浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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好きでもない歌

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「機嫌直った?」
「お前のせいで直ったよ」
「そう」
「そうだよ。しかし、お前には関係ないだろう、僕が機嫌が悪くてもさ」
「そんなことないよ、関係あるよ」
「どこら辺が?」
「誰かの事で頭がいっぱいになっている君をみたくない」
「変なやつ」
「そうかな、なんか嫌なんだよね」
「嫌なのは嫌だよ、ろくでもないことが起きて、それでイライラして、自分でも嫌になると言うか」
「それでもスゴいんだよ、誰かに当たり散らさないようにしている」
「そんなことしたら終わりさ」
「それがわかってる人、わかっててもどうにならない場合もあるもんだよ」
「だとしたらお前のせいだよ、不機嫌の最中にさっきみたいに、誰かのことを考えているのが嫌とか言われたら、こいつ…何言ってるんだろうなってなった」
「そう」
「そうなんだよ、不思議なんだよ、えっ?って思ったら、あれ?さっきまでのあのバカな話はどこかに行ったなって、確かに言われたみたいに、ああいうのに時間をかけるのは愚かなことだとか、今言われたらわかるよ、ただ本当にイライラの最中には言葉なんて届かないんだよ…ありがとう」
「どういたしまして」
「しかし、すごいよな、なんでそんなことできるんだ?」
「ん~なんだろうね、君だからかな」
「なんで僕だからなんだよ」
「止めなきゃならないなって、あのままだと、1日は、もしかしたらこれからもたまに思い出すかもしれないし、それは…やっぱり嫌だよ」
「そうか」
「どうせならば幸せに生きてほしい」
「それは無理さ」
「なんで?」
「そう生きてないから」
「生きようぜ!」
「明るくいっても、うん、そうだね、なんて言えねえよ」
「諦めちゃえばいいのに」
「何に?」
「不幸であること」
「無茶苦茶な理由だ」
「理由はなんでもいいよ、君が納得して、立ち直ってくれればなんでもいい」
「そこまでする必要はないさ」
「あるの、俺には、あるんだよ」
「どこかでお前を救ったのか?恩返しにでも来てくれたのか?」
「そうだね、あの時助けていただきましたっていうのはある、君は覚えてないかもしれないが」
「覚えているよ、思い詰めた顔してたから、あの時だろう」
「忘れているかと思ったよ」
「忘れたりなんかしないよ、あの時は今みたいじゃなかったし、こちらが頼みごとをする側だから、礼を尽くすのは当たり前だろ?」
「うん、あれは嬉しかった、俺にああいう丁寧な言葉でお願いできますか?って、とってもいい人なんだろうなって、それは今も変わってはいないよ」
「そう大した時間は経過はしてないのに、長い時が流れた気分だよ」
「そのぐらい色々あったからしょうがないよ」
「しかしさ、色々ありすぎじゃないの、もっと加減してくれよって言いたくはなる」
「わかる」
「だよな、どう考えてもそうだよな」
「でもそういう大変さがあっても、そんなに辛くないんだよな」
「それは僕もだよ」
「えっ?本当?」
「そうだよ、一人じゃないからかもしれない」
「それは大きいよね、やっぱり他の人には話せないから」
「ああ、それはある、話すにはやはり躊躇ってしまう内容だからな、悲しい話なんて誰かにするのはな…」
「そういうのは苦手だもんね、俺もだけどもさ」
「でもさ、黙ってても、ダメなんだよな、ああ、もうどうすればってね」
「カラオケでも行こうか」
「何歌うの」
そこでいくつかの曲、歌詞を口積み。
「あれ?その曲好きなの?いい歌だよな」
「前に聞いてただろう」
「そうだけどもさ…、?」
「今の心境にぴったりかなって」
「面白いことをするな」
「言葉がでないとき、歌えばいいと思う、自分の代弁、その歌詞に心を乗せてしまえば、辛さは消えるときが早いよ」
「だといいな、けども、なかなかいい声をしてると思うよ」
「そう?」
「本当にいい声だよ」
あら、まぁ!みたいな仕草をしている。
「そっちは歌ったりしないの」
「昔は歌ってたな、今は声が出ないんだ」
「な…」
尋ねようとしたとき、はっ!と気づく。
「歌は好き?」
「好きだよ、今はほとんど聞くだけど」
「歌うのも好きならば、歌うのもいいとは思うよ」
「本当にカラオケなんて前に行ったのいつだっけ?みたいな」
「今度一緒に行こうよ」
「…誘ってくれてありがとうな」
