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一方的な思いからみんな始まる
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緊張感が漂うなか、気にせずに動いたのは彼女である。
ガッ!
一撃をまず当てたら、追撃はせずに後ろに下がった、そこを追いかけるように相手が一歩出たら、横から体当たりをしかけたのが河川ザメのメメミヤ。
そこからすぐに戦闘は終息を迎えた。
こんな戦闘をKCJの職員が終えると、ドクターチェック後、そのまま今日と明日は休みになる。
まさかそういう待遇になるとは思ってはいないので、さてどうやって時間をすごそうかと考えていたら。
「メッ」
「ドーナッツを買いに行かないかですって」
「あぁ、それはいいかもしれないね」
メメミヤさんの好きなドーナッツ屋はちょっと遠くにあるので、一緒に散歩がてら歩くことになる。
「まだメメミヤさんの言葉がわからないと思うからさ」
AIユメトキボウによる、サメの音声を日本語に翻訳変換する力を使うといいそうだ。
「もちろんまだ完璧ではないけども、メメミヤさんを初めとする河川ザメは日本語を理解しているから、もしも日本語が間違って変換された場合は、違うというのがわかって、言い換えて対応してくれるし、そこまで不便はないと思うよ」
「メッ」
これがけっこう使えるのよな。
「知らない間に生まれた世界がSFの世界になってたよ」
「メメミヤさんはドーナッツが好きなんですか?」
「メッ」
ドーナッツは美味しいものでは確かにあるわね、でも私はあの店のドーナッツだから好きなのよ。あそこの店主はね、そのために店の立地からこだわってるし、手軽にみんなに美味しいものを食べてもらいたい、今の時代、その心意気を応援したくはなるわ。
(美食家のレビューかな?)
「メッ」
そこは今もお店のアカウントはないから、本日のドーナッツは何があるのか、こうして買い物に行くとき考えるのも楽しいわね。何を食べても悪くはないと思うの、ドーナッツは自由だから、でも私が食べてほしいのはまず定番からね。
黒糖、そしてさつまいもね。とりあえずはここから。さつまいも、使っている今によって個性が出るわ。さつまいもというのは、シンプルな焼きいもにしただけでも美味しいもの、そこをあえてドーナッツにするのは挑戦なのよ、私はその挑戦を受けて立つってところね。
でも毎回私の負けなのよ。
「日持ちするものも売ってますかね」
そんなに美味しいのならば、お土産に買っていこうと思った。
「メッ」
ああ、いつもの同級生くんにね。もちろん、あるわよ。私が初めて来店したときはその日限りだったんだけどもね、四年前から発送できるドーナッツも開発してくれたわ。地方発送にも耐えられるし、常温保存ができるパックのものね。これを買えば間違いないわ。
「というわけでメメミヤさんがおすすめのドーナッツ屋さんのものなんだけども、おやつにでも食べてね」
「サメを唸らせるならばまず間違いはないだろうな」
「河川ザメってそこは正直だもんね」
「体は大丈夫なのか?」
「ああ、うん、何か変なことになったら、すぐに連絡してって」
「そこは隠すなよ」
「そうだね、この辺とかも本当に手厚いよな」
「向こうではどうだったんだ?魔法でもあったのか?」
「魔法はある、でも庶民は気軽には使えないし、使いどころに迷うって感じだね、結局その辺はよくわからないままだ、まだ向こうにいる勇者くんも、医療方面はKCJに頼っているしね」
「向こうではあいつは何をしているんだ?」
「赴任しているようなもんだからね、だからこっちからあっちに用がある人への護衛かな、ほらこぅちってさ、今は食料とかが高いから、そういう信頼おける人がいるのならば、食料やないし肥料とか、確保できる見込みがあるのならば調査にいきたいってことだね。今のところはそこまで大きい話は見つかってはいないけども、見つかった場合は私も手が足りないからって向かうことになるんじゃないかな」
「今から投資でもしておけば大きく育ちそうだな」
「さぁ、それは私からはなんとも」
その態度で、彼はどうするか決めたようだ。
「お前のことは知ってる、勇者のことは地味な奴ってイメージしかないな」
