセージ送ったの?」
見せてくれた。

『ママ 元気 ない』

「日本語は理解していると思っていたけども、感じやひらがなの使い分けができてる!」
ただ文章は幼い。
秋澄もシャドウスワロー、上位存在の家族としてカウントされているので、家族用のアプリはインストールしており、これで同じくインストールしている、伽羅磁とはやり取りをしている。
「伽羅磁さんもマメな人だな」
自分の同僚の男性たちもマメだが、それはあくまで仕事上の付き合いでのことだ。
プライベートになると、まあ、ほどほどというか、KCJのみんなでご飯を食べに行く程度、秋澄が個人的に飲みに行くようなのは、ぴヌの件もあってか、伽羅磁ぐらいか。
それもこの間の伽羅磁のお見合いで、無くなるのかなと思ったら、お見合いは不成立で、相手はモデルさんだし、美人だったな、なんで断ったんだろうと不思議な顔をしてみている。
「キャァァァ、誰か!」
ここは秋澄の自宅なのだが、外から叫び声が聞こえた。
必要な道具が詰まった鞄と上着を持って、秋澄は外に出た、その影にぴヌは潜った。
ちなみに影に潜られると、中のインナーでも引っ掛かってるようなモコモコ感があるようです。
声は男性の物である。
「どうしましたか?」
「僕を医者に…」
誰かが来たというのでホッとしたようで、その男性は意識を失った。
「浮気もしてたんだ」
駆け寄った秋澄に声がした。
「やっぱりさ、あんたって最低なのよね」
刃物を持っていたので、ぴヌは一陣の風のような、残像も見せずに刃物を奪い取った。
「えっ?何、なんで痛いの」
といっても傷つけてはいない、握ったものを強引に奪ったための痛さだ。並みの人間だったようで、ぴヌの姿は見えないのだが。
「どうして、なんでわからないのよ、上手く行かないよね」
「何かあったんですか?」
「誰か連絡して、この人、刃物を持って」
そこまでいうと、駆けつけた人はそこから近づかないで、むしろ後退りしている。
目をつけられたら大変、大変なのだが。
「気に入らない、なんで連絡するの?あんたそんなことをしないでよね」
矛先がその人の元に向かったので、秋澄から視界が離れた瞬間、ぴヌがすり抜けて、相手を引っ掻けようとするが、それがわかった秋澄が女性を捕まえて。
「何するのよ」
スゴい力である、拘束を振りほどこうとするために噛もうとするが。
グッ
そこは秋澄も対処できる。
少しだけ、自分の心に闇が宿りそうになった、このまま魔法を使えば回復ではなく、痛みという形にこの女性に与えることになるが。
(馬鹿馬鹿しい)
その考えをすぐに捨てた。


「秋澄って強いんだね」
その事件の話もぴヌから伽羅磁に伝えられた。
すると伽羅磁は、すぐにどっかに食事に行こうと提案した。
「それとも俺の手料理でもいいかな?一緒にスーパーに行ってさ、今回は簡単なものだけども、俺は結構美味しいもの作るよ」
「お店でお願いします、さすがに気分を変えたい」
「そうか、そうか、それは残念だ…」
後半に本音が出てるよ!
