浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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お前といると俺まで紳士さ

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「正直ですね、こういうのは苦手なんですけども」
泉呼(せんこ)が白万(はくまん)を見る。
「ここは俺が前に出ますから」
「お願いね」
二人は迷宮庭園に招かれてしまった。
「招かれてしまった、というより強制転移ね」
「我々は何かヘマでもしたのでしょうか?」
「いえ、これはそういうところよ」
「そういうところ?」
「由緒正しき、犠牲者を出し続けていた迷宮ってことよ」
「ああ、それはずいぶんと歴史があることで」
「でも最近はあまり訪れる人がいなくて、焦ってたみたいね、だから私たちを無理矢理につれてきてしまった」
白万が視線を隅に向けて。
「だから色々と雑」
もう頭の中では、様々な情報が交錯しているに違いない。
「選択としては2つ」
「2つだけですか?」 
「そりゃあ、詳しく分類すれば、もっとたくさんはあるんだけどもね、簡単によ、簡単に、ここですぐに帰るか、少しばかり中を歩き回るかよ」
「中を歩き回ることで、何かいいことはありますかね」
「そうね、ここは閉じられた空間だからあなたが全力でやっても覗きみられる必要はないわね、後は私たちがここで得た情報は高値で売れるかしら」
「売れるもんなんですかね」
「何かしらこの迷宮に関しての記録はあるでしょうから、適当に知名度はあるだろうし、こんなところのガイドマップ作ったら、そりゃあ買い手がつくわよ」
「それじゃあ、運悪く迷いこんだ二人でも演じるとしますか」
「演技は得意なの?」
「そういうのは得意じゃないですが、一生懸命やりたいと思います」
「あなたは真面目ね、そうね、帰る目安としては何か面白そうなものを一つ持ち帰る、その辺りにしましょう、最後はどうなるかは、情報を買った人だけのお楽しみってことよ」

closeのbarで白万は…
「というわけでこんな物もって帰りました」
それは古いデザインのブローチといえるが。
「これは相当大事なものらしくてね、手を触れたら、罠とかみんな発動させてきたわ」
「よく大丈夫でしたね」
カウンターの水芭(みずば)がいうと。
「そりゃあ、泉呼さんがいたから」
「生きている人間を仕留めるための罠が死人に効くと思います?」
「無理だね」
「でしょ」
「だから持ち帰ることが無事に出来たというわけ、これとお手製のガイドマップもつけてと」
「わかりました、この内容でうちから依頼を出すことにします」
「ありがとう」
「いえ、こちらこそ、これだけ情報が揃っているのならばかなり有利に動けると思いますから、みんな欲しがる、もしかしたらオークション形式になるかもしれません」
実際にオークション形式になったので、瀬旭(せきょく)と覆木(おおうき)が組合に出向いて手続きを頼むと。
「えっ?この内容でですか?その~そちらの事務所で解決なされないんですか?」
「うちの事務所の手じゃ安全確認が精一杯で、最後までは無理だね」
「なるほど」
不自然ではない理由だし、実際にそれもあるから、窓口はそこを納得した。
「抽選よりもオークション形式にしたいのですが、よろしいでしょうか?」
そうなれば組合にも手数料が入るため、ここでスムーズに事を運ばせたいのだろう。
「もちろん、たまには組合にも貢献しませんと、ほら、あんまり他のことでは手を貸せませんから」
「ありがとうございます、それでは早速オークションの手続きをいたします」
「報告は全部終了後でいいよ、悪くないようにお願いね」
「はい、確実に!」
そういって二人は車中で。
「これで良かったと思うの?」
覆木が聞いてきた。
「良かったんじゃないの?あんまり組合に関しては貢献度が高い仕事をしてきたとはいい難いからね、それに組合もお金がほしいんでしょう?あの感じでは」
「そこまで火の車ってわけでもないとは思うんだけども」
「あそこは特定の人間が、組織をまとめあげているというよりかは、美味しいから組んでいるみたいな感じだからさ、そういうところは、お金って大事なの」
「俺はそういうのがわからないところがある」
「お前はそーね、俺もそういうところある、まっ、うちの事務所や世話になっているやつらはそうじゃないからな、だからこそ組合とは合わないわけだし」
「苦労してないわけじゃないんだが」
「だけども、綺麗に生きたがるところが好きじゃないんじゃないの」
「それはな~」
「結構それは言われてきたものね」
「ああ、まあな、事務所を立ち上げた辺りも坊っちゃん方の遊びとか言われてたしな」
「坊っちゃんはお前ぐらいなんだがな、お前といると俺まで紳士さ」
「いいじゃない、何時いかなるときも紳士であれ、学校で習わなかった」
「ここら辺に育ちの良さがでるよな」
「景気が良いときに、父親が海外赴任してただけさ」
「初めて家に行ったときは驚いたぜ、世界各地の物が飾ってあってさ」
「海外赴任のお土産だからな」
「さっ、気分変えて明るく帰ろうぜ、水芭とミツが待ってる」
「そうね、あの二人の前じゃ悩んだ顔見せられないものね」
もうbarは開店している時間だが、夕暮れの中、二人が乗っている車は速度をあげた。
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