「向こうでは結構話したけども、奨学金のために試験受けるつもりだったらしい」
「あぁ、確かその時そういう話が出てたな、家庭が大変だとか…」
「こっち戻ってきてから聞いたんだけども、火災もあったんでしょ?私たちがいなくなってから」
「そうだ、それで、そこでも保険とかで色々あったと聞いている、もうあいつの家族は亡きものと見ていたからな、それでいいとは思う」
「…ああ、なるほどカネズルにされるか」
「たぶんな、異世界転移からの帰還は、年齢にもよるが家族の調査は行われるそうじゃないか」
これは帰還者が異世界において友好的な状態で、また立場がある形で戻ってきた場合、関係の悪い家族が騒ぐ可能性を潰すためである。
「この形を取れるようになるまで、先人の犠牲はあったって話ね」
「そりゃあ、そうだろうな、金になるものが目の前にあるんだ、涎が出るさ」
「そんな目で見られたくはないよ。私の場合はその話も勇者くんから聞いたからね」
この世界には俺の居場所はないんだなって。
「あれを言われたとき、帰りたいって話はしてたんだよね、向こうにいたときさ」
「それはどっちも思っていたのか」
「向こうはその便利ではないわよ、安全でもないから、勇者パーティーとして一仕事をした後でも、こっちの日常にはかなわないところはあるようなところ、だから向こうでの経験が帰還後にこうしていきているわけなんだけど、まさか向こうの世界にいることを選ぶとは思わなかったなが本音」
「お前は?」
「確かにうちもな、受け入れてくれる家族はいない、実家がまだあるっぽいっていう話で見に行ったら、あなたに会えるとは思わなかったし」
「尋ね人としてビラでも撒いても良かったんだがな」
「うちの家族より、熱心じゃん」
「そりゃあな、お前の家族はショックは受けていたが、何故かそのままだった、何でかは知らんが…」
「あれだろ、お互い相手を見つけていたとかだろう?」
「そうそう、お前の父親は職場で嫉妬されていたぞ」
「女に?母に別れろとか?」
「そういう女遊びもあったみたいだが、それが落ち着くきっかけがな、男からの嫉妬だ」
「そんなんで落ち着くものなのか」
「そうだな、面白いぐらいにピタっとな、上の立場から嫌われるのも好かれるのも、嫉妬されるのも、順調な人生にはならないものなんだなって思ったよ」
「なんでそんなこと知ってるの?」
そこでニヤッと笑い。
「何か起こりそうならば、先に手は回しておくもんじゃないか?」
「この行動力は相変わらずだ」
「それが俺の魅力だぞ」
「結構躊躇するようなところで、お金使ったり、行動力出しすぎたりするんだよな」
「バカだな、そういうのが新しい道を見つけるんだ」
「ああ、そうだね。うん、そうだ、どうも私は視野が狭くなっていたみたいだよ」
「ダメだぞ、そんなんじゃ、生き延びれないだろう」
「あなたはどんなところでも、自分の自信を失わず生還できそう」
「かもな、でも一人で戻ってきても何も意味はない」
「それはそうだね、私たちは欠けずに済んだ、それはかなりラッキーだったんだよ」
「使命を果たせた状態で帰還は理想だが、もしも途中で帰還できるとなったらどうしてた?」
「あ~それはどのタイミングかに本当によるんじゃないかな」
「そうか」
「前にも言ったけども、私たちは全員で五人だ、私と勇者くんはこっちの人、残り三人は女性で向こうで組むことになった人だからね」
「その三人にも思惑はあると」
「三人とも一番の願いが最終的には勇者くんと一緒に生きることだからね、あの時点では勇者くんは帰還したいと思っていたわけだから、一方的な思いだよ」
「一方的な思いからみんな始まるんだ、そこまで否定するな。だからこそ、思いが通じあったときに、喜びを感じるんだ」
「詩人だね。悪くない言葉だね」
「恋に対する文学や詩なんて、古典でたくさん学ぶことになるんだから、いかにして多いのか、受験のために勉強するのか…さしも草とかな」
お土産に持ってきたドーナッツを見て…
「かくとだに えやはいるぶきのさしも草」
「さしもしらじる もゆるおもいを~」
ドーナッツにヨモギを使ったものがあったので、それにちなんだ百人一首からである。
ヨモギにあたる部分が「さしも草」
「まだ言える自分に驚いてしまったよ」