「なんです、食べてもらいたかったんですか?」
「料理ができるとか、家庭的なところを見せたいじゃん」
「そういうものなんですか?」
「今はそうなんじゃないの?まあ、俺は独り暮らし、今はこの子と二人だけどもね。結構家事はやるからな」
「私は…」
「忙しいじゃん、何て言っても、KCJきっての回復の使い手」
「他にも回復の使い手はいますよ」
「え~でも痛みなく治せるって、秋澄ぐらいじゃん」
「痛くないって大事でしょ」
「優しい魔法だね」
「本人は優しくないんですけどもね」
「ひねくれものなところはあるよね、そこもまた可愛い!」
「伽羅磁さんは甘いな」
「そりゃあね、好きだからね、甘くもなるし、パパはね、ママが大好きなんですよ~」
ここでぴヌを撫でまくる。
ピッ
「やっぱり家庭円満が幸せの秘訣だと思うんだよね」
「そうかな?」
「そだよ!」
そこは譲らないらしい。
「もっと緩く考えなって、理想はね、ないんだって、妥協ってわけでもないけど、俺なんてどう?って話」
「今日は…グイグイ来ますね」
「来ちゃうね、さっきまで会議で煮詰まっていたからだろうね、秋澄じゃないけども、気分転換がほしくなる。結構さ、俺もハードワークだよ、でもびっくりするほどバランスは取れている、そこには定評はあるけども、やっぱりそうなると怖いのはそれが取れなくなることだから、十分な休養、積極的なストレス発散は大事なわけさ」
「それは理想的な生活ですね」
「そだね、うん、そうなるといきなり忙しくなったときにも動けるから」
「波乱はありそうですか?」
「人生だからあるでしょ?」
「それはそうですが…あ~少しはゆっくりしたいかも」
「どっか行く?お泊まりでもいいよ、もちろんこの子は…」
ピッ
そこはパパママで行ってください。
「…」
「なんで自分から言い出したのに、恥ずかしそうにしているんですか」
「だって恥ずかしいじゃん!」
「なんでですか?」
「なんでって、まあ、そのこの子がいれば秋澄もな、子は鎹って思ってるから、なんか久しぶりに二人っきりじゃない?なんて話したらいいのかわからない~」
「はいはい、すいません、おかわりをお願いします」
「秋澄ったら、俺の交わし方が天才的だよね

「見ている方は面白いとは思いますが、当事者なんで」
「俺の愛は確かに重いよ」
「そうですね」
「でも一途でピュアよ」
「この言葉、何人目ですか?」
「そりゃあもちろん一人目だよ、俺がこんな性格じゃ、早々に女性の方からお断りかかるんで、これでも婚活必死なの」
他の派閥から紹介の話は来るのだが、その話に乗ると。
「一番の俺の売りである中立を捨てることになるからね、そうしたら失脚は早いんじゃないかな、やめたくなったらその手を使えばいいかっては思っているけども、まだそんな気にはならないし、この子ともまだ一緒にいたいわけだし」
シャドウスワロー、上位存在の家族というこもは、人間同士の間では非公表にしてある。
「まあ、隠せるだけ隠した方が、バレたらなんで黙っていたんだった案件ですが、当たり障りなく生きていたいならば、このままを維持が理想かな」
「そうそう、そういうやつなのよ。何しろ使えるものはみんな使いたい、他人はどうでもいい人たちに囲まれているからね」
「よくそんな状況を穏やかに話せますね」
「慣れればいいんだよ、慣れたらそれが当たり前になるから」
「それができる人は少ないでしょ?」
「そうだね、でもがんばって!ってしか俺は言えない、ここまで来ると、世界なんて変わるんだからさ、今が嫌なら、嫌なままにするぐらいならね…なんてさ」
この辺が秋澄が伽羅磁に何人目?と聞く理由である。
こういうの好きな、言われたら、弱い女性はいるんだろうなって思うから。
無自覚とはいわないけども、伽羅磁が惹き付けてしまっている女はどっかにいそうと感じる。
(たまに私でも、あっ、これは不味いなって思うぐらいだから、好きな人はそのまま落ちちゃうんだろうな)
「あれ?何かまた誤解されてる?」
「おかわりお待たせしました」
「あぁ、ありがとう。最近は景気どう?」
「うちの店は、今のご時世でもみんなお金持っている人たちがお客さんですからね、忘年会の駆け込み需要とかいうやつよりも、いつもと変わらず、安定した商売ができているって奴でしょうか」
