浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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そういう人たちが多すぎる事務所

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それはいきなり始まった。
傘目(かさめ)はすれ違った男の足首を狙いに行く。
凝視しながら、足首を失った男の体が倒れ…いや、倒れ方がおかしい、本来の法則よりもゆっくり、スローモーションのスピードで倒れた。
「いきなり酷いじゃないか」
声も普通だ。
怪我人の声じゃない。
「ここは関係者以外立入禁止ですよ」
「これだから、人間は」
「そんな事を言うあなたは?どこぞの侯爵の、ボンクラ息子に似てますが、ああ、お金で名前でも買いましたか?」
グチャグチャグチャ
人間の目からすると、気持ちの悪い再生が始まる。
「本物と偽物の区別もつかないとはな」
「礼儀を知らず、ここに吸血鬼が来ることがどういうことなのか、わかってないなら、生まれ育ちも関係なくニューバンだろ?」
「お前、ただで死ねると思うなよ」
怒りに任せて、傘目を注視しようとしても、その姿はなく。
スッ
三太刀、吸血鬼に残撃。
パン!
そしてトドメは少し離れたところからの狙撃であった。
「気を引いてくれて助かった」
狙撃したのは覆木(おおうき)であった。
「しかし、すごいですね、これが吸血鬼再生阻害の弾丸ですか」
性格の悪い言葉ももはや口にはできないぐらい、撃ち込まれた後は体が三日は動かない。
「再生阻害の酵素を使ったものだから、威力は申し分ないんだけども、まだこういう形でしか俺は使えないな」
「ここまで使えてればすごいのでは…」
「うちにはそういうのが要らない人間もいるから」
瀬旭(せきょく)のことである。
彼は別名『銀の弾丸』と呼ばれるぐらい、相手に当たると本当によく効く。
「通常の武器が、専門武器並みの威力を発揮したら、職人達失業しちゃいますよ」
「そうなんだけどもね、水芭(みずば)もミツも足止めが必要なことは変わらないんだよね」
水芭だと距離を稼げる、ミツだと命中率がいいの差はあるが。
「四苦八苦中ってやつ」
そのぐらい今までのものと性質が違うようだ。
「ただ、それはうちの生徒にも、ミツさんの同級生の、ほら、ミツさんの一ヶ月前に戦闘許可証とった」
「あぁ、あの子ね、なかなか動きが良かった」
「そうです、この間相談受けまして」

「先生、ここまで吸血鬼多いなら、予備でも吸血鬼用の物を買おうと思ってて」
「いいんじゃないの?」
「でも見に行ったら、今の物と大分勝手が違うんですよ」
オーダーでもしない限り、装備品は基本的に決まった形、サイズがあるので、そういうのを買って慣らしていくという感じ。


「それでどうしようかなって」
「傘目先生はなんて答えたの」
「セオリー通りですけども、どっちかですよね、今、使いやすいか、これからのために努力して覚えるか」
「その子は器用そうなの?」
「悪くはないと思いますが、特別器用というわけではないですね。一回そちらの事務所に学校から、対吸血鬼の授業をお願いしようかと思ってて」
「それなら父兄ってことで、依頼しないでやってあげるよ」
「いや、それは…」
「その子が一人前になってくれたら、もしも俺たちが仕事で行けないときに、見回りに参加できるわけじゃない、それ考えたら今から教えるはありだよ」
「…じゃあ、お願いできますか?」
「うん、あっ、お金のことは心配ないでね、詳しくは言えないけども、俺らが心配だからって定期的に考えてくれる子がいるんで」
「事務所の人間関係どうなっているんですか」
「その子の場合は、俺らに昔助けてもらったから」
「そういう人たちが多すぎる事務所ですよね」
「ありがたいことにね、ただそんなに頼りなく見えるかしら?」
「先日のことお忘れですか?」
「ん?」
「覆木さんがいきなり高額の振り込みしたものだから、銀行から連絡が来たんですよ」
「ああ、あったね」
「もう…」
「悪いけども、うちらと知り合ったことでそれは慣れてくれるかな」
「それで通せるのがすごい、まあ、いいですけどもね」
「さっきの話に戻るけども、お金に余裕があるならば、使いどころは限られるかもしれないけども、一振は所有した方がいいとは思うよ」
「今みたいに足止めさえ、動かない状態にしてしまえば、ぷすりでいいですもんね」
「そう、そこでないなら、その間に取りに行かなきゃならないでしょ」
一応旧校舎の入口から教室に向かう廊下の真ん中に、吸血鬼用の手斧は隠して置いてはあるが。
「そうなったら、取りに行けばいいかって思っても、その時になったら慌ててしまうということはよくあるよ」
「それこそ、手斧なのは、それを持って戦うってためじゃないですからね」
非常時の時に逃げるための道具だけども、吸血鬼と交戦も考えているので、加工してあるもの。
「刃がダメにならない物、それ基準で選んでも、結構しますけどもね」
「でも初心者用だからそれでいいんじゃないかな、あれ?今ってそういうの初心者用のおすすめって作られてないの?」
「…そういえばないですね、大抵吸血鬼は特定の流派や教えが対しているから、ここみたいに返り討ちにしたら、舐められちゃ吸血鬼なんてやってられねえんだよとか、あいつを返り討ちにしたんだから、ここで俺があそこで名前を売るときとかになってるのが珍しいというか」
「そのうち、吸血鬼対策している流派から経験積ませるために、それこそ人を送り込まれるようになったりもするから、それまでは頑張ろうか」
「そこまでに後、何体ですか?」
「さぁ、何体だろうね、見当もつかない」
優しそうにはいうが、先は長すぎる話である。


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