「勉強はできた方だとお前は思うぞ」
「そうかな?」
「そうだよ、あのまま学生続けていても、何とかなっていたんじゃないのか」
「そういう人生は過ることは過るんだけどもね、目の前が忙しくなったらそういうことは過れなくなった、なんていうのかな、現実を見なければならない危機感っていうのかな。それでもさ、余裕ができたら、紙を買って書き付けてはいた、たださ、向こうのペンと紙は日本語を筆記するのは向いてなくてさ、この間手帳を買ったとかに感動したよ」
「それでもペンは探しているんだろう?」
「そうだね、紙に合うものとインクが長く持つもの、耐久性がありますっていうペンもあったんで、同僚さんでそういえば使ってる人がいたなって思って聞いてみたら」
あれは破損して中に空気が入ると書けなくなるんで、その保護が出来るのならば持っているのは悪くないけども。
「って言われた、まあ、異世界の異聞っていうの、変わった話があれば、そこを採集するのも仕事のうちの一つみたいな話もあるから、そういうのも充実させていくんじゃないのかな」
「それは面白そうだな」
「良ければ聞いてほしいな、どこかに提出するのならば文章をきちんと書けないといけないし、報告書みたいなものだから、オチとかそういうのは気にしなくてもいいから、そこは楽なのかもしれない」
「この間買った手帳はどうだったんだ、見た瞬間、表情が変わっていたが?」
「そりゃあもう、紙がいいんです…しかし、昔と違ってお値段は上がってましたが、それでも頑張って買った価値はあるかな」
「そうか、そんなお前にプレゼントだ」
そういって渡されたのは、先日自分の中で開催された最強手帳決定戦の決勝を戦い、惜しくも破れたものである。
「よろしいんですか?」
「メインではないだろうが、サブの手帳にでも使ってくれ」
「使う使う、何を書こうかな」
「そこは自由にすればいいだろう」
「ああ、それじゃあ、このレストランで話したことで印象的なことを書く」
「なんだ全部じゃないのか」
「全部かいたら…何日かで無くなるのでは」
「それは確かに、でもそれならば…」
「心に残ったことを書くよ、そしたらワンフレーズできっと思い出せるだろうからさ」
「そうだな」
「ね?」
本当にこういう笑顔に弱い。
「あまり可愛い顔を見せるな、家に連れて帰りたくなる」
「寂しいなら、何か趣味を見つけることをおすすめするよ」
「そういうことじゃない。友達は、学生時代の奴等は今はそれぞれ忙しいからな、それこそセミリタイヤ考えて、実際にゴールが見えてきているのは俺ぐらいだろう、お前はセミリタイヤとかはしないのか?」
「まだしないかな、まだ戦えるからかな、そうじゃなくなる日はくるけども、その時は潔く身を引くし、一般職の勉強もしてるんだけどもさ」
「なんだ問題が難しいのか」
「時事が難しいです」
「そうか…」
「野球のリーグの問題で解説受けているぐらいなので」
転移被害を受ける前は、基礎学力では問題はなかったが、時事方面の対策も受けてないので、苦戦しているし。
「時事って、毎回問題が変わるので、取捨選択が出来ない…」
時事は最低限だけを目指して、他の項目で点数を取っていく方針らしい。
「メメミヤさんにどんどん心配されていくんだよね」
私でもわかるのにって顔をされる。
それがますますこの子は一人にさせたらダメだわ、私がついてあげなくちゃになっていく。
「KCJの支部内で使える電子マネーがあるんだけど、あれは本当に便利なんだよね」
特に戦闘許可証持ちだと、毎日ログインしなくても食費分の電子マネーがニャーニャー振り込まれる。
「ニャーニャー?」
「決済したときの音がニャーニャー言うんだけどもね、あのコンテストがあって、システム更新されたときに、前の人とは違う人のニャーが聞けるよ」
そのニャーの鳴き声コンテストはKCJじゃなくても参加できる。参加すると、それだけで食堂一食分のニャーニャーがチャージされるので、今ではニャーと鳴くぐらいで一食を浮かせられるのならばと、職員よりも近隣のサラリーマンがよくニャーニャーいってるという。
「本物志向でいくか、ふざけるか、色んな人のニャーニャーのセンスが見られます」
コンテストが開催される期間中は食堂に録音ブースも設置されてますので、皆様どうぞご参加ください。
ガッ!
