浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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山の芋のすりおろし

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サメたちが「ご飯美味しかったね」「食べた後食器はここに返すんだ」と会話して、「ごちそうさま」と食器を返却したときに。
プスッ
予防接種された。
「サッ」
くっ、私も今日は予防接種されてしまうのか…
後ろのサメがビビった、そして覚悟を決めると。
「この予防接種は予約した方のみなので、そうでない方はしません」
そっちの方がショックだった。
そう!予防接種はエンターテイメントなのだ!


「あの手この手と、よく考えているというか」
本日は真中(ただなか)もサメくんを連れて、予防接種に行ってきたので、そのために事務所のbar側にサメくんも来ている。
「あれ、うちも予約したいんですけどもね、なかなか取れなくて、募集が始まるとすぐに埋まるそうです」
「サメの予防接種好きにはビックリだね」
「ええ、なんで次の予防接種はいつなの?って聞いてくるのかわかりませんでした」
モグモグ
この日のサメくんは、予防接種したことと、終了してホッとしたことで、食べて寝るの状態になってます。
「うちのサメくん、あんまりサメ感がないんですけども、予防接種した後はやっぱりサメなんだなと」
行動が食って寝る中心になるのだから、それはしょうがない。
「いつもと食べるものも違うよね」
「そうなんですよ、いつもは俺と同じものを量を多目なんですけども、カロリー高いものになってくるというか」
「こっちは剣の道場に通う生徒さんたちのおかずも作ってるから、余裕だけどもね」
「傘目先生のところですか」
「うん、そう、ミツさんがお世話になっているからね、それもあるんだけども」
「それ以外にもあると」
「真中くん、最近スーパーとか買い物してる?」
「してないですね、食べ物はここで頼んでいるか、行ったとしてもコンビニか、ただコンビニもあれ?値上がりしたんだって感じで、そういえばこの間異世界から何年かぶりに帰ってきた人を案内したときに」
なんか日本なんだけども、日本の価格してないな。
「何があったんだって聞かれました」
「まあ、そうなるよな」
「後はこれもあるんじゃないんですか?このbarの価格、ほとんど値上がりしてないでしょ」
「してないな」
「だからかな」
「それを言われると弱いかも」
「でも本当に大丈夫なんですか?」
「うん、ここは話を聞く場なので、飲食店が本業の店ではないってことだよ」
「えっ?」
「建前は」
「良かった。やっぱり建物だったか」
「多少は取り扱ってるものを変えて対応しているんだよね」
「それで対応できているんですか」
「今のところはね」
バッ
真中さん急いでスマホを見て、今の言葉を確認するための資料を見始めた。
「…」
「いや、ちゃんとやってるよ」
「食材、本当にどうやって確保しているんですか」
「そりゃあ安いときに」
「今、出してくれたトマトの煮込みのトマトとかも、高いですよね」
「そうだね」
「本当に赤字とか出してないんですか?」
「出してないよ、俺が出すわけがないだろ?」
「そういわれると弱い」
「barを始めた辺りから赤字だったんだよね、それを手伝うことにしてから、このままでは不味いんじゃないかって思い出して」
「そこで黒字にすると」
「一番大変だったのは、瀬旭(せきょく)さんや覆木(おおうき)さんだね」
「あっ、何となくだけども、赤字でもやり方を変えることをしなさそう」
「うん、そういうところが…あってね」
(本当に水芭さんがこの事務所にいなくなったなら、潰れるんじゃないだろうか)
しかし、その時に香水の匂いがしたので、真中は寒気がした。
「サッ」
大丈夫、帰った。
「サメくんは何て言ったの?」
「あの香りがしたので、身構えてたんですが、サメくんがbarにいるのがわかったので帰ったってところですか」
「…まだ諦めてないのか」
「ああいうのは無理でしょ、あなたのせいで奪われたとか思ってるんですもん」
「気配は消えた?」
「サッ」
「消えましたね、俺の方にも引っ掛からないので」
「ここからは愚痴なんだけども、あの人は理想が過ぎるんだよ」
水芭が愚痴をこぼすのは珍しい。
「ああ、なんかそういうタイプですよね」
「そうそう、でも努力とかあんまりしないし、新しいやり方に理解がない」
「ダメじゃないですか」
「ダメだと思うよ、でも聞き入れない、で、勉強しなきゃあの仕事は勤まらなかったりするんだよ」
「ああ、それは前に…あれ着任してから何年かでやめる人がいるのはすんげぇわかりますよ、着任しているときって休みがあってないというか」
「休みの日にね、資格とか、研究が入るんだよ、だからどうしても潰れてしまうから、遊ぶ時間がないんだ、ただあそこにいるうちじゃないと取得できないものが、でも今はKCJの戦闘許可証があるからな」
水芭は三年ほどそこにいました。
「あの人は現状に不満があった、それを変えたかったんだけど、変え方が現実的ではなかったし、受け入れようともしなかったから、どんどんね…」
「そういう人ってあちこちにいますよ」
「そう?」
「この事務所みたいな大人はそういるもんじゃないですから、俺のメインの仕事がこの街の、事務所関係のものに切り替えれるようになって本当に良かったと思う」
「そんなに酷かったの?」
「う~ん、向こうには事情があるとは思いますが、俺はこっちの出じゃないですからね、それがあったとしても、この値段で受けなかったから、お前に仕事はないぞって言われるのはちょっと」
「それは嫌だね」
「嫌ですね。あっ、頭領から言伝あったんだっだ」
「それはうちに?それとも俺に」
「水芭さんに山の芋が取れたけども、今度忍ジャメに持たせるねって」
「あれは美味しいよね」
「…ああ」
「どうしたの?」
「たぶんその販売価格見た方がいいかもしれない」
「高いとか」
「う~ん、高いというか」
「値段次第ではうちで買いたいな、あそこの芋は食べてすぐわかるし」
「わかります、蕎麦に入れるとそれだけで嬉しいんですよね」
真中が山の芋の取引価格をまずは調べてくれた。
「向こうではあの価格、こっちだとこのぐらい」
「やっぱり買って、すぐに出せるメニューの蕎麦に、全部この芋のすりおろし使いたいな」
「えっ、それっていくらになるんです?」
「トッピング代だけで」
「それなら俺は通います」
「じゃあ、真中くんのためにも買わなくちゃ」
価格の問い合わせを聞いたら、真中が調べた値段よりも安く。
「忍ジャメたちが運んでくれるから、決めちゃいました」
「だからこんなにも段ボールが」
螺殻(らが、)ミツは驚いた。
「でももうすりおろして冷凍したり、欲しいって言う人が買ってたりしたから、その段ボールは空だよ」
「じゃあ、私が解体しておきますね」
「お願いします」
最近熱いこともあり、冷やし蕎麦サラダを頼む人が多くなってきた。
しばらくはトッピングの山の芋のすりおろしは無料でつけてはいくつもりだが。
「これ終わってもトッピングで出すんでしょ?」
などの問い合わせは来てるから、おそらく有料になっても注文する人は一定数いると踏んでいた。 
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