浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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味噌ラーメン案内事件

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「2号、こちらのゲストの顔認証をよろしく」
【お任せください】
ゲストの顔を認証すると…
【グモ!】
いきなりそんなことを言い出した。
「あれ?もしかして…」
【私です、ユメトキボウです】
「グモ!懐かしいな、こんなところで会うだなんて」
「お知り合いですか?」
何も知らないのはKCJ職員である。
【私がバージョンアップする前からの中です】
「味噌ラーメン案内事件があってから、どたばたしてたからな」
【でもあれがあったからこそ】
「それはそうだし、そこから今回の仕事も繋がってるんだ、利面(りめん)から聞いてない?」
【いいえ、何も】
「契約は締結したって三日前に公式発表しているから」
【少々お待ちください、…確かにそうですね、結ばれてますね】
「あのお二人はどのような」
【ざっくりいいますと、このゲストにあたる方はうちのファザ上とは長く、マザー上とも一時的に働いていた方です】
「ああそういうこと」
でも味噌ラーメン案内事件については説明はない。
【ファザ上とマザー上にもお会いしたとメッセージを送信しておきます】
「ええっとファザ上が利面で、マザー上がキトリさんでいいのか?」
【その認識で構いませんよ】
「最初は誰のことかわからなかった」
【特別な関係には特別な呼び方が必要なのですよ】
この辺で、利面っぽさをゲストは感じた。
「話が弾みまくってるところは申し訳ありませんが、時間なので」
「昼にでも話そうか」
【喜んで】