一撃をまず当てたら、追撃はせずに後ろに下がった、そこを追いかけるように相手が一歩出たら、横から体当たりをしかけたのが河川ザメのメメミヤ。
そこからすぐに戦闘は終息を迎えた。
こんな戦闘をKCJの職員が終えると、ドクターチェック後、そのまま今日と明日は休みになる。
まさかそういう待遇になるとは思ってはいないので、さてどうやって時間をすごそうかと考えていたら。
「メッ」
「ドーナッツを買いに行かないかですって」
「あぁ、それはいいかもしれないね」
メメミヤさんの好きなドーナッツ屋はちょっと遠くにあるので、一緒に散歩がてら歩くことになる。
「まだメメミヤさんの言葉がわからないと思うからさ」
AIユメトキボウによる、サメの音声を日本語に翻訳変換する力を使うといいそうだ。
「もちろんまだ完璧ではないけども、メメミヤさんを初めとする河川ザメは日本語を理解しているから、もしも日本語が間違って変換された場合は、違うというのがわかって、言い換えて対応してくれるし、そこまで不便はないと思うよ」
「メッ」
これがけっこう使えるのよな。
「知らない間に生まれた世界がSFの世界になってたよ」
「メメミヤさんはドーナッツが好きなんですか?」
「メッ」
ドーナッツは美味しいものでは確かにあるわね、でも私はあの店のドーナッツだから好きなのよ。あそこの店主はね、そのために店の立地からこだわってるし、手軽にみんなに美味しいものを食べてもらいたい、今の時代、その心意気を応援したくはなるわ。
(美食家のレビューかな?)
「メッ」
そこは今もお店のアカウントはないから、本日のドーナッツは何があるのか、こうして買い物に行くとき考えるのも楽しいわね。何を食べても悪くはないと思うの、ドーナッツは自由だから、でも私が食べてほしいのはまず定番からね。
黒糖、そしてさつまいもね。とりあえずはここから。さつまいも、使っている今によって個性が出るわ。さつまいもというのは、シンプルな焼きいもにしただけでも美味しいもの、そこをあえてドーナッツにするのは挑戦なのよ、私はその挑戦を受けて立つってところね。
でも毎回私の負けなのよ。
「日持ちするものも売ってますかね」
そんなに美味しいのならば、お土産に買っていこうと思った。
「メッ」
ああ、いつもの同級生くんにね。もちろん、あるわよ。私が初めて来店したときはその日限りだったんだけどもね、四年前から発送できるドーナッツも開発してくれたわ。地方発送にも耐えられるし、常温保存ができるパックのものね。これを買えば間違いないわ。
「というわけでメメミヤさんがおすすめのドーナッツ屋さんのものなんだけども、おやつにでも食べてね」
「サメを唸らせるならばまず間違いはないだろうな」
「河川ザメってそこは正直だもんね」
「体は大丈夫なのか?」
「ああ、うん、何か変なことになったら、すぐに連絡してって」
「そこは隠すなよ」
「そうだね、この辺とかも本当に手厚いよな」
「向こうではどうだったんだ?魔法でもあったのか?」
「魔法はある、でも庶民は気軽には使えないし、使いどころに迷うって感じだね、結局その辺はよくわからないままだ、まだ向こうにいる勇者くんも、医療方面はKCJに頼っているしね」
「向こうではあいつは何をしているんだ?」
「赴任しているようなもんだからね、だからこっちからあっちに用がある人への護衛かな、ほらこぅちってさ、今は食料とかが高いから、そういう信頼おける人がいるのならば、食料やないし肥料とか、確保できる見込みがあるのならば調査にいきたいってことだね。今のところはそこまで大きい話は見つかってはいないけども、見つかった場合は私も手が足りないからって向かうことになるんじゃないかな」
「今から投資でもしておけば大きく育ちそうだな」
「さぁ、それは私からはなんとも」
その態度で、彼はどうするか決めたようだ。
「お前のことは知ってる、勇者のことは地味な奴ってイメージしかないな」
「向こうでは結構話したけども、奨学金のために試験受けるつもりだったらしい」
「あぁ、確かその時そういう話が出てたな、家庭が大変だとか…」
「こっち戻ってきてから聞いたんだけども、火災もあったんでしょ?私たちがいなくなってから」
