浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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静かな肉

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「今日は吸血鬼の食べ物についての話をするよ」
『はーい』
異世界から帰還した人たちの教育の場を、基本的な教育の他にこのような講座も設けられていたりする。
「吸血鬼の歴史にも関わってくるんだけどもね、あの方々は食事というと、生きている存在から命を奪うような行為を思い浮かべるとは思いますが、それらを良しとしてきたわけじゃないんですよ」
それこそ原初の我々は野蛮であったと、自らを語るぐらいである。
「その話をやっと言えるようになった理由が、調理方法の確立ですね、みなさんの中にも吸血鬼の方々から将来招待されるような出世をする人もいるかもしれません、招かれ出される食事は人間も同席して食べれるものが出ます」
最初は発見だったという。
「ガスで調理する、住んでいるところによっては電化製品のみの人がいるかもしれませんが、ガスで調理した食材に食欲がわいたのが始まりだったそうです」
ガスバーナーで炙るという調理法をすると、特有の甘い匂いが食材につくのだが、それにあれ?美味しいそうで食べてみたことから始まったそうだ。
「これと現在はレーザーですね、こちらは使うと苦味がつきます、この調理技術を所有しているか、してないかで吸血鬼はオールドヴァンパイアか、ニューヴァンパイアで分けられていると思ってください」
このように吸血鬼としての生まれというよりは、育ちで判断する。
「この文化の中にいないニューヴァンパイア、ニューバンは同種であれ人であれ、暴力、力をふるえば言うこときかせられると思っている節があるので、それこそ食事となれば人を襲うことにも抵抗はないんです、旧校舎に行ったことはある人たちもいるでしょうが、本当にあいつらは話とか聞きません、自分勝手です」
同族のオールドヴァンパイア、オーバンも手を焼いているし、一緒に見られてはオーバンも人と上手くやることが難しくなると思っているので、積極的にニューバンの被害の時に手を貸してくれたりするし。
「私なんかは地元が山の方だったんですが、近くに日本にはあんまりない中世ヨーロッパな城があったんで、小学校の宿泊訓練で一泊したことがあります」
「先生、それって大丈夫なの?」
「夜10時以降は何があっても日が昇るまで部屋の外には出るなって言われましたね、私はおとなしく朝までいましたが、同級生がね、ちょっと気になるから行ってみようぜをやりまして…あいつら、バカでしたね、出るなっていったら本当にでないようにみなさんはお願いします、一晩で人生が変わっちゃいますから」
「吸血鬼にでも噛まれたとか?」
「それならまだ…、朝ね、泣きながら1人帰ってきたんですよね、あれは今でも忘れられないし、他のやつらは真っ白というか、燃え尽きたように、話しかけても反応しないし」
生徒たちはうわ…と思ったという。
「今日のお話は吸血鬼の食生活、お肉の話が出ましたが、あれをニューバンは『静かな肉』と呼んでます、生き物、動いていないからそういう名前がついたようです。そして人間社会では今では廃れつつあるもの、文化の保存も吸血鬼は行っています、先生はちょっといい感じのパンツルックにしておりますが、これもね、そこでオーダーしたものなんだ!」


「お似合いでございます」
「やっぱりいいよね、この年でもさ、こうした仕事をしてもらったシャツ一枚、ジャケット一枚で幸せになれる」
「しかし、覆木(おおうき)様のようなお人は少なくなりましたからね」
今は当たり前のように既製服というものが売られているが、それがなかった時代があった。その文化は吸血鬼世界では今も現役であり、馴染みの職人が看板を下ろした後、これからはこちらでと紹介されることが多いという。
あなたもまずは気軽に訪れてはいかがだろうか?
吸血鬼も人間の感染症にはかからないため、安全な娯楽として初めての人たち向けのツアーなども用意されている。

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