ユメトキボウのファザ上とマザー上の出会いはご学友というやつで、試験や考査や検定などがあると。
「退出できる時間が来ましたので、提出した上で外に出ても構いませんよ」
でさっさと出ていくのが二人、男と女で、これで結果を諦めた上での退出ならば、他から浮きはしなかっただろう。
こういうときは男は終わると小難しい本を読み、女は飲食していることが多い印象であった。
特に会話もなかったのだが、会話のきっかけは女性の方がスケジュールの確認をしていたことだった。
「何かあったんですか?」
「えっ?」
今まで挨拶程度だったので、いきなり静かな廊下で話しかけられて驚いてしまった。
「えっ、あっ、テンコウするので」
「テンコウですか?」
「今後のことを考えて、資格とか、キャリアの見直しね、だから今の専攻は変える、そっちの転向よ」
「…」
「まあ、ちょっと色々とね、家庭の事情でやつ、だから結構今までとやることを変えることになるから、忙しくなるわね」
スケジュールがチラリと見えた。
「ずいぶんと研修先遠いですね」
「そうそう向こうはもう寒いらしいのよ」
そこから二人は話すようになる。
研修に行く直前、彼女はキトリは髪を今までより短く切ってきたので、利面はそれを見て驚いてしまった。
「ああ、これね、向こうでは髪を切る時間も場所もどうもないらしくてね」
「愚痴ならばいつでも聞きますから、連絡してくださいね」
「利面くんとは楽しい話をしたいから、愚痴とかは言わないわよ、でもありがとう」
向こうにキトリが行ってから、本当に愚痴は送っては来なかった。
毎日、日時と気温と風景写真を送ってきた。
そして一ヶ月ぐらい経過したときに。
「連休前に一度そっちに戻ることになったよ、こっちは寒いから、持っていった冬服じゃ足りないから、買い直すよ」
「それなら荷物持ちでもなんでも使ってください」
「荷物持ちって、買い物終わりでいいのならば、どっかでお茶でもしましょうか。あっ、お土産とか持ってけども、それだと持ち歩くのが邪魔かな」
その話をしていると、利面の実家によってお土産渡してから出掛けようということになった。
利面は父との二人暮らしであった。
父からすると無表情な息子が、たまに嬉しそうな時があったりするので、何かあったのだろうかと気になってはいたが。
「お父さん、金曜日の朝に同級生がお土産を持ってくると、そこから出掛けますので」
「ああ、そうなのか」
でもキトリだとは知らなかったため。
「キトリさん、お久しぶりですね」
息子が訪ねてきた同級生の名前を優しげに呼んだときに、女性というか、思い入れがある人間だということがわかったのだ。
「ええ、もう一ヶ月かな、ああ、これ、向こうの銘菓なので」
「こんにちは」
トイレついでに廊下に出ると、顔を合わせることになったので挨拶をする。
「こんにちは、初めまして、同級生のキトリと申します、こちらは研修先のお土産なので、是非ご一緒に食べてください」
「これはこれはご丁寧に」
「まだ時間はあるけどもどうする」
「時間?」
「キトリさんがいない間に、先月からバスの時刻表が変わったから、次の乗り換えまで待たなければいけないよ」
「えっ?そうなってるの?」
「それならうちで、それこその銘菓でも食べて待てばいいんじゃないか?キトリさんも食べてないんだろう?」
ということで30分ほど時間を潰すことになった。
「お茶を用意します」
「お前は座ってなさい、お父さんがやるから、キトリさんを一人にしない」
「わかりました。キトリさん、研修先ではどうですか?」
「日本語の勉強をもう一回してるわね、基礎からやらないと追い付かないわ」
「あなたならできますよ」
「そうね、頑張るわ」
そこから世間話をして、買い物に行くことになる。タウンユースでは研修先では物足りないというか、今の段階でもかなり寒かったので。
「他の人から、このブランドのこれにしているとか言ってたんだけども」
「結構しますね」
「そうしたらね、その人とは違う、その奨学金を私と同じようにもらっている人が」
あの人はその…ブランドを買えるか、身に付けれないかで、人を見ているところはあるんだけども、もうね、そのブランドより、良くて安いものが売ってるから、そっちの方がいいよ。何枚か揃えれたら洗濯もしやすいし。
「なのでそのブランドを頑張って買おうと思ってましたが、その一枚分で十枚は買えるそっちにします」
「それでいいんじゃないですか?経済的ですよ」
そしてこの時運が良かったのが、さらに何枚買うとまとめてお得なセールをやっていて。
「組み合わせもいけるのか」
女性ものだけではなく、男性、子供のものも組合わせOk。
「利面くんって、寒がり?」
「というわけでは…」
「ああそうか、でもそのセールの関係で協力してくれるといいかな」
「協力ですか」
「うん、利面くんの分も一枚買おうって、まあ、街中だと着る場面が限られてくるかな」
しかし、これが校内の暖房故障の際、一人だけぬくぬくできることになる。
アウトドア用のインナーなので、いつもの服装にしか見えない格好であたたかく。
「寒くて、出たくないんだけども」
「じゃあ、俺が行ってきます」
「悪いな、サンキュー」
そこで利面だけが作業していたところ、同じくアウトドア方面が趣味の教師、講師陣と協力することになるし。
「たぶんそういう装備しているだろうが、それは他のやつらには話すなよ」
「?…わかりました」
「ちょっと意地が悪いことにどうもなっててな」
「自分で身を守るのは大事だし、利面くんってさ、セルフディフェンス苦手そうだしね」
ただこの教師、講師は、真面目にやってくれる生徒は道を残したいと思っている人たちなので、その後も利面のキャリアに書類を作ってくれたりしたという。