「そうだ、それで、そこでも保険とかで色々あったと聞いている、もうあいつの家族は亡きものと見ていたからな、それでいいとは思う」
「…ああ、なるほどカネズルにされるか」
「たぶんな、異世界転移からの帰還は、年齢にもよるが家族の調査は行われるそうじゃないか」
これは帰還者が異世界において友好的な状態で、また立場がある形で戻ってきた場合、関係の悪い家族が騒ぐ可能性を潰すためである。
「この形を取れるようになるまで、先人の犠牲はあったって話ね」
「そりゃあ、そうだろうな、金になるものが目の前にあるんだ、涎が出るさ」
「そんな目で見られたくはないよ。私の場合はその話も勇者くんから聞いたからね」
この世界には俺の居場所はないんだなって。
「あれを言われたとき、帰りたいって話はしてたんだよね、向こうにいたときさ」
「それはどっちも思っていたのか」
「向こうはその便利ではないわよ、安全でもないから、勇者パーティーとして一仕事をした後でも、こっちの日常にはかなわないところはあるようなところ、だから向こうでの経験が帰還後にこうしていきているわけなんだけど、まさか向こうの世界にいることを選ぶとは思わなかったなが本音」
「お前は?」
「確かにうちもな、受け入れてくれる家族はいない、実家がまだあるっぽいっていう話で見に行ったら、あなたに会えるとは思わなかったし」
「尋ね人としてビラでも撒いても良かったんだがな」
「うちの家族より、熱心じゃん」
「そりゃあな、お前の家族はショックは受けていたが、何故かそのままだった、何でかは知らんが…」
「あれだろ、お互い相手を見つけていたとかだろう?」
「そうそう、お前の父親は職場で嫉妬されていたぞ」
「女に?母に別れろとか?」
「そういう女遊びもあったみたいだが、それが落ち着くきっかけがな、男からの嫉妬だ」
「そんなんで落ち着くものなのか」
「そうだな、面白いぐらいにピタっとな、上の立場から嫌われるのも好かれるのも、嫉妬されるのも、順調な人生にはならないものなんだなって思ったよ」
「なんでそんなこと知ってるの?」
そこでニヤッと笑い。
「何か起こりそうならば、先に手は回しておくもんじゃないか?」
「この行動力は相変わらずだ」
「それが俺の魅力だぞ」
「結構躊躇するようなところで、お金使ったり、行動力出しすぎたりするんだよな」
「バカだな、そういうのが新しい道を見つけるんだ」
「ああ、そうだね。うん、そうだ、どうも私は視野が狭くなっていたみたいだよ」
「ダメだぞ、そんなんじゃ、生き延びれないだろう」
「あなたはどんなところでも、自分の自信を失わず生還できそう」
「かもな、でも一人で戻ってきても何も意味はない」
「それはそうだね、私たちは欠けずに済んだ、それはかなりラッキーだったんだよ」
「使命を果たせた状態で帰還は理想だが、もしも途中で帰還できるとなったらどうしてた?」
「あ~それはどのタイミングかに本当によるんじゃないかな」
「そうか」
「前にも言ったけども、私たちは全員で五人だ、私と勇者くんはこっちの人、残り三人は女性で向こうで組むことになった人だからね」
「その三人にも思惑はあると」
「三人とも一番の願いが最終的には勇者くんと一緒に生きることだからね、あの時点では勇者くんは帰還したいと思っていたわけだから、一方的な思いだよ」
「一方的な思いからみんな始まるんだ、そこまで否定するな。だからこそ、思いが通じあったときに、喜びを感じるんだ」
「詩人だね。悪くない言葉だね」
「恋に対する文学や詩なんて、古典でたくさん学ぶことになるんだから、いかにして多いのか、受験のために勉強するのか…さしも草とかな」
お土産に持ってきたドーナッツを見て…
「かくとだに えやはいるぶきのさしも草」
「さしもしらじる もゆるおもいを~」
ドーナッツにヨモギを使ったものがあったので、それにちなんだ百人一首からである。
ヨモギにあたる部分が「さしも草」
「まだ言える自分に驚いてしまったよ」
「勉強はできた方だとお前は思うぞ」
「そうかな?」
「そうだよ、あのまま学生続けていても、何とかなっていたんじゃないのか」
