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生きてるやつなら俺でもわかる
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「あれ?お前、どこに行くんだ?」
知り合いが怖い顔をしながら夜道を行く。
「ちょっとな」
「ちょっとって、お前な、女のところに行く顔じゃないんだろうし、なんだ一悶着あるのか」
「まぁな、彼女自身には問題はないんだろうが」
「ああ、それならば俺の帽子とコートを貸してやる、それに隠し持っているものを忍ばせると上手く行くだろう」
「参ったな、お見通しか」
「お前よりこの世界は明るいんだよ」
男は笑う。
「帽子とコートを返すときに酒を奢れ、そうしたらチャラにしてやる」
「わかった」
借りていた帽子とコートを持ってきたときに、わざわざクリーニングに頼み、銘菓を一折つけたところに、生真面目さが見てとれる。
「それではボトルを」
「いや、こいつでいい」
ビール瓶をブラブラさせた。
「それだと…」
「知らないのか?最近じゃこいつも高いんだぜ」
「わかった」
「それで?」
「ああ、付き合っている彼女が、俺としては結婚を前提にしてたんだ。だが彼女は結婚は考えてないし、それよりもいい人を見つけなさいよってね」
「他に男でも?」
「生きてる奴ならば俺でもわかる」
「やっぱり剣士は怖いね」
「そうかな?」
「だって実際にお前が助けに行ったら、震え上がったんだろう?」
「そこまでお見通しかよ、そうだよ、俺が怒るとは思わなかったらしい、嫌な話だ」
「本当にな、でもそういう話は誰かが聞いてやらなきゃならない、俺は力を貸して、こうして酒を飲んでいる」
「なるほど、それじゃあ、酒が切れないはずだ」
「世の中奇麗事だけじゃない、だから俺の酒は切れることはないってところだ」
そういってグラス越しの泡を楽しそうに見ている。
「お前のところのそれはまだかかるそ」
「まだか」
「どうも諦めてはいないらしい、執着というのはすさまじいな」
「どうしたらいい?」
「おいおい、俺を信じるのか?」
「信じるさ、あの帽子やコートは何か不思議な力が宿ってたりするんじゃないのか?」
「さあ、どうだったか」
「酒ならばもっと奢るぞ」
「そうじゃない、こういうのはひどく難しい、人の業は絡まりやすく、ほどきにくい、彼女はずいぶんと絡まっている、彼女自身もその紐の端を握っているようだね」
「なんで…」
「それは当たり前のように、離してはいけないというように、ただまあ、救いのある話としては、彼女は非常に真面目な男に興味があるらしい、助けてくださいと言いづらい環境下でも助けてくれるやつがな」
「助けるのは当たり前では?」
「それがそうじゃないんだよ、あの手の奴等は、それで邪魔されるのならば、助けを呼ばないようにすればいいとか、そんな手を考える、嫌なもんだよ」
「楽しそう…いや、すまない、気のせいだな」
「楽しそうというよりは、人から化け物になろうとしているのを面白いと思っているんだよ、せっかく人に生まれたのにってね」
「まるで君も人じゃないみたいだ」
「それはご想像に任せるよ」
「えっ?本当に?あっ、俺じゃあ全然わからないな、今度までに修行しておくよ」
「本当にお前は面白いやつ」
そいつは飲み屋街のどこかに今日もいる。
「あれ?あいつ探しているんだけども、まだ来てないの?」
「今日はまだ来てませんね、お越しになられましたら、伝言しておきますよ」
「お願いします」
そんな感じでたまに飲んでいると、探している人なんかもやって来るぐらいだ。
ただ何をやっている奴なのか詳しく知る人はいないんじゃなかろうか。
「こんばんわ」
「おや、噂をすれば、さきほどあなたを探している方が来てましたよ」
「これで今日も酒代には困らなそうだ」
「お酒は好きなのはわかりますが、どうぞほどほどに」
「わかってるって」
「今日は何にします?」