「今日は何がおすすめなの?」
「かき揚げですかね。店長が今日はかき揚げすんごい揚げるからって、準備しているんですが、その~宣伝してなくて」
「伽羅磁さん、どうします?そんな店長のかき揚げ食べてみませんか?」
「よーし、三人分お願いします」
「ありがとうございます」
そういって店員がいなくなったあとに。
「私が食べさせてもいいかな?」
「あ~んして待ってる」
「伽羅磁さんじゃなくて」
ピッ
「あぁ、そっち、そうか、そっち…ですよね」
一人でどんどん沈んでいった。
「あのですね」
「なんだよ、秋澄」
「誘ってくれてどうもありがとう」
「どういたしまして、君の曇りが晴れてくれるならば、それでいいと思うんだよね」
「…」
「どうしたのさ」
ピッ
「ちょっとパパをからかわないでよ。まだ関係性は清いの!高校生の初デートより清いんだから」
「私を何歳だと思ってるんですか?」
「年齢は関係ないよ、君と向き合うときは俺はいつもそんな気持ちなの」
「学生時代は普通に過ごせていたわけですからね」
「そうだね、それが何故かこちらの世界に縁があって、そうなんだよな、思えば遠くに来たものだ、当時が懐かしくて近づくと蜃気楼ぐらいになっちゃってる」
「自分のルーツを振り替えることは悪くはありませんよ」
「そうなんだけどもさ、そうじゃない自分ってどうだったのかなって」
「昨今のニュースを省みて」
「ろくでもない人生が待ってそう」
「だからこれでいいんじゃないですか?」
「そうか…」
「まあ、私がいうことではありませんが」
「店長のかき揚げお待たせしました」
「なんかすごい早いんだけども」
「店長、かき揚げの注文をずっと待ってたんですよ」
おかしい、なんで誰も頼んでくれないんだ。
「うちの店長って職人さんすぎるんで、こっちの世界のお客さん相手にしてなかったら、とっくの昔に店なんて閉めちゃってますから、あっ、取り皿はこれですんで、じゃあごゆっくり」
「…世間はそんなに景気が悪いか」
「景気というより不安が蔓延しているって感じ、今までのものが通用しなくなって、新しい道を用意しなければならない」
秋澄はかき揚げを食べやすく割っていた。
「じゃあ、はい、あ~んして」
ピッ
そこでパクっ!…ぴヌは美味しかったらしい。
目が輝いている。
「そっか良かったか、じゃあ俺も」
サクサク
急いで食べていたところに。
「私はあ~んしなくてもいいんですか?」
ごほっ!
伽羅磁は気管に入った。
「えっ、大丈夫です」
背中をトントン、さすって。
「あ~んはなくても、トントンさすさすで幸せだから」
「そのうち、体壊しますよ」
「丈夫に生まれてきて良かった、骨とか強いらしいよ、年を取ってからも元気だから、介護の心配ないよ」
「もう今から介護ですか?まだお若いのでわ」
「人生の計画はある程度以上は必要だと思うんだよね」
「それはそうですが、そこまで上手く行くものではない」
「ならば修正しようよ、上手く行くように、その繰り返しで答えを見つけていくべきだ」
「前向きなのか、ひねくれているのかわからないですね」
「それはお互い様だと思うんだよね」
「そこは否定しませんよ」
「君と組んでいる腰なんちゃらくんとかじゃ、君の影はどうしようもならないかな」
「影と言えば」
「どうしたの?」
「さっきこの子に影に潜られましたけども」
「違和感あった?」
「なんかこう、ありましたね」
「上手に潜ってくれる方なんだけどもね。この不可思議な感覚から、禍鳥扱いされたんだよ」
「あれで上手な方だと、下手な子だと…」
「いきなりの体調不良、しかも味わったことがないやつだから、漠然とした不安がって、ただ飛びさると嘘のように消えるわけ」
そして特に潜られたからといった体が弱るわけではない。
「だから人に潜ることはあんまりこの子はしないんだよね」
「あぁ、それで…影に潜ったの何かに似てるなと思ったけども、この間コートの中にいたような感じかな」
この話はパパとママではここが違うという感想を我が子から聞いてましたが、パパはとっても照れ臭かったようです。
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