浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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そこは冷たい!クールアイ!

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「ちょっと昔話してよ」
「えっ?なんでさ」
「だって俺と会う前とか、知りたいじゃないか」
「あんまり面白い話じゃないよ」
「それでもさ、聞きたいんだよ」
「気分悪くなっても知らないよ」
「さっき買い物していたときに、なんか思い出してたみたいだから、気になったのもある」
「あれか…、そういえば昔は金がなかったなって」
「でもそこそこ普通の家でしょ?」
「外面はな、だけども、生活費っていうの、ああいうのがきちんとは出されてはいない家だったからな、まあ、その関係で今は関わらなくてもいいけども、今の生活と比べると本当にろくでもないなっては思うよ」
「今は?」
「今は、これが長く続くのならばそれでいいなぐらいかな」
「もっと幸せにならなきゃダメだよ」
「そういうのはお前ぐらいだよ」
「大変な目にあったんだったら、その100倍は幸せにならなきゃダメ」
「100倍か、そんな生活は想像もつかないし、慣れそうにない、いや、慣れたら、ダメな気がする」
「怖いの?」
「戒めだよ、なんだかんだで、家族のために僕は動いてしまったからな」
「それは悪いことなの?そこにまで罪悪感を持ってしまうって、何があったのさ」
「そりゃあ、やらなきゃ良かったなと思う感じだね」
「過去に戻れるなら?」
「同じ道をまだ辿ってしまうだろうな」
「辿らない道を探している」
「それは少しある、少しあるけども、見つからないんだ」
「俺が助けに行ったら?」
「誰だよ、お前っていう」
「そうか、まあ、いきなり君を助けに来た不審者だもんな」
「助けてくれているのはありがたいよ、本当にありがたい、ありがたいが、なんで?っていう話で」
「でも君は優しいからな、疲れた心に染み入る系の優しさがある」
「敵作りたくないし」
「その割にはですよ、勇気をもって介入したりするじゃないですか」
「あれは必死だったんだよ、あのままならば、あの手の奴はまた繰り返すから、お前は全然学ばねえなって、知ってるか?あの後、眠れなかったんだぜ」
「添い寝でもすれば良かった、今からでもする?」
「たまにお前の距離感おかしいときあるよね、まあ、剣士だからしょうがないのかもしれないが」
剣士なので基本的に間合いで敵味方の判断する。
「剣士にもよるんだけどもさ、自分の間合いにワンニャンが楽しそうにしているから、そこで癒えるってタイプもいる」
「常時戦場な生き方していると、必要だからしょうがないとはいえ、精神的な負荷は凄まじそうな」
「身内の裏切りで、墜ちるはあるからね、俺も顔を知っている奴とかで何人かそうなった、落ちた理由は様々だけども、浮気系はもう大変よ」
「そりゃあ、そうだろう、剣士はプライドが高いから、嫁さんの相手に乗り込むは普通に聞く話だ」
「たまに、それだから権力で押さえつけるパターンもあるよ、実力では敵わないから、そういう感じで」
「でも怒りはさ、冷めたわけじゃないのにな」
「そうなんだよね、隙あれば切り込みに行くに決まってるじゃないか」
「…やっぱりそうなんだ」
「そうだよ、だから君の家族は今はラッキーなんじゃないかな」
「えっ?」
「君はあちこちに感謝している人がいるし、もうね、そこは組んでて鼻が高いですよ、たまに安く使えたなって感じで見ている人はいるけども、まあ、そこは置いておきましょうよ」
「感謝されるためにやっているわけではないんだがな」
「謙遜!それとも何か他の理由が」
「最初は迷ってたんだ」
「迷ってた?」
「僕が家族にしてきたことで、怒鳴られた後に、同じことをして、依頼先には感謝されて、これはどういうことなんだろうか?って迷ったんだよ、でもさ、だんだんとわかってきたことは、怒鳴ったのは家族だけだったんだ」
「そうか、でもなんで?」
「気に入らなかったんじゃないの?やることなすこと、ただ本音を聞いたわけじゃないし、たぶんろくでもない理由だとは思うけどもね」
「優しさをなんだと思ってるんだろうね?」
「優しくしてもらったとか、考えてないんじゃないかな」
「それはダメじゃないか、関係性なんて終わってしまうよ」
「そうだね、うん、そう思うよ。本当に暗い話しか僕にはないんだよ」
「でもそういうのは聞かなきゃダメだと思う」
「なんで?」
「この先、予想外のところで知ったら?」
「裏切ったと思われるか、そうか、そう見られてしまうのか」
「裏切ったとまではいかないが、やっぱり話してほしかったなとは思うかもしれない」
「でも聞いてて不快な話だ」
「不快な話を繰り返す、同じ苦労をするタイプではないのは俺は知っている」
「評価高すぎやしないか?」
「まあ、そうね、高いよね、でも一緒に難解な事件に立ち向かえるぐらいの相手ではあるから、そりゃあ高くなるのでは?」
「その評価が落ちないように頑張らなくちゃな」
「もう百点だから、これ以上の点数を狙うの?」
「そういうつもりじゃないんだがな…本音を言えば仕事を減らすタイミングは見ている、それこそ成果は今か、それ以上かって」
「上昇思考が強いのね」
「そういうわけでも、たぶんもうちょっと先になると、この組み替えも考えている暇がなくなりそうなんだよな」
「そこはどこから?」
「単純に人手不足だよ、そこに怪我人とか病人出た場合と考えちゃうと、回らなくなっていくかもしれないはある」
「なるほど」
「だから今のうちにだ、事が起こってからは考える暇もなく、慌ただしい日々が過ぎていくことにはなるから、そこは避けたい」
「その時休みは取れますか?」
「わからん」
「あっ、それなら今のうちにだね」
「こういうことを考えると、杞憂とか、信じてないのかなんて言われるが」
「ああそれは、先を見てないんじゃないかな、もっと何が起きても対処ができるぐらいにしておかないと危ない気がする」
「調べてもらったが、そっちに関しての予算が少ない、またはない、のも僕が動く理由の一つだな。お前はどうする?」
「どうする?って」
「僕は時間を作っては、この先のことの準備をしようと思ってる」
「俺は何をすればいい?」
「命令でもないしな、好きにすればいいと思うよ、それこそこの話を聞いても用心深いなとか、考えすぎじゃないかなと一笑するのもいいさ」
「えっ?嫌だ、一緒に行く」
「そんなに簡単に決めていいの?」
「俺を置いていくの?」
「置いてはいかないよ、コンビの解消はしないつもりでとりあえずはやっていくから」
「それでも未来にまでご一緒するなら、手伝う、何ができるかはわからないけどもさ、この身一つだったら、好きにしてもいいのよ」
「別にそういうのは結構です」
「そこは冷たい!クールアイ!」
「仕事内容としては、体力がきちんと残るようなペースでこなして、後は全部今後の準備にしようと思ってたんだよ」
「一人より二人だよ」
「ほとんど一人でやろうとてたからな」
「こう見えて、剣は免状をもらってます」
椅子の座り方も緊張した面持ちになり。
「知ってるよ、なんで面接みたいになってるんだよ」
「やっぱり選んでもらいたいじゃないですか、というか、勝算がある程度あるから動いているようだしね」
「そんなことはないぞ」
「へぇ~そんな風にいっちゃうんだ、寂しいな」
……緊張感のある沈黙。
「わかった、わかった、内緒にするつもりも、黙っているつもりもなかった、剣士にそんなことしたら、切られる」
「君だったら、釈明はもちろん聞くよ」
「こちらも剣士の誠実さは知ってるつもりだから、その目で見るのはやめてくれ、ただまだわかってないこともあるわけだし」
「そんなに変な目で見てたかな」
「たまにそういう目をするよな」
例えるなら、猟犬が飼い主のために獲物を見つけて嬉しそうにする目。
(やっぱりこいつも剣士なんだな)
剣士を長らく続けている奴は、剣を握ると喜びを得ているからのいう話を聞いたことがあった。
「僕の話を聞いて満足したか?」
「ちょっとはね、でもそのうち全部吐き出してもらうから」
「そんな日は来ねえよ」
「俺、間違えたこと言ってる?」
「いや、これは全部僕が悪い」
「またそれだ」
「繰り返して、答えが出ないぐらい重いんだよ」
「センチメンタルもほどほどにね」
「贅沢な悩みだよ」
「本当だよ、その悩みをなんで大事にしているのか」
「戒めだよ、それ以外は考えたくもない」
「全部受け入れてくれる人は欲しくないの」
「いらない、そんなの望めない」
「じゃあ、現れたら?」
「その手は掴まない」
「やっぱり拐っていくしかないじゃないか」
「なんでだよ!本当にくだらない話だ、無意味な時間だ、本でも読んでいた方がマシだよ」
「俺はそうは思わない、悩むだけの理由があるということは、その人にとっては大きなウエイトを占める問題なんだよ、それが無くなっては自分とはなんであろうか?と迷うぐらいにね」
「哲学者みたいな話だな」
「哲学者ね…This is penみたいな」
「日本語話者による英語の基本構文、プログラムの世界でいうならば、HELLO WORLDなんだが、その言語を知らない人が聞いたら意味がわからずに、なんでそうなのだろうか?考えてしまう奴ね」
「そう、それ」
「本当にお前は俺に喋らせるつもりだな」
「うん、人間は言葉を作る能力には上限、限界があるから、君の過去をそこに使ってもらえば、過去が維持できなくなる」
「変な奴」
「ここが今の妥協点ってことかな、ただ腹に溜めているばかりじゃ、お腹痛くなるもんだよ」
それにね、君が過去の悔やみが原因で、今の生活が失われるのは、ちょっと俺には許せないことなんだよね。
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