浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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誰か吸血鬼になったの?

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カウンター席はサメで満席で並んでいるものもいる。
「今日はツアーですか?」
「いや、これからアリの駆除らしい」
「蟻ですか?」
「ただお前が想像しているよりも大きい、小型犬ぐらい、そして雑食なんで人を襲う」
「うわ…会いたくねえ」
「そうだろう、そうだろう、しかもな、あれは堅いんだよ」
「どのぐらい固いんですな?」
「刃物は通るのだろうかぐらいかな」
「そんなのどうやって駆除するんですか?薬とか?」
「サメがあんなにいるってことは、力だよ、力でみんな解決するんだよ」
ご飯を食べ終えたサメたちは、おかわりしたかった、お持ち帰りしたいと、大層気に入ったようで。
「飯食い終わったか!」
大きな声の男性がやって来ると、サメは一ヶ所に集まりだす。この男は服装が私服だからわからないだろうが、サンタであって、本日のまとめ役である。
「急に呼んじゃってごめんね」
「サッ」
問題ないよ。
「サッ」
俺とお前との仲じゃん。
「サッ」
他の奴等も来たかったっていってた。
サンタとサメたちの関係は良好のようだ。
サメ好きでなくても、サメが同じような姿ではなく、個体差が見れるので、あちこちの川から呼んだということもわかる。

すれ違いに傘目(かさめ)が食堂にやって来た。
「大捕物でもあるの?」
「大捕物といえば大捕物だね、大きな蟻をみんなでなんとかするって」
「へぇ、それならば俺の出番はないかも」
「あれは人が駆除するもんじゃないって、ああ、でご注文は?」
「今日は何がおすすめなの?」
「こっちはこの間も食べてくれた週代わりのメニューで、本日だけのメニューはサメちゃん達も食べたカツ丼だよ、後…七食ぐらいは出せるね、売り切れるように安くしなきゃ」
「じゃあ、せっかくなのでそれで」
「了解」


「先生」
学校で生徒に話しかけられる。
「どうしたの?」
「蟻ってどうやって駆除するの?ええっと普通のじゃなくて、犬ぐらいの大きさの」
「あれか、剣だったらスパッと切るかな」
「切れないから聞いているんですよ」
この生徒もKCJ戦闘許可証持ちである。
「でもスパッと切れないと、剣が腐蝕しちゃうんだよな」
「それだから聞いているんです」
「そうか、まあ、でも今は切る前にスプレーかな」
「なんです?」
「あれは強烈な酸だから、保護剤を吹き付けておいて切るといいとは思う」
「それで守れるんですか?」
「どのぐらい使用するかでも違うんだけども、切り続けたから、スプレーかけ直して、また切っても、端っこの方とかちょっと影響出ちゃったなはあるよ」
「やっぱり難しいんですね」
「んでもって、あれはとっても硬いから、そっちの問題は大丈夫?」
「そっちはなんとかかな」
「足音しないし、壁とかは平気で歩けるから、位置取り考えて動かないと挟まれるよ」
そこで黒板にマグネットをいくつか並べて。
「一人で全部やるってことはそうないし、そうなったら逃げた方がいいんだけどもね、そしたらそれこそ蟻退治が上手い奴に話が行くからさ、いい?絶対に退路はどこかは見ながら動くこと」
目の前に蟻がいても、そのまま突っ込むな。
「あっちは見つけて襲う感じではまだないからな、動かなくなったものを拾い集めるとかなんで、一体目で自分がこれを何回繰り返せるかを計算出来たら理想」
「そんなことまで考えているんですか?」
「考えてるよ、そうじゃないと生き残れないよ、それを本能でやってる人たちはいるけどもね」
「あぁ」
納得のサンタ。
「俺も結構後先考えないとは言われていたけど、本当に後先考えない奴等を見たら、俺は違うんだなって思いましたね」
「それでいいよ、それから?」
「それから…ですか」
「自分の得意な分野って何?」
「得意ですか?」
「そこからならば、そこから考えた方がいいね」
「そういうものなんですか」
「そういうものよ、この行程をサボると不思議と…上手く行かない」
「先生は上手くいってるように見えますが?」
「俺はね、ただまあ、俺よりもすごい人たちというのがいたんだよ、でも、そういう小さいことを侮ってしまったがために上手く行かないなんてことはあるのさ」
「先生って実は小難しいんですかね?」
「先生になるとそうなるよ、さすがに…命とかかかってるわけだから」
「それを出されると弱い」
「それともさ、君はすごいじゃないか、天才だな!って俺に言われたい?」
「…」
「えっ、どうしたのさ」
「先生、今、とんでもなく心ない事を言ったなって」
「言ったね」
「あっ、やっぱりそうなんですか、いつもの先生とは全然違うというか、なんというか、親身でいい先生の意外な顔というか」
「先生だってそういうところあるよ」
「どっかのバカが先生の逆鱗、いや尻尾でも踏んだのかなって」
「…」
「あれ?どうしたんですか?」
「驚いたな、それを気にする人いるんだ」
「?いや、うちのクラスの奴らなら、先生がそうなっていたらわかるんじゃないかな」
「それだったら嬉しい」
「?先生、本当に嫌なことあったんですね。…う~ん、こんなこというのもなんだけども、ここに来てる奴らってみんなわけありで、先生みたいな人たちの善意で成り立ってるのは知ってるから、真面目にやらない怖さもわかるんですよ。というか、安易な方法に手を出さなかったのがここに来るんで」
「そうだね、しっかりと時間はかかるかもしれないが、今抱えてる問題をより良くしようと思っている子等が来る」
「あんまり言いたくはないっすけども、ここ吸血鬼も来るじゃないですか、あいつら見てると、昔の知り合いを思い出して」
「誰か吸血鬼になったの?」
「なんか金積めば吸血鬼にしてくれるからって」
「ああ、ありがちな」
「そいつは今はどうなったかは知らないけども、真面目にあのままやってたら、就職とか結婚とかしていたんじゃないですかね、でも吸血鬼になったら、無理じゃん」
「オーバンならまだしもね」
古き良き吸血鬼、オールドヴァンパイア、オーバンに関しては、人間と関わり、人間に近い社会生活を営んでいる、そのためなったとしても定年が無くなったぐらいで後は勤勉に働くものらしい。
「力で何とかしようとしても、その対処を力でされてしまうものだし」
「それに吸血鬼って、吸血鬼親の縛りがあるからね、優しい言葉で吸血鬼になったとしても、なった後に何をさせられるかわかったもんじゃないんだよ」
そこで傘目は微笑むので、嫌なものを相当見たのは推測できた。
「KCJの戦闘許可証のいいところは、資格さえ持ってれば、十分割引や優待で普通の生活よりは楽できるから、もしもお仕事がいやになったとしても、更新だけはしておきなよ」
「はぁーい!」


「で、そのまま生徒に愚痴をこぼすことが出来ないから、うちに来たと」
水芭(みずば)はグラスを拭きながら相手した。
「少し前までは、ここまで精神的なダメージ来なかったんだけども」
「そりゃあ、定期的に吸血鬼の相手してたら、いつものようにはいかない」
「ああ、やっぱりあれが原因なのか」
「一匹、二匹だったらまだしもね」
「そういえばオーバンは、一人二人って数えるけども、力任せのニューバンって一匹二匹なんですよね」
日本は数の数え方がそれぞれ独特ではあるが、こんな感じで吸血鬼も数え方が違う。
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