「そうだな…」
帽子とコートを脱ぎながら、一杯目は何にしようと、あ~だこ~だ話していた。
知り合いが怖い顔をしながら夜道を行く。
「ちょっとな」
「ちょっとって、お前な、女のところに行く顔じゃないんだろうし、なんだ一悶着あるのか」
「まぁな、彼女自身には問題はないんだろうが」
「ああ、それならば俺の帽子とコートを貸してやる、それに隠し持っているものを忍ばせると上手く行くだろう」
「参ったな、お見通しか」
「お前よりこの世界は明るいんだよ」
男は笑う。
「帽子とコートを返すときに酒を奢れ、そうしたらチャラにしてやる」
「わかった」
借りていた帽子とコートを持ってきたときに、わざわざクリーニングに頼み、銘菓を一折つけたところに、生真面目さが見てとれる。
「それではボトルを」
「いや、こいつでいい」
ビール瓶をブラブラさせた。
「それだと…」
「知らないのか?最近じゃこいつも高いんだぜ」
「わかった」
「それで?」
「ああ、付き合っている彼女が、俺としては結婚を前提にしてたんだ。だが彼女は結婚は考えてないし、それよりもいい人を見つけなさいよってね」
「他に男でも?」
「生きてる奴ならば俺でもわかる」
「やっぱり剣士は怖いね」
「そうかな?」
「だって実際にお前が助けに行ったら、震え上がったんだろう?」
「そこまでお見通しかよ、そうだよ、俺が怒るとは思わなかったらしい、嫌な話だ」
「本当にな、でもそういう話は誰かが聞いてやらなきゃならない、俺は力を貸して、こうして酒を飲んでいる」
「なるほど、それじゃあ、酒が切れないはずだ」
「世の中奇麗事だけじゃない、だから俺の酒は切れることはないってところだ」
そういってグラス越しの泡を楽しそうに見ている。
「お前のところのそれはまだかかるそ」
「まだか」
「どうも諦めてはいないらしい、執着というのはすさまじいな」
「どうしたらいい?」
「おいおい、俺を信じるのか?」
「信じるさ、あの帽子やコートは何か不思議な力が宿ってたりするんじゃないのか?」
「さあ、どうだったか」
「酒ならばもっと奢るぞ」
「そうじゃない、こういうのはひどく難しい、人の業は絡まりやすく、ほどきにくい、彼女はずいぶんと絡まっている、彼女自身もその紐の端を握っているようだね」
「なんで…」
「それは当たり前のように、離してはいけないというように、ただまあ、救いのある話としては、彼女は非常に真面目な男に興味があるらしい、助けてくださいと言いづらい環境下でも助けてくれるやつがな」
「助けるのは当たり前では?」
「それがそうじゃないんだよ、あの手の奴等は、それで邪魔されるのならば、助けを呼ばないようにすればいいとか、そんな手を考える、嫌なもんだよ」
「楽しそう…いや、すまない、気のせいだな」
「楽しそうというよりは、人から化け物になろうとしているのを面白いと思っているんだよ、せっかく人に生まれたのにってね」
「まるで君も人じゃないみたいだ」
「それはご想像に任せるよ」
「えっ?本当に?あっ、俺じゃあ全然わからないな、今度までに修行しておくよ」
「本当にお前は面白いやつ」
そいつは飲み屋街のどこかに今日もいる。
「あれ?あいつ探しているんだけども、まだ来てないの?」
「今日はまだ来てませんね、お越しになられましたら、伝言しておきますよ」
「お願いします」
そんな感じでたまに飲んでいると、探している人なんかもやって来るぐらいだ。
ただ何をやっている奴なのか詳しく知る人はいないんじゃなかろうか。
「こんばんわ」
「おや、噂をすれば、さきほどあなたを探している方が来てましたよ」
「これで今日も酒代には困らなそうだ」
「お酒は好きなのはわかりますが、どうぞほどほどに」
「わかってるって」
「今日は何にします?」
「そうだな…」
帽子とコートを脱ぎながら、一杯目は何にしようと、あ~だこ~だ話していた。
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