「やっぱり俺は、君にそんな顔をさせる原因全部を許せそうにない」
「寛容さは大事だよ」
「寛容ね、それならば向こうにも配慮をお願いしたい、何があったか話せる?」
「歌は結構上手かったんじゃないか、歌ってくれは言われてたからね」
「嫌いに、苦手な理由は?」
「酒の席で歌えと、好きでもない歌を覚えさせられたからね」
「それは嫌になるね」
「不満を顔に出すなとかね、あの時に比べたら、不機嫌を顔に出せるのは幸せなことだとすら思える」
「そういう過去は忘れなよ」
「忘れていいものかって感じ」
「バカだな、それは存在しなくてもいいもんじゃないか」
「でもそこから出ようとしたら、ここに勤めれるだけの能力にまでなったからな」
「それはそれ」
「そんなことないさ」
「もうもっと自分を信じなさいよ」
「信じるのは極限状態じゃないときにしたい」
「君の心は今日も薄暗いね」
「ずっと薄暗いさ」
「ご飯食べた?」
「さっきビスケットとヨーグルトぐらいか」
「ちゃんと食べないとダメだよ、野菜大事」
「後できちんと食べるよ」
「何を食べたか覚えてる?」
「忙しくて忘れそうな時もあるけどもさ、まだ覚えてる」
「まだね、ちょっとしばらくは一緒に食事するよ」
「なんでさ」
「ちゃんと食べているか心配なんだよ、適当に食べると、後が辛いよ」
「ああ、歯磨きとかしなくなるとかは言うもんな。そこら辺は後でいいかとは思わないで、それこそ強制的に習慣づけているよ」
「それじゃあ、心がダメになるよ」
「もうダメでは?」
「ダメだと言うのに、人を労れる気持ちを持ってるところが、びっくりするほど悲しいんだけども」
「よくあることだよ」
「ないよ、そんなことあってたまるか」
「まだお前は大丈夫だよ、今の僕はそんな気にもならない」
「痛いものは痛いって言わなきゃダメだよ」
「ん~そうだな、さっきの相手は怖かったな、怒鳴ってくる人間は好きではない、興奮している、不満をこちらにぶつけてくるのはわかるが、それじゃあ、話し合いにならない」
「最悪だよね」
「そんな相手と話さなければならないから…」
「そういうのは最低な仕事だと思う?」
「いや、そこは、これは大事な仕事だよ、穏便に解決することによって、誰かが救われる、そういうことだからね」
「そんな美学を持ってるところはとってもいいと思うよ、そういう考え方に触れると、ホッとする」
「バカな生き方だと思う、でもせめてそつありたいっていう感じだな」
「なんで?」
「本当はそう生きたかった、でも出来ないから、たまには真似事をしてみて、んでもって、やっぱり違うんだなと悲しくなるってところかな」
「人間だね」
「こういうのを人間というのか、知らなかった」
「君はどうしようもないほど人間だ、それだけは俺にはわかる」
「お前も本当に変なやつ、こんな話、面倒くさいとかいって嫌煙されるのがオチなのに、ずっと付き合うんだもの」
「落ち込んだりした時にさ、元気を出してっていうのは簡単かな」
「言う方は簡単だよ、言われた方は簡単じゃない、その言葉を受け付けない時もある」
「あるよね、そんなとき」
「どうして僕が訪ねた時に、引き受けてくれたんだい?」
「あの時、もうどうでも良かったんだと思う」
「そうか」
「うん、どうでもよくて、なんで訪ねてきたんだろうなって、でも悪い人じゃなさそうだって感じ、そしたらビックリしたな、待遇とか良いんだもの、あれで目が覚めた」
「こっちが頼みに行くんだ、苦労させたらダメだろう」
「そうだけどもさ、うん、それに慣れてしまった今は当たり前になっちゃってるけどもさ、あんなことは普通は起きないんだよ」
「起こすのが責任なんだよ」
「やだぁ、もう」
「なんだよ、その言い方」
「俺のどこが気に入ったのさ」
「真面目なところ、ずっと一つのことに打ち込んでいく強さは大事なことだし、逆にそれは僕にはないからな」
「俺はたまたまだよ、たまたま、剣だった、君にもそういうのがあるはずだ」
「ねえよ、そんなもん、あったとしても、ずいぶんと昔に置いてきてしまったからないんだよ」
「色んなもの失ってるね」
「そうだな、でも嫌なことがあったんだろう」
「人を傷つけて生きている人はどうかしているよ」
「僕もそう思う」
「そう思うならさ」
「まだまだ忘れられないんだよ」
「いつか、必ず、君の心にシコリが残らない日は来るさ」
「その前にお迎えが来なきゃいいな」
パラパラと雨が降り始めたようだ。
「ちょっと寒いな」
「上着とってこないと」
今日の話はこれでおしまい、でも心と距離は砕けたままだ。
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