「そういう人生は過ることは過るんだけどもね、目の前が忙しくなったらそういうことは過れなくなった、なんていうのかな、現実を見なければならない危機感っていうのかな。それでもさ、余裕ができたら、紙を買って書き付けてはいた、たださ、向こうのペンと紙は日本語を筆記するのは向いてなくてさ、この間手帳を買ったとかに感動したよ」
「それでもペンは探しているんだろう?」
「そうだね、紙に合うものとインクが長く持つもの、耐久性がありますっていうペンもあったんで、同僚さんでそういえば使ってる人がいたなって思って聞いてみたら」
あれは破損して中に空気が入ると書けなくなるんで、その保護が出来るのならば持っているのは悪くないけども。
「って言われた、まあ、異世界の異聞っていうの、変わった話があれば、そこを採集するのも仕事のうちの一つみたいな話もあるから、そういうのも充実させていくんじゃないのかな」
「それは面白そうだな」
「良ければ聞いてほしいな、どこかに提出するのならば文章をきちんと書けないといけないし、報告書みたいなものだから、オチとかそういうのは気にしなくてもいいから、そこは楽なのかもしれない」
「この間買った手帳はどうだったんだ、見た瞬間、表情が変わっていたが?」
「そりゃあもう、紙がいいんです…しかし、昔と違ってお値段は上がってましたが、それでも頑張って買った価値はあるかな」
「そうか、そんなお前にプレゼントだ」
そういって渡されたのは、先日自分の中で開催された最強手帳決定戦の決勝を戦い、惜しくも破れたものである。
「よろしいんですか?」
「メインではないだろうが、サブの手帳にでも使ってくれ」
「使う使う、何を書こうかな」
「そこは自由にすればいいだろう」
「ああ、それじゃあ、このレストランで話したことで印象的なことを書く」
「なんだ全部じゃないのか」
「全部かいたら…何日かで無くなるのでは」
「それは確かに、でもそれならば…」
「心に残ったことを書くよ、そしたらワンフレーズできっと思い出せるだろうからさ」
「そうだな」
「ね?」
本当にこういう笑顔に弱い。
「あまり可愛い顔を見せるな、家に連れて帰りたくなる」
「寂しいなら、何か趣味を見つけることをおすすめするよ」
「そういうことじゃない。友達は、学生時代の奴等は今はそれぞれ忙しいからな、それこそセミリタイヤ考えて、実際にゴールが見えてきているのは俺ぐらいだろう、お前はセミリタイヤとかはしないのか?」
「まだしないかな、まだ戦えるからかな、そうじゃなくなる日はくるけども、その時は潔く身を引くし、一般職の勉強もしてるんだけどもさ」
「なんだ問題が難しいのか」
「時事が難しいです」
「そうか…」
「野球のリーグの問題で解説受けているぐらいなので」
転移被害を受ける前は、基礎学力では問題はなかったが、時事方面の対策も受けてないので、苦戦しているし。
「時事って、毎回問題が変わるので、取捨選択が出来ない…」
時事は最低限だけを目指して、他の項目で点数を取っていく方針らしい。
「メメミヤさんにどんどん心配されていくんだよね」
私でもわかるのにって顔をされる。
それがますますこの子は一人にさせたらダメだわ、私がついてあげなくちゃになっていく。
「KCJの支部内で使える電子マネーがあるんだけど、あれは本当に便利なんだよね」
特に戦闘許可証持ちだと、毎日ログインしなくても食費分の電子マネーがニャーニャー振り込まれる。
「ニャーニャー?」
「決済したときの音がニャーニャー言うんだけどもね、あのコンテストがあって、システム更新されたときに、前の人とは違う人のニャーが聞けるよ」
そのニャーの鳴き声コンテストはKCJじゃなくても参加できる。参加すると、それだけで食堂一食分のニャーニャーがチャージされるので、今ではニャーと鳴くぐらいで一食を浮かせられるのならばと、職員よりも近隣のサラリーマンがよくニャーニャーいってるという。
「本物志向でいくか、ふざけるか、色んな人のニャーニャーのセンスが見られます」
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