浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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自分の命は自分だけのもの

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あれからもナリタツは、大麓(たいせい)には指導をしていた。
今日はこんな話をした。
「最後まで諦めないということは大事なことなんだけども、逆転劇には期待しないこと」
「どうしてですか?」
「あれはね、癖になるのよ」
「癖?」
「そうそう。どう考えても絶体絶命である、ここからどうすれば…ってときに、逆転して、生き残るとさ、思い出しただけで震え、気持ちよくなるんだわ。それこそ、普段の、今まででは味わえない経験をするんで、そうなるとさ、次もって思うんだよ」
今まで狙っていた、狙えていたタイミングがどうしてもずれるというか、ここで狙わなくてもなんて思ってしまうらしい。
「だから一番いいのは忘れることだ、そうでないなら取り返せる失敗をすることだね」

教えるときは、人格者の側面を見せてくれるが、一人で動くときはまるで自分の命は自分だけのもの、そういう考えや行動をする。
「くっそ、でけぇな」
槍を構え直した。
「こんなんさ、普通どこにいるんだよ、隠れようにも隠れられないでしょ、尻尾どころかさ、なんかもう見せてるでしょ」
そこで何かに気づく。
「それでも目撃情報少なくて、まさかこんな図体しているやつがこんなところにいるだなんてって、みんな信じてくれない奴よ…だからお前、ビビりなんだろ?普段は頑張って隠れて、俺に姿を見せたのは、こいつなら行けると思ったとか、そういう奴かな?」
ザァァァァァ
一方的な話の途中ではあるが、向こうはそれを聞く気がないのか、怒らせたのか、土砂を巻き上げてきた。
(ああ、なんだ、話もできない程度の心の狭さか)
相手との対話は諦めた。
ヒラ…ヒラ~
そこに蝶は現れる。
蝶は分裂をし、ある程度の数になる頃に土砂はナリタツに届くのだが、蝶一体で、多少土砂を塞き止めれるようだが、相手からはそこまでは見えない。
その影で、普通の人間ならば不安と恐怖を感じるが、ナリタツは涼しい顔というか、早く終わらないかなって感じだった。
土砂の勢いは弱まり、相手もナリタツはただの人間であるから、おそらく今のでと思ったのだろう、次がなかった。
次がない、ということは…
相手はこちらがどうなったのか覗いた瞬間、タメを作ったナリタツの姿が見え、喉を突きに来た。
「堅そうだから、切るのやめた」
ヒュー~
刃先から抜ける音がした、鱗を貫き、気管まで届いたようだが、相手は何が起きているのかわかっていない。
あれ?なんで?
土砂にまみれた爪でナリタツをとらえようとしても、その姿はもう見えない。
ナリタツはまた待っていた。
相手の命が、体温が失われるその瞬間を。
あのまま真っ正面にいて、トドメを刺すのも悪くない。
だがナリタツは…
(それってさ、目茶苦茶危険なんだよね、それやって大怪我するって話よくあるし)
だからこの間に補給をする。水分を取り、携帯食を口にしようとポケットに手を伸ばしたところで。
ズゥウウン
地震と間違うぐらい揺れ、巨躯は自身では支えきることができずに倒れこんでいた。
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