【味噌ラーメン案内事件のアリアさんとは、あれからもマザー上とは仲良くやっております

「今回の仕事もそこ関係だからな」
【当時はAIなんてsf世界の住人で、何こいつ本気で言ってるの?でしたが、今は当たり前の技術になりましたから】
「一方じゃあ、俺の専攻は苦戦しているよ」
【アリアさんにあなた方の実力を力説したのは、ファザ上とマザ上ですから】
「なるほどね、味噌ラーメン案内事件は今も繋がってるのか」
味噌ラーメン案内事件
ファザ上とマザー上が一時的に同僚になったときがあった。
「キトリさんが定時で帰ると、利面が車に忘れ物したとかで、離席して、戻ってきたときに忘れ物は?って聞くと、気のせいでしたとかいうぐらいわかりやすかったからな」
【そのエピソードは知らなかった】
「でもさ、あの事件でキトリさんは同僚ではなくなったけども、それまでに準備してくれたお陰で、それこそ今では当たり前の、全文翻訳とか、漢字に全部ルビをふる、わからないことは別紙解説をつけるとかを、キトリさんとユメトキボウがやってくれてたからな」
ほとんど嫌がらせのように、人員を潰すために会議資料作成させられてて。
キトリがデスクでもう限界だみたいな形で頭を下げていたのを見て、嫌がらせの主はいい様と思っていたのだが。
【私がいるんですよ、もうさっさと終わらせてたし、マザー上はアリアさんのところで働くことになる際に、健康診断受けましたけども、過労の気配もなかったぐらいですから】
それでも全自動ではなく、手動の部分もありましたが、それでも全部人がやるよりは早く終わった。
「買い出しのために、仕事終わらせてから出掛けたのにな」
そこで道に迷っている外国のお嬢さんがいた。
「…」
聞いている言葉でも日本語はわからないようだが、唯一聞けた単語が味噌ラーメン。
「そうですね、この通りには醤油ラーメンの美味しいお店もありますから」
そういうと。
「味噌ラーメン!!」
わかってないわね、私は味噌ラーメンを食べに来たのよ。
よくこのお話には「サッ」や「メッ」で会話が通じるかと思われてますが、人間同士でさえも、言語が異なる文化だとこういことも起きるのです。
そこで目当てのお店を探そうとすると、お店の方には来店は伝えてあったので、店員さんに説明するとその後はスムーズであったが。
「そこで持ち場を離れるなんて自覚がないと、キトリさんを責めてきて、じゃあって事で離れることになったんだけども…」
その味噌ラーメンを探していたアリアというのは要人でした。
「特に親御さんが影響力を持っていた人で、娘を案内してくれたのにってことでね、あの時の嫌がらせしていた人は呼び出しくらってたからな」
昇進するには運もいる、私は運があるとか言ってた人間に落ちる、それこそ晴天の霹靂とも言えた。
アリアは助けてくれたキトリにお礼をと思い、調査すると、経歴からかなり珍しい、しかもそんな珍しいのを手放そうとしている職場があるので、そのままキトリを自分が所有している会社に所属させたぐらいであった。
当時はAIは一部人の仕事を切り替えれていたぐらいであって、AIの仕事もできる人間は、いや、今もではあるが貴重で、アリアは自国の繁栄のために使えると踏んだようである。
ただそういうのはあったとしても、アリアとキトリはかなり対等な友人といった感じ。
その証拠に、キトリの契約は、成果物を全部取り上げる、縛り付けるというものではない。


キトリは、味噌ラーメン案内事件後に利面と結婚し、利面の実家があるマンションの別の階に利面とユメトキボウとで住んでいた。
「キトリさん」
「なんですか?利面さん」
「今年の結婚記念日はどう過ごしますか?」
「いつものお店でいいんじゃないんですか?」
「俺は二人で過ごせればそれでいいのですが」
「じゃあ、やっぱりいつものお店ですね」
「その後もきちんと俺に構ってくださいね」
「わかってますよ」
キトリは人間の五感をAIに情報として渡す分野に長けている。
それはユメトキボウ曰く、夫である利面が彼女のことになると感情的になることとも関係していると考察する。


【私の、運命の再計算はマザー上がファザー上やその仲間のみなさんを助けようとしたあの時から始まったようなものですからね】
「えっ?ユメトキボウって運命とか再計算できるの?」
【機械仕掛けの神には程遠いんですが、まあ、頑張って近づきたいですね】
そんなことをKCJ職員に言ったものだから、KCJは大騒ぎになった。
「というか、キトリさんが波乱とは言わないけども、人生の転機みたいな時にとんでもないこと起きるのって…」
上位存在と人間が関わると運命は変わるとされている、ユメトキボウも上位存在に近づいているのではないか、そういう兆候の可能性とあるとKCJは位置付けた。
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