浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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何本切り落とせるかな

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「はい、これ」
「えっ?何々」
ちょっと高そうなものをもらった。
「いいの?」
「この値段じゃこれから買えなくなるから、持っておけよ」
なんていって見ると、こじゃれたものではある。
「そういえば何気にオシャレさんというか」
「安くても良いものならば、それでいいとは思うんだがな」
君の考え方は掃除でもオシャレでも同じなのかもしれない。
「俺は逆にそういうのは考えないから、ありがとう」


「えっ?何しているんですか」
「何って」
見てわからない?
「そんな高そうなものを汚れるような使い方して、もう信じられないです」
取引先の女性に言われた。
「でもこれしかないからさ、 もらったものだからいいかって」
そういうと、これはいかに良いものか、雑誌なんかにも載ってるし、あげた子が怒っちゃいますよ。


「って言われたんだけども」
「気にしないで、お前の好きなように使えよ」
「いいの?」
「あげたものに対して、これしろとか、うるさいこといってもな…」
「含みのある言葉」
「言いたいことはあったときはあったがな、お前に関してはそのままでいいじゃないか、それこそいい格好しても、あちこちバタバタ走り回って汚れるだろう人間なんだからさ、汚れるは想定済み」
「なら、良かったけどもね、なんか俺、貢がれているみたいに思われてて」
「何それ」
「そうなんです、大事にされていますっていえば良かったかな」
「真顔で火に油を注ぐなよ」
「でもちょっと嬉しかったんだよな」
「何が?」
「ああいう汚れるような使い方するとさ、破損したり、劣化するんだけども、それがなかったから、良いものもらえたということと、貢がれていると勘違いされるぐらい大事にされているのかなって」
「へぇ」
「あっ、ごめん、機嫌悪くなった?」
「お前にじゃなくて、その女にだよ…」
「女にイヤな思い出が?」
「ああ、さすがに見るに見かねて、それこそさ、その格好はあんまり良くないって時に世話を焼いたことがあったが、どんどんエスカレートしていった」
「許されると思ったってやつな」
「わかるとは思うけども、精神的なダメージを受けるようなこともあるから、そういうところにやって来るやつは、身なりを整えられないのも来るわけ、僕も元々はそうだったから、大分言われたからな」
「あのお金だと、実家住みじゃなきゃ無理だよね」
「実家住みの、家族とは良好なやつはこんなところに働きは来ないよ、家族が仕事の内容聞いて止めると思う」
「それはあるかもしれない」
「今の世の中、そうも言ってはられないけどもね」
「よく心配はしてるもんな」
「思いきってこの仕事についていれば、まだ助かったというか、そういうの見ちゃうと、やっぱりダメよ、そうなると僕には助けられないが」
「ああいうのからうちの管轄の事件に繋がるから」
「そうそう、お金はない、時間はない、人間関係は悪化する、なんてのが揃うと、起こるから、それを解決しなきゃならない方からすると、予防が一番いいよ」
「でもさ、前から比べたら、待遇も良くなったんでしょ?」
「なった、僕がこの業界に来たときは、人を使い捨てるところもあったんだがな」
「それこそ、君に関しては努力家だからね、今日から斜陽の業界になりましたってなったとしても、生きていけるんじゃないの?」
「どうだろう?でも僕よりもかなり備えているというか、お金の扱いうまい人たちはいるから、その人たちは生き残るんじゃないかな」
「一緒に生き残ろうぜ」
「一緒にね…」
苦笑してた。
「俺、結構やるよ」
「知ってる」
「後、アピール出来るところは…」
「そのままで十分さ」
ここでの微笑みは穏やかだった。


「…」
「はい」
「…」
「わかりました」
「…」
「それでは失礼します」
そういって一礼して退出する、そして俺と合流になるのだが。
「どうだった?」
「あんまり良くないね」
そういうときのレーダーは優れている人間の、あんまり良くないねなので、これはとんでもない事が起きるかもしれない。
「見事にこちらの意見は却下されたから」
「ということは?」
「好きにやっていいということだろう?」
「おもしろそうだね」
「僕はどっちでも良かった、まあ、義理として、話を持っていっただけだが…」
「でも選ばれないのは悔しいな」
「お前が付いてきてくれるならば選ばれない方が嬉しい」
こういうとき、ドキッとするのだ。
「そう?」
「だって今の話が選ばれれば、しばらくはずっと向こうが、それこそ成長しきるまでは付き合わなければならないから…それにこの段階で切ったら、向こうからは見込みがないと思われているってことだから、楽なことは楽」
「楽か」
「どうも向こうは綺麗なお姉ちゃんに鼻の下伸ばしているっぽくて」
「それは…確実に失敗するんじゃないかな」
「そういうものなのか?」
「あ…うん、それ聞いちゃうとね。そうか…話の内容ではなく、そういう感じで向こうの話を聞いている段階ならば、今は何を言っても無理じゃないのかな」
「メロメロになってるから?」
「そう、メロメロに、メロメロ?うん、メロメロ、これはそのメロメロになった状態が覚めるまでは何も言わない方が、動向は定期的に見る必要はあるけども…う~ん」
「あんまり良くないことになる?」
「そうは思うけども」
「ああ、その先が見えないのか」
「そう!それ!さすが、言いたいことはそれだよ」
「たぶんいい結果にはならない、おそらく悪い結果にはなるが、どこまで悪い結果までになるのかが見えないから、そこがモヤモヤすると」
「そのモヤモヤするところがどれだけ事前にわかってて、備えれるかだな」
「でも動いている金額としては、そう大したことではないが」
「お金はお金だから」
「そうなると…やっぱりまずいね、手持ちでは足りないんじゃないか」
「しかもあそこは体力も限界とか言ってたし」
「今からそことはぶつからない方法で、保険作っておくか」
「作れるの?」
「材料は用意してたものがあるから、それを使うことになるだろう」
「それは使っちゃって大丈夫?」
「何も問題が起きなければ使わないし、何か問題が起きた場合ならば、時間を稼げるだけでも意味があるよ」
「その辺は俺じゃ一緒に考えれないからな」
「構わないよ、これができなきゃ、僕はここにはいられない」
「そんなことはないでしょ」
「そういってくれるのはお前ぐらいだから、でも世間はそうじゃないんだぜ」
そこで時間を見つけては、そちらに手をとられることになったのだが、そうなると俺は少し暇そうに見えてしまったようで。
「お兄さん、どっか食事に連れていってくれません?」
買い出し中に逆ナンパされた。
若い娘さんである。
「え~それ、俺に言ってるの?」
「そうそう、お金あるでしょ?だったらここは私に奢ってよ」
おそらくだが、そのお金がある人間に見られているのは持ち物である。
その持ち物はあいつから、これはお前が似合うから持っておけって言われたヤツ。
「ごめんね、俺は貢ぐより貢がれた方が好きなんだ」
「へっ?」
そういって俺はさっさと、その場から離れた。
おおっと、頼まれたものを、送られたメモをみたら、フローリングシートとあるが、コンビニでは高いのでは?と思ったが、今は100円コーナーがあるんだね、そこの商品を選んだ。

「ただいま」
「お帰り~あっ、なんかさ」
「何?」
「お前が貢がれているという噂が立ってるけども、風評被害じゃないの?」
「でもちょっとそのままにしておいてよ」
「何で?」
「それ口にしている人間あぶり出したくて」
「ああ、そういうことか」
「普段はニコニコしているから、こういう機会じゃないと尻尾だしてくれないからさ」
「何本切り落とすつもりだよ」
「ええっと…」
「わかった、わかった、こっちもそれ用に備えておく、しかし、表面上は良くてもその関係は…」
「向こうが確実に仕留めれるなって思わないなら、ずっとニコニコしているものだ」
「やっぱり剣士は敵に回すもんじゃないな…」
その時も俺はずっとニコニコしてたから、見る人が見たら不気味かもしれないが、君は悲しそうな顔